第5話 大食い女王とある夫婦の日常
小春日和な季節…
巨大な《カラフル蝶々(決してモ○ラではない)》がセフィロトのお花畑を元気良く飛び交っているある日の事である。
「いらっしゃいませ♪」
幼さが残るフローラの、これまた幼い声の応対に、店の扉を開けるこの常連客は、いつも事実と現実の温度差を感じていた。
(あれ?前もあったよな~このフレーズ…)
だが…
この間と温度差を感じてる常連客の顔が違う。
「おはよう、お二人さん♪」
長身でモデルの様なスタイル…
茶髪でワンレンセミロング…
そしてちょっぴりツリ目な美人♪
その常連客は店に入るなり、カウンターの隅でマイナスオーラを発しながらコーヒーを啜(すす)る人物を見てちょっぴり…いや、かなりドン引きしていた(笑)
「おはよう琴音♪今日も美人ね~♪」
前回のシルビーとは明らか対応が違うフローラが、おしぼりとお冷やを持ってきながらセクハラ親父のようなセリフで声をかけていた。
これでボディ・タッチでもしようものなら完全にセクハラである(笑)
「どうしたの?あのカウンターの隅に転がってる不燃物は?」
取り敢えずあのマイナスオーラに取り込まれない様に距離をおいてカウンター席に座ったのだが、その不燃物の哀れな姿に彼女は眼を奪われていた。
「あ~あれね♪またマ・ザーの尻拭いに付き合わされた《可愛そうな成れの果て》よ(笑)所でいつもの《デカ盛りカツ丼+ステーキセット》でいいの?」
彼女はフローラの問いに頷きながら、不燃物と化した哀れな被害者に手を合わせた。
まぁ~読者の皆さんはもうお解りだろう…
《成れの果て=シルビー》である(笑)
《不燃物=シルビー》でも間違いではない♪
※ここ、試験にでますよ~(オイオイ♪)
それよりもちょいまち!
《デカ盛りカツ丼+ステーキセット》って、本気で注文したの?!
総重量5.2kgだよ!!
一体その細いウエストの何処にその量が収まるのか教えて欲しいよ(汗)
ゴホン!話を戻そう…
例のダンジョン事件から既に三日たった。
だがあのタフなシルビーがまだ復活していない所をみると、マジでマ・ザーの《精気枯渇(ドレイン・ロスト)》をまともに喰らったのだろう…
哀れだ…
まるで貞○の様な風貌に精気の無い顔色をしている(笑)
そんなシルビーをそっと見守ろうと話題を変えるアーシュ♪
※同意語で《見守ろう=見捨てよう》でもOK~♪(はい、ここも試験に出ますよ~♪)
「所で《冥王星(プルート)》で感知された《母岩(マトリクス)》の回収は終わったの?」
出来立ての料理を出しながらアーシュが尋ねた。
※すげー!本当に食べるんだこの量を!
「まだ途中…ここの料理を食べたくて抜けてきた♪」
え?約50億Km離れた場所から食べに来たんだ…
《デカ盛りカツ丼+ステーキセット》を…
色んな意味でこのちょっと《残念》な美人…
《焔綺琴音(ほむらぎことね)》は転生者&転移者である。
最初は何処にでもいる普通のアラサーOLだった彼女…
しかし残業帰りに通り魔に教われて死亡したのだが、直後異世界の貧民街の子供として転生した。
《超能力者(サイキッカー)》として転生した彼女は、金欲しさの実親から犯罪組織へと売られてしまった。
そして《改造人間(サイボーグ)》として改造されようとしたのだが途中で脱走。
脱走の際に基地を破壊したのだが、その際に生じた爆風に巻き込まれて意識を失った。
そして次に眼を覚ました時は、ロムトレート王国にある医療装置の中だったのである。
左腕と左足、右眼を失なった状態で…
その後、紆余曲折を経て義手・義足・義眼の背術を受け、今はセフィロトで冒険者を生業にしながら暮らしていたのだった。
現在彼女は《裏バイト》で冥王星で感知されたマトリクスの回収作業をしている。
勿論依頼主はマ・ザーである♪
(結構割りの良いバイトらしい)
「それがね~ちょっぴり手強いのよ」
「?」
「かなり強力なジャミングが施されているみたいでさ、まだ正確な埋没位置が特定できないでいるのよ(涙)」
いつの間にかデカ盛りカツ丼を八割がた食べ尽くした琴音は、溜め息(食べ過ぎのせいではない)を付きながらぼやいていた。
それを聞いたアーシュは驚いた。
※次いでにカツ丼の食べっぷりも驚いた(笑)
「琴音のスペック使ってもすんなり特定できないんだ」
アーシュの驚きに琴音は頷きながら食後のお茶を飲んでいる。
(ちょいまち!もう食べ終わったの?!)
