第19話 フローラのヒ・ミ・ツ

《凪がれる(ながれる)》様な木漏れ陽、囁くようなそよ風と小川のせせらぎ…

今 《大自然の鼓動と生命の息吹を肌で感じる》

そんな世界がある三人の目の前に広がった♪

※勿論アーシュとフローラ、ポトニャーなんだけど…(笑)

そう、今日は喫茶フルートの店休日なのである。


「ポトニャー…相変わらずここが魔界には見えないわ(汗)?」

イメージとは余りにもギャップが有りすぎるこの光景に、思わずフローラは彼女に疑問を投げ掛けていた。

「でしょ♪特に今が一番良い季節なんだって♪」

何故か上機嫌のポトニャーである。

まぁ〜彼女は前世が猫だったからかもしれない。

お昼寝にもってこいのこの魔界の季節が彼女は大好きだ。

「この風景…今日ポトニャーが誘ってくれなかったら、この風景を見れなかったね♪」

アーシュの賛辞に、もっと誉めろと言わんばかりに慎ましやかな胸をはり、得意げなポーズを取るポトニャー(笑)

※この間だまで恋話のフラグが立たなくていじけていたとは思えない…


「流石ポトニャー♪」

フローラの賛辞にますます調子にのるポトニャー。

彼女の高笑いが周りに木霊する。(´-ω-`;)ゞ


そんな暫く高笑いをしてたポトニャーなのだが、ふと誰かの気配を感じ後ろを振り返った。

「ん?あ、サタナキア!久し振り~♪」

すると、誰もいない空間からフェイドアウトするように《ダンディ&ナイスミドル》な羊角を持つ紳士が現れたのだ。


「流石ポトニャーさん、相変わらず貴女の前では気配を隠しきる事ができませんね♪」

そう言いながら笑顔で三人の前に現れた彼は、執事の様なリアクションで皆に一礼した。


「はじめましてアーシュ様、フローラ…さ…ま…?」

するとなぜか、フローラに挨拶をしようとしたサタナキアは、彼女の容姿や眼を見た途端、普段の彼では見られない位、明らかに動揺の色を隠せないでいた。


…一瞬の沈黙が流れる…

「あ!失礼致しました。私としたことが…さ、お三方ルシファー様がお待ちかねですのでご案内致します」

明らかに不自然なリアクションに一同 《?》と疑問に思ったが、とりあえず彼の案内に従い《転移魔方陣(近道)》に向かうのであった。

 


所変わってルシファーの居城…

転移魔方陣を使い、あっという間にルシファーの居城の前に出た途端、城門の前に掲げてある大きな垂れ幕を見て約二名言葉を失った。


(日本語訳)=翻訳者:作者(翻訳料税込¥22)

ちなみに…

『『誰が書いたんだろう?達筆だ…』』

※思わず思考が停止したアーシュとフローラは、絶対ツッコム所を間違えている(笑)


そんな二人の横で人知れずどや顔をしているサタナキアに二人は気づいていない。

おそらくと言うか…まぁ〜この垂れ幕のお題を書いたのは間違いなく彼だろう。


「ほら、早く行こう!皆待ってるよ♪」

一人はしゃぐポトニャーに、今から始まるであろうお茶会と言う名の宴会感が拭えないアーシュとフローラなのであった…


二人共…多分その予想は当たりである(笑)





その頃喫茶フルートの店の前では、

「ありゃ〜今日は店休日なんだ…」

最近息子が構ってくれず、いじけている母親が一人佇んでいる。

誰あろう我らのマ・ザー様である(笑)


「しゃーない!じゃ~シルビーでもからかってストレスを発散しようかしら♪」

気持ちを切り替えたのか、途端に凶悪な微笑みを残しスキップしながらダンジョンへ向かうマ・ザーの姿は、さながら遠足に行く園児の様に感じてしまうのは気のせいだろうか?


数日前から、沖田絡みでからかい易さが大幅にupした《剣一筋》のシルビーさん♪

その理由を本人以外皆知ってる♪

知らないのは当事者だけのこの状況♪

こんな美味しいネタを使わない訳がない!


ちなみに余談ではあるが、そんなマ・ザーの行動を一部始終見ている人物がいた。

口に《ボールギャグ(18歳未満はどんなアイテムか知らなくも調べちゃダメだよ♪)》をくわえ、もみの木に麻縄でグルグル巻きに吊るされているドゥモワーである(笑)


…また…

どんな悪さをしでかしたんだろう~?


