第21話 春の花祭りと夢見草【ニゲラ】…

季節の香りが拡がりをみせ始めたここセフィロト♫

暖かな陽射しの午後、喫茶フルートに珍しいお客が訪ねて来ていた。


「いらっしゃいませ~♪あら、マーズ!珍しいわね~こっちに顔出すなんて♪」

そう、セフィロトの領主マーズ・ダインである。

鍛え抜かれた鋼の様なボディ、ちょっと厳つい風貌で粗暴な感じがする彼なのだが、意外と純情で女性に免疫が無い(笑)

そのせいか、喫茶フルートは比較的女性が多く来店する為、おそらく居心地が悪いのか滅多に此方には顔を出さない。

と言うのは建前…いや、半分は当たっている。

残りの半分…まぁ〜本当の理由は伽羅がここの常連だからだ(笑)

※彼自信、決して彼女を嫌っている訳ではないんだけどね♪


ここで突然ですが!

只今より臨時会見を開きたいと思います(笑)

※いつの間にか店内が記者会見場に早変わり♫


【作者(レポーターその1)=つけ髭付】

「マーズさん、何故伽羅さんを避けようとするのですか!貴殿方は既に男女の関係(一方的にだが)があるのでしょ?違うんですか!」

【マーズ・ダイン】

「は、はい!その事は否定いたしません…いたしませんが…そのなんと申しますか…(汗)」


【作者(レポーターその2)=つけ髭+ねじりハチマキ付】

「だったら可笑しいんじゃないですか?もしかして遊びだったんですか!それとも他に本命の女性がいるんじゃないですか!」

【マーズ・ダイン】

「遊びとかとんでもない断じてそんな事はありません!勿論彼女が嫌いとかでもありませんし本命がいるわけでもありません!た、只ですね………」


【伽羅(女性レポーター)=サングラス+かつら付】

「只何ですか!はっきり答えて下さいよ♪」

【マーズ・ダイン】

「なんと申しますか、その…私は…あの…幼い頃から闘いずくめで女性とお付き合いがしたこと無く…ま~なんと言うか…その~〜」


「伽羅〜♪そろそろ可哀想になってきたから止めようよ~(笑)」

笑いを堪えつつ、珍しくフローラが止めに入った。本当に珍しい事だ!

※作者もちょっと飽きてきたので、この辺で会見は終りにしようかな~♪



ようやく伽羅がいるのに気が付いたのか、思いっきりズッコケルマーズ(笑)

どうやら小芝居の相手の中に彼女が参戦しているのに最後まで気がつかなかったらし。

マーズは、顔を真っ赤にしながらカウンターの角でいじけてしまった。

「てへ、ゴメ~ン♡じゃ患者待たせてるから帰るね♪マ~ズまたね~♡♡♡」

※おいおい、もしかして…この小芝居の為だけに患者を待たせたのかな?

Dr伽羅…(汗)


息抜きになったのか、スキップしながら職場に戻る誰かさん(笑)

「ほらほら彼女帰ったわよマーズ、こっちに来なさいな♪何か用事があって来たんでしょ?」

そう言われマーズは何とかモチベーションを保ちながらカウンターの席に改めて座り直した。


「と、所でアーシュは?出掛けてる?」

「え?あ~ちょ~っと精神的なダメージを受けちゃってるから、只今回復中♪」

マーズは何の事だか解らなかったが、あんまり深く追究しない方が良いと思いあえて聞かないことにした。

※読者の皆様は薄々お解りだろう。

彼は無理矢理女性陣と入浴させられた挙げ句、酒の魚の変わりにあんな事やこんな事やで弄ばれたらしい…

まぁ〜いわば生け贄にされたのだ(笑)

(ちょっと羨ましい作者かも(悔))


「そうか?じゃ伝言を頼む…来週開催される《花祭り》な、良かったら今年も《桜亭》の手伝いを頼めないだろかと伝えてもらえるか?」

それを聞いたフローラは、とたんに上機嫌になった!

「あーもうそんな時期なんだ♪去年も盛大だったもんね~♪」


セフィロトでは四季の移り変わりがある度にお祭りがあるのだが、その中でも一番美しいと評判のお祭りがこの《花祭り》である。

それにこの季節は特別で、夜に三日間しか咲かない群生花が花開く為、それに合わせて町を訪れる旅人も多くなるのだった。


「大丈夫よマーズ♪私達喜んで手伝わせて頂くから♪」

ちなみに《桜亭》とはこのセフィロト一番の食事処である。

例年 《花祭り》の期間中は、それ目当ての旅人でごった返し、人手が足りず店主のソニアがいつも困り果てていたのだった。

「良かった助かるよ♪じゃ早速ソニアに話して来る!アーシュにはよろしく言っといてくれ」


破顔一笑、そう言うと足早に店を後にするマーズを見送りながら、どうやってアーシュを復活させようか悩んでいたフローラは、これできっかけができたと喜んでアーシュが引きこもっている部屋へと足を運ぶのであった。




話の舞台は変って…

セフィロトにはこの街を囲む様に多くの森が隣接している。

その中の一つの森の入口付近に、普段決して人が足を踏み入れてはならない広大な花畑がある。


そして季節は春…

満月の夜に三日間だけしか咲かない群生華が咲き乱れるその花畑…


そこに咲く華…

月明かりを浴び、虹色に輝くその美しいその華の名は《ニゲラ》…

このセフィロトのその花畑にのみ群生するその華は摘む事は勿論、人の手で苗を増やす事も出来ない。

何故なら、触れた途端みるみるうちに枯れてしまうからである。


前にも話したが開花は三日間のみ…

《ニゲラ》は四日目の明け方には総て枯れてしまう。

しかも種も残さない… 


そんな儚い美しさと不思議さ故に、この季節になると街を訪れる旅人が多いのだが…

もう一つ…

訪れる人が多い理由がある。

この華を見た人々は、その夜夢で《今は亡き大切な誰かと会う事が出来る》と言われているのだ。


これは迷信ではない。

事実である。

だから人種(ヒューマン)も他種(魔獣・亜人・人外)…

善者も悪者も総て者が…

心の中に棲む誰かと会いたい者総てがこの土地を訪れる。

そして決してこの地を汚さない…


誰が定めた訳ではない…

が、ここは正に【聖域】…


そして総ての生有る者達の

《聖なる三日間》…

《聖なる場所》…

それが《花祭り》なのである。



そんなセフィロトにある大衆食堂 《桜亭》の女主人である《ソニア・ローズ》は、毎年この祭りに合わせて限定メニューを出していた。


「今年はシルビーがいるから食材の確保は安心だわ♪」

何時もならダンジョンの深い階層でしか手にいれる事ができない食材があった為、この時期の限定メニューは、数量が限られていたのだが、今年は安心してめいいっぱいお客様に提供できる!

※だってシルビーが狩りまくるし採りまくるから♪


しかも今年もアーシュ夫妻が手伝ってくれるので思う存分腕を振るう事が出来る♫


だから彼女は通常業務の合間、嬉々として祭りの仕込みの予定を立て始めていた。

「今年は思う存分作るわよ〜♪♪♪」

この季節に毎年訪れてくれるお客様達の顔を思い出しながら、身長180cmもあるアマゾネスの元冒険者であるこの女主人は、ニコニコしながら祭りの日を待ちわびるのであった。





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