第92話 お正月


 今年もお正月がやって来た。紗友里は、奈良の実家に帰っている。優里奈や真理香は家の用事が忙しく会えないと言って残念がっていた。


 今年も元旦は八時半に起きた。流石にこの時間は花音も若菜も起こしにはこない。


ダイニングに行くとテーブルで父さんが新聞を読んでいる。

「お兄ちゃん、おはよう」

「花音おはよう」


「雫も起きた事だから、元旦の挨拶しよう」

父さんが声を掛けると家族みんなでテーブルの