第4話 悪魔は密かに笑わない♪

マ・ザーの食事が終わる頃には、セフィロトに浮かぶお日様も丁度一番高い場所を游いでいる真っ最中となっていた。


改めてだが今日は快晴である♪

(イヤイヤそれは関係ないし)

絶好のモンスターハント日よりでもある♪

(だからお天気は関係ないって)


「ハイ、二人分のお弁当♪くれぐれも気を付けてね」

後者のセリフは主に《シルビー》にかけた言葉なのだが…(笑)


マ・ザーの食事も終わり、これから例のダンジョンに向かう二人。

アーシュが心配しているのは、その討伐に《マ・ザー》が同行するだけではなく、シルビーと二人だけで事にあたるという事実なのであった!


まぁ~シルビー本人は今まで幾度となくマ・ザーのやらかしたお遊びの《尻拭い》をやっていた。

が…あくまでも《お遊び》程度のやらかしに対してである。


例えば…

新種の果樹を作ろうとして~うっかり新種のモンスターを誕生させてしまったのだが…

たまたまそのモンスターと目が合ってしまった転移したばかりのシルビーが、泣きながら素手で退治したりとか…


新型の医療機械を開発したと思ったら、どこをどう間違えたか新型惑星破壊兵器に早変わり♪

これもたまたま見学していた転移したばかりのシルビーが、マ・ザーのプログラムミスで暴走しセフィロトを破壊しようとしたので泣きながら素手で破壊させられたりとか…


こんな感じで彼女は転移してから僅か数ヶ月で、マ・ザー絡みの数十件のトラブルを無理矢理尻拭いさせられていたのだった。


今回マ・ザー自ら自発的にダンジョンに向かう時点で、お遊びではない事態になっているんだと気がつくには、シルビーにはまだまだ無理なのである。

だからアーシュが彼女のあんぴを心配しているのだった。


「流石アーシュ気が利く~♪ありがとう♪」

「では行きこうかマ・ザー」

ダンジョンに向かう二人は、見送るアーシュに手を振りながら姿を消していった。

そのアーシュの後で、痺れた足を引きずりながらフローラがポツリと呟いた。

「遠足気分で事が済むならいいけどね…」

それを聞いて静かに頷くアーシュ…

その頬に伝わる冷や汗が何を物語っているのか?

それは次の日に解明するのだった(笑)


翌朝…

喫茶店のオープンよりも早く、王都より医療スタッフが店の前に待機していた。

もちろん《精神的》にボロボロになってこちらに向かうシルビーの為に…



話は変わるが、

アーシュ夫妻が居を構える辺境の街 《セフィロト》で暮らす人達は《喫茶フルート》を訪れる事はほとんど無い。

まぁ~一部の住民を除いてはだが…


正確に言えば許可なく訪れる事ができないのである。

なぜならセフィロトの住民達はそこに喫茶店がある事は《認知》しているが、何処にあるのか《認識》していないからである。

勿論強力な《ジャミング結界》張ってあるからなのだが…


何故そうする必要があるのか?

その理由は三つ…


・喫茶フルートには王都であるロムトレートと地上を繋ぐ幾つかの《ゲート》の中でも、最大規模のものが存在しているからである。

その為、様々な危険性を考慮し複雑な《多重結界》を張り巡らせてあった。

※ただし《マ・ザー》の様に《ゲート》を必要とせず行来できる者も一部に存在しているけどさ♪


二つ目は喫茶店の側にあるモミの木の存在である。

意外かもしれないが、実はこのモミの木…

直径が約1.5m程あるのだが、その幹に何故かこちらからは開かない一枚の《木の扉》が取り付けられているからなのであった。

この《木の扉》については、あのマ・ザーですら解明にはいたっていない為、それ故に街の住人に何らかの影響がでない様に《特定保護管理対象》として管理されているのだった。


最後の理由…

それは《アーシュ夫妻》の存在である。

マ・ザー曰く、二人は《特異点》と呼ばれる存在らしい。

特異点とは…

多元宇宙の定義に反し《あらゆる次元・時空・時間軸にも過去・現在・予測される未来において類似する存在がない》者であり物の事であった。

その事から、現状解明されている特異性を踏まえて保護すべき対象として最も安全を確保出来ると予想される地上に居を構えさせたからであった。

つまり何の弊害も無く、いくらでも結界を張れ、なおかつ最低限の日常を二人に提供出来るからである。


この三つの理由で、故意に町の住民達に《魔法+科学的な効力》でジャミングや多重結界を施し認識を阻害しているのであった。

※勿論セフィロトの街にもこの事で被害や弊害が起きない様にはされている。


以上伏線ありありな解説はここまでにする♪

※だって~後で回収するの大変じゃん♪



では本編に戻ろうかな♪


やっぱりと言うか、当然と言うべきかは、この際ゴミ箱の中に捨てといて…

お肌艶々で満足気なマ・ザーとは対象的に、シルビーは精気を吸いとられて渇れ果てたアンデッドのような姿で医療スタッフに運ばれて行った。


「もう…好きに…して……」と

弱々しい呟きを残しながら(笑)