まぁ〜どうでもいいか♪

話を戻そう。


魔界で、真っ昼間から《お茶会》という名のサバト(宴会でも正解!ここ試験にでますよ~♪)が始まった頃、ロムトレートの王城ではサタナキアがアダム王に謁見を求め城を訪れていた。


「アダム王、突然の謁見の申し出、お許し下さり感謝いたします」

「お気になさらないで頂きたい、貴公が急遽謁見を求める等、余程の事がない限りあり得ないのは重々承知している…で、何か不足の事態でもありましたか?」

サタナキアはアダムに促され、改めてエリを正しアダムに質問を投げかけた。


「アダム王…単刀直入にお聞きします!《フローラ・レミュートン》…彼女は一体何者なのですか?」

サタナキアは続けて言葉を紡いだ。


「実は前々から我が王ルシファー様を始め、天使長ミカエル殿や他の王も懸念を抱いておりました…それにあの容姿…彼女の事、許される範囲で構いませんのでお教え願いますか?」


アダムは、サタナキアの進言に暫く黙ったままでいた。

本人の了解が無いまま、どこまで話して良いか判断に迷っていたのだ。


王とはいえ、本人の許可なく個人の私事を話してはならないのは当たり前だ。

「だが…遅かれ早かれ、いずれは話すべき事ではあるか…特に貴殿方達には…」

アダムは腹をくくった様だ。

サタナキアは、そんなアダムの神妙な面持ちに言葉を返した。


「何の事ですか?」

「サタナキア殿、《ルシファー王の名代》としてお話します…宜しいですか?」

「はい勿論です!我がサタナキアの名に置いて迂闊に他言しないと誓います!」

その口上を聞き意を決したアダムは、少しずつ話し始めた。


「アーシュ…《アンシャード・レミュートン》と《フローラ・レミュートン》は、共に《聖霊石》を体内に宿している…と言うよりも聖霊石がなければ、その存在自体消滅し《無》になってしまうのです」


「!!」

サタナキアは、事の重大さに言葉を失った。

《聖霊石》の伝承は、アダム達の解釈とは違うかもしれないが、伝説として魔界全土に伝わっている。


……《創造主の御霊》として……


「マ・ザーは、二人を《特異点》と呼んでいる…彼女曰く、多元宇宙の総ての定義に反し《あらゆる次元・時間軸にも類似する存在がない》らしい…」

「だから《無》なのですか?」

「そう…例えれば貴公ら魔族や天使族、他の王達も別次元・時間軸に存在している…その中にはお互い敵対している次元もある…」


「それは昔ルシファー様から聞いた事がございます…この世界の我々は、天使族は《光の代行者》魔族は《闇の代行者》としての役割を持って存在している…他の王や亜人や獣魔達も同じです…それぞれ役割を持って存在しているのだと…しかし別の次元、時間軸では敵対している世界もあるのだと…」

「だがあの二人は、その存在がこの世界以外に無いのだよ…どこにも…」

愕然とするサタナキアにアダムは、なおも言葉を続けた。


「特にフローラには、アーシュには無い《聖紋》と呼ばれる紋章が刻まれている。」

「!!聞いた事がありません!聖紋とはなんなのですか?」

驚愕するサタナキアをよそに、アダムは首を横に降った。

「色々調べてはみたが、マ・ザーですら詳しく解らないでいるよ…只…別次元の古い遺跡に、それを記す記述らしき文献を発見したんだが…」

「で、なんと…?」

「【《聖霊姫(ラスト・エンペラー)》光と共にこの地に舞い降り、総ての王姫となる…久遠の時間(とき)の流れの中、彼姫(かのひめ)再び…】状態が悪くて、ここまでしか解読できなかったらしい…」

「只、その遺跡に刻まれていた紋章らしきものが彼女の身体にも刻まれているそうだ」

「ちなみに遺跡を発見したその星は、遥か昔、亜人や魔獣・魔族・天使等が存在した…《地球》と呼ぼれていたそうだよ…もっともその星も今は《死の星》と化しているそうだがね…」


サタナキアは初めてフローラと眼を遇わせた時、何故か抗う事ができない程圧倒的なオーラを感じた。

それにあの容姿はある女性を彷彿させてもいる。

それはルシファーやミカエルも一緒なのかもしれない。


「解りました…総て解りました…何故アスタロト殿が《お茶会》と称してこちらの世界に度々顔を出すのか…ルシファー様がポトニャーさんをだしにしてあのお二方を居城へ呼んだのかも…」

アダムはそんなサタナキアに近づき肩に手を置いた。

「彼(ルシファー)も解らなかったし知りたかったのだよ…まぁ私が話せるのはここまでだ…只これだけは念を押すが、彼女は決して我々の脅威にはならない……アーシュがいるからな(笑)」

アダムは、笑顔でそう答えるとサタナキアに一礼して客間からでて行った。

サタナキアは直様立ち上がり、その後姿に敬意を払うと…

「ルシファー様、お聞きになられましたか?」

一人客間に残った彼は、独り言の様に口にした。

【ご苦労様でした…もうこちらに戻って来なさい】

「承知致しました、では…」

そう言うと彼は虚空の中に消えて行ったのだった…




そして彼は帰ってきた。

すると直に後悔したのだった……

さながらお茶会では無く《宴会》と化したその散々たる現状を目の前にしたから……

「《戻って来なさい》の本当の意味…誰がこの現状を修復するのですかね………」

死屍累々の会場を前に、ため息がフェイドアウトしながら虚しく風に乗っていったのだった(笑)






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