第12話 沖田にドゥモワーにロマについて
《ロムトレート王国》にあるメディカル・クリニックの一室…
沖田宗次郎はシルビーとの模擬戦の時の事をベッドで仰向けになりながら思い出していた。
全治一週間…
シルビーがムキになって放った《ソウル・イーター》の斬撃をまともに受けてその程度のダメージで済む肉体になった事に、沖田は言い知れぬ感情と思いを巡らせていた。
『もしあの時…病なんかに負けない身体だったら、私は皆と同じ場所に立てただろか…?』
怒りや悲しみ、悔しさでもない感情…
後悔や懺悔、苦しみともつかない感情…
今、生きているからこそ思うのだろう…
そんな惰弱な事をと彼は感じていた。
「土方さん…」
彼はこの世界に転移した事実と、自分が置かれている現実を受け入れる為あえて《真名》を封印した。
いや…前世に置いてきたと言う方が正しいだろう。
本来ならば《沖田総司》はあの時あの場所で死ぬはずだったのであろうから…
そういった確証にも似た認識があるからこそ《沖田宗次郎》として、この世界で新たに生きようと覚悟を決めたのだ。
自分の中の《誠》ともう一度真摯に向き合い、そして答えを見つける為に…
そんな事を考えている時である。
♪トントン♪
「こんにちは~沖田君起きてる?」
ふいにシルビーが病室を訪ねてきた。
直ぐに寝ていた身体の半身を起こし、シルビーを向かい入れた。
「この間はごめんなさい…模擬戦なのについ熱くなっちゃって」
枕元に近づき深々と頭を下げ詫びるシルビー…
「いえいえ謝らないで下さい♪自分の方こそ凄く楽しくて熱くなり過ぎてしまいましたから(笑)」
それを聞いたシルビーは、びっくりして顔をあげた。
「え!沖田君も楽しかったの?」
「ハイ、遠慮なく剣をまじ合える相手なんて、そうそういませんからね♪楽しくて仕方ありませんでしたよ♪」
笑いながら答える沖田に、シルビーは満面の笑顔を見せ…
「実は私も♪手加減抜きで剣を振るえるから楽しくて♪」
お互い楽しかった様だ。
それから二人は笑顔を交わしながら、とりとめのない話に華を咲かせていた。
過ぎていく時間等解らない位に…
『土方さん…私は楽しく生きていますよ♪』
沖田はそう心で呟きながら…
因みに…
こんなシリアスなお話の影で、あの一連の寸劇(過去のお話を見てね♪)が行われている事を二人はまだ知らないのであった(笑)
一方こちらセフィロトでは…
「こ~らエロ餓鬼!!帰って来た早々いつまで寝てる!?」
舞台はセフィロトにあるロマの家の二階…ドゥモワーの部屋での事である。
いきなり部屋のドアを蹴り開けたロマは、真っ裸で高いびきのドゥモワーの股間に、躊躇なくをフルパワーで拳を落とした。
※男として同情を隠し切れない作者とナレーターである…((( ;゜Д゜)))ガクガク
見事粉々に壊れたベッドごと一階まで殴り落とされたドゥモワーは、今生死の境をさ迷いながら痙攣している(怖)
「さっさと起きて床を修理!終わるまで食事抜きだから!」
「そ、そんな…(涙)」
HPが限りなく0に近いドゥモワーは、横たわったまま股間を押さえ《口答え》をしようとしたのだが…
「なに…この私に文句があるの!?」
「イエ、ナンデモアリマセン…(T_T)、リョウカイデス、ロマサン(涙)」
泣いてるよ…あのドゥモワーが(笑)
お解りになったと思うがドゥモワーが唯一逆らえないばかりか、恐怖する存在…
それが《ロマ》なのである♪
そんな彼女の事を少し話そう…
彼女の名前は《ロマ・ピエロッタ》
前世では《魔女》として迫害を受けていた転移者である。
今は《雑貨&香(フレグランス)店バラライカ》を営む傍ら趣味で占星術業を生業としていた。
ついでに言えば仕方なくドゥモワーと二人で暮らしているそうだ(笑)
※その辺の所は特に強調しているみたい♪
ドゥモワーとの関係はちょっと特殊で《育ての親であり、姉であり、愛人》という間柄なのだ。
昔 《魔女》と呼ばれていた彼女は、当時住んでいた世界の住民達からいわれのない迫害を受けていた。
そんな迫害から母娘で逃れる途中の森で、赤ん坊だったドゥモワーを拾ったのだ。
木の洞で泣きじゃくる赤ん坊をほっとく気にもなれなれない彼女は、母と相談して拾って育てたのだが…
それが彼女にとって運のつきとなった。
途中で母が亡くなった為、
それはも〜う彼が成長するまでに普通では考えられない様な子育ての苦労があったらしい(笑)
※だってあのドゥモワーだし…
故に…
「お母さんじゃなくて、お姉さん!お姉さんだからね!うら若き乙女(推定年齢は?)を母親扱いしたら燻製にするからね!」
と、ドゥモワーを幼い頃から洗脳してきた。
そのお陰で、彼にとって彼女が唯一トラウマ級の存在になっているのである(笑)
因みに何故に《愛人》関係になってしまったのかは、彼女がドゥモワーととんでもない《掛け》をして負けたからである。
周囲の人々には《魔が差したのよ(涙)!》といつも嘆いているらしい(笑)
もう一つついでに言えば、こちらの世界へ一緒に来たのも、掛けの再戦でまた負けたからだそうだ(笑)
以上、では話を戻そう。
「あ、それと土産の中に紛れてた《欲情草》の件、後できっちり説明して貰うから楽しみにしているように(怒)!」
そのセリフで一気に青ざめたドゥモワーは、ロマの不自然な微笑みを見て一瞬で正座になり土下座した。
「はい!」
ただ土下座しながらそう答える反面、ロマに内緒でこっそり隠してる大量の欲情草の隠蔽先を何処にするか考えていた。
しかし…
「もう一つ言っとくけど、まさかまだ他にも隠してたりなんてして無いわよね〜♪」
ギクッ(;゜∇゜)!
「ドゥモワー♪私〜素直な貴方が大〜好きよ〜♪あ!好きだったら知っているわよね~♪」
…あ…詰んだ…(涙)
わざと間延びした口調になりながら、後光がさすような笑顔で立ち去るロマの姿がドゥモワーの前から消えさる頃、彼は大量の冷や汗に浸かりながら肩まで凍っているのであった…(笑)
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