第91話 今年もクリスマスがやって来る


 俺は秋の進路ガイダンスで国立大学に決めた。もし地方の大学ならアパート代も掛かる。学費が少しでも安い方がいい。一応都内の国公立大学もターゲットに入れてある。あの大学だけが都内にある国立大学じゃない。


 塾も行く事になった。一応国立宗慶をターゲットにしている塾だ。当然、みんなで同じ塾。


 紗友里、優里奈、真理香はもうワンランク上の塾が良いと言っていたけど、そこまで上げる理由は無いと言って若菜が決めた塾にした。


 父さんには要らぬお金が掛かるからと頭下げたけどそんな事気にするなと笑っていた。


 塾の受付の人が目を丸くして驚いていた。俺と女の子五人。若菜、真理香、優里奈、紗友里それにまどかだ。


 みんなお思い切り目立つ美少女。受付で手続きをしていると塾通いの男の子達だけでなく女の子達も目を丸くしていた。


 入塾テストは全員問題なくクリア。ちょっと簡単な感じがしたけど。これで放課後や土日が随分拘束されることになるけど仕方ない。



  例によって学期末テストが有った。成績順位に変動なく、良太や若菜が悔しがっていた。

そして一週間後から冬休み。今年は二学期が終わると翌日がクリスマスイブ。


 今は、テストも終わりAクラスは当然補講対象者も居ないから教室に緊張感は無い。


「雫、今年のクリスマスはどうしようか」

「うーん。また集まってやるのも良いけど。良太どうする」

「俺か、今年はパスするわ。白百合さんと一緒」

「ぶっ、そっか」


俺は徳山の側に行くと

「徳山、クリスマスの件なんだけど」

「悪い神城。俺今年は予約済みなんだ」

そう言ってクラス委員の所沢さんを流し見た。


「そういう事か。仕方ないな」

 はてどうしたものか。去年は良太も徳山もフリーだったので一緒にやれたが今年は予約が有るようだ。

あの五人と俺だけじゃ嫌だな。


「雫、二人がだめなんだから私達だけでやろうよ」

「そう言われてもな」


 いつもお昼はこの子達と食事しているから慣れていると言えば慣れてはいるが。なにもしないって訳にはいかないかな。


 想像して見て下さい。女の子五人に囲まれてクリスマスですよ…………。


「若菜、今年は止めない?」

「駄目、嫌なら私と二人だけでやろうよ」


「下坂さん。何を言っているのですか。雫さんが皆さんとやるのが嫌なら私とだけですれば良いのです」

「紗友里、何言っているの。…………」


チャイムが鳴って先生が入って来た。良かった。



 放課後


「ねえ、昼休みの時の話なんだけど。本当にクリパしたくないの」

「ちょっとなんかな」


 これは不味い。雫倦怠期? 若菜曰く

 どうしたんでしょう。でもなんかつまらなそう。真理香曰く

 雫…………。優里奈曰く

 クリスマスパーティですか。どうでもいいです。紗友里曰く

 今年は一緒にやれると思っていたんだけど。まどか曰く


「じゃあ、雫こうしよう。はでにやらなくて、ケーキとお茶だけで。ねっ!」

「若菜はクリパしたいのか?」

「したいよ。雫と一緒に!」

「そうですね。雫さん小さくてもいいからしましょう」

「雫。私もしたい」

「神城君。私も」

「雫様。私もです」


「そこまでみんなが言うなら……。分かった。じゃあ、俺の家のリビング狭いけどみんなで簡単にしようか。でも贈り物とかそういうのも無し」

「えーっ、雫簡単な物でも駄目?」

「駄目!」


 ふふっ、私は雫様と一緒の家にいる。次の日でも上げれる。

「紗友里、駄目だよ!」

「はい」

 読まれたかな。



 かくしてこの子達と一緒に我が家のリビングで静かにクリスマスパーティを行った。

 プレゼント買いに行かなくていいし、貰う気遣いも要らない。


 でも母さんが、


「皆さんいらっしゃい。嬉しいわ。雫の為にこんなに可愛いお嬢さん達が集まってくれるなんて。雫のお嫁さんは誰?」

「「「「「はい!!!!!」」」」」


「母さん!」

「おほほほっ、雫楽しみにしているわよ。皆さん楽しいんでね。じゃあね~」

「まったく、母さんは静かな池に石を投げ込むんだから!」


みんな俺の顔をじーっと見ている。どしたの?



 午後四時にまどかを信号まで真理香、優里奈を駅まで送って行った。若菜と紗友里が残る事に大変不満そうだったけど、この季節陽が暮れるのも早いので仕方ない。


 家に戻ると若菜と優里奈が何か話している。俺が戻ると


「雫様、下坂さんと話をしたのですが……」

「何を?」


「あの……。日曜の朝、雫様を起こすのを交代でしましょうという話です」

「えっ!」

「雫、いいでしょう。花音ちゃんだけずるい。やっぱり日曜日雫を起こしたい」

「どちらかが雫様を起こしている時は、干渉しないという事にしました。駄目でしょうか」

「そうは言ってもな。花音にも相談しないと」

 絶対反対するだろうな。


「では花音ちゃん含めて三交代では如何でしょうか?明日からはそうしたいです」


俺は江戸時代のお殿様か?


―――――


雫の苦難は続きます。


次回をお楽しみに。


この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。

「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」

https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る