「なんだか丸一日ベッドで特殊なエキサイティングプレイしてたカップルみたいね♪」

フローラさん、例えが過激だよ(-_-;)

「フローラ…どこでそんなの例え覚えたのかな?」

思わず問いただすアーシュ…

そりゃそうだろ~フローラが言う様な特殊なプレイしたこと無いし…(笑)

ちなみに何故アーシュがそんな突っ込みをしているのかはこの際置いといておこう♪


「だって昨日イヴが、お店に来た時にね《マンネリは駄目よフローラ!夫婦生活って刺激がなきゃ長続きしないわよ!》と言っていたもん(笑)」


…………あ・の・スケベ王妃!………

『いくら王室が一夫多妻制だからって、よりによってフローラにも話すかな!今夜が怖いでしょ(涙)』

心の中で涙を流しながら呟くアーシュ(笑)

因みにその王妃によからぬ知恵をつけた犯人は、今彼の目の前にいる悪魔なのだが…


アーシュは気を取り直して悪魔…じゃなくてマ・ザーに何故シルビーがこんな哀れな姿になったのか…

あえて聞きたくはないのだが(笑)、ストーリーの進行上仕方なく事の顛末を尋ねてみた。


「ねぇ…ダンジョンで何があったの?」

「ウフ♪アーシュってば聞きたい?」

ニヤニヤしているマ・ザー…

あ、これは確実に聞いちゃダメなパターンだ!

だって彼女はニヤニヤしながら早く話したくてウズウズしている。


「最近ね立て続けに生態改造の実験に失敗してさ~素材にしてたモンスター達の死骸の処理に困ってたの♪」

成る程…

何だか話が見えてきたぞ!


「とりあえず~あのダンジョンに未確認の階層があったからさ、結界を張って取り敢えず其処に隠してたのよ♪」

という事は、既にマ・ザーはあのダンジョンに未確認の階層が存在していたのを知っていた訳だ…

「でもね、何故かその結界が壊れちゃってさ~そこからアンデッド化したモンスターが溢れだして暴れはじめちゃったのよ♪」

オイオイ、お茶目めぶりっ子しながら誤魔化している悪魔がここにいるよ(怖)!


「もしかしてその新しい階層をシルビーが発見したのは…」

「うん、そのモンスター達が暴れたからだと思うの♪」

アーシュよ、

開いた口が塞がらないとはこの事である…


「でもでも、そのお陰で新しい階層から新種の素材が発見されたんだからよかったじゃない♪」

「マ・ザー…それだけじゃないでしょ?」

アーシュのそんな突っ込みに悪びれた様子も見せず、彼女は胸を張ってぶっちゃけた!

「うん!アンデッドモンスター以外に見た事も無い植物が襲ってきたわ♪」

やっぱりそうなんだ…


そんな時、ふとある疑問が浮かんだフローラ。

「でもあんなに強いシルビーがそんなのに苦戦する筈無いし…じゃ~何であんなにシルビーがやつれているのかしら?」

そのフローラの一言で《しまった!》とばかりマ・ザーは顔色を変えた!


「え~と…そ、それはね……」

らしくない…

マ・ザーは明らかに動揺していた!


「数が多くて面倒いから《精気枯渇(ドレイン・ロスト)》を使っちゃった♪」

あ~そういう事なんだ…

つまりシルビーが戦っている最中にも関わらず、面倒いからと言う理由で、この非常に危険な全体魔法を使って一気にモンスター達のHPを削って倒したと…

いきなりだったから回避できず、その巻添えを喰らったんだシルビーは…


「テヘ♪♪」

…可愛子ぶりっこなんて何世紀前のギャグだろう?



このコントの様なシナリオを理解したアーシュとフローラは、ため息を付きながら天を仰ぎながら…

「今度…シルビーが来たら厚めのステーキを出してあげてもいいかしらアーシュ?」

「定価の二割引まで許す…」


流石商売人だねアーシュよ…

奢りじゃないんだ(笑)♪

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