「それとねマ・ザーが変なの」
え?何事も無かった様に話が進行していくのは何故…(驚)
「?」
「ジャミング関連のデーターを提出した時さ、それを見て《真顔》になったのよ」
『『…それは絶対変だ…』』
アーシュとフローラも思わず心中で叫んだ!
(しかもシンクロしてる)
次いでにカウンターの片隅転がっている不燃物も驚いていた(笑)
もしかしなくても何かとてつもない凶事の前触れかも知れない。
アーシュとフローラ(オマケに不燃物も)はお互い無言で顔を見合わせて冷や汗をかいてしまっていた…
そしてアーシュは決心するのだ!!
『今日は早めに店を閉めようかな』
と…
そしてその日の夕方…
本当に早目に店を閉めたアーシュ夫妻は、暫くぶりに街まで遊びに出掛けた。
「デ~トだ♪デ~トだ♪」
ちなみにフローラは凄~く上機嫌である。
最近、店休日の度に天気に恵まれなくて出掛けられなかったからだろう。
アーシュはそう思いながらフローラに手を引かれ街道を歩いていったのだった♪
(自宅に居たら何かしらに巻き込まれる確率があると本能的に感じたのも確かである…)
夕暮れのセフィロトの街並み…
この街の中央通りには、屋台が多く立ち並び様々な物が売られていた。
また昼と夜とでは屋台の種類も違う為、辺境の田舎街でありながらその賑わいも結構夜遅くまで続くのであった。
それに基本農業が中心の街でありながら、その喉かな風土と《温泉》がある事から、湯治に来る旅人も多い事もあり、それが賑やかさ要因の一つとなっているのもあったのだった。
余談ではあるが、
この街の住人達は、全員転移者か転生者である。
元々は、名もない異世界の小さな集落がそこに住む住人達共々、突然集団転移して来たのが始まりなのだ。
それが次第に他の転移者や転生者が住み着く事によって街へと変貌していったのだった。
後に、その集落の出身でこの街の領主になった《マーズ・ダイン》曰く、
「自分達がいた世界では頻繁に大地震が発生してたんだがな、ある日集落を捨てて安全な土地まで移民するか、我慢してここに留まるか住人全員で話し合っていたんだ…だがその話し合いの最中に突然かなり酷い揺れが襲ってきて…気がついたらここに集落ごと転移してたんだ」
との事だった。
「ねぇねぇ~アーシュ♪ここに寄ってもいい♪」
色んな屋台を見て回り、買い食いやらウィンドウ・ショッピングを楽しんでた二人。
するとフローラがお目当ての店であろうショップの前で足を止め甘えてきた。
【〈ランジェリーショップ 〉エマニエル】
なんなんだ…この挑発的なショップ名は?!
と、ナレーターは思ったのだが、二人には何が挑発的なのかは解らない(笑)
「最近できた異世界の下着屋さんだって♪イヴの一押しらしいし♪ね~入ろうよ~♪」
『あ~女の子だな~』
と思ったアーシュは、快く一緒に店内に入った。
のだが…
…その数秒後…
「あ・の・スケベ王妃!!」
店内からアーシュの悲鳴が木霊した!
そう…
看板を見れば知っている人は直ぐに感づくだろう♪
このランジェリーショップはナレーターがピンときた通り《ちょっと…いやかなり特殊なデザインの女性専門店》なのであった!
困惑するアーシュ…
後で解った事なのだが、王都から滅多に街まで足を運ばない王妃が、何故この店をフローラに紹介する事ができたのか?
そこにはある悪魔の囁きが存在していたのであった!
皆さんはもうお解りだろうから、あえて張本人の名前は公表しないけど♪
(ねぇ~マ・ザー♪)
店の奥から聞こえてくる…
「お買い上げありがとうございます♪」
のにこやかな声♪
おそらく…
いや確実に今夜は最低でも二ヶ所でエキサイティングな鳴き声が響き渡るだろう♪
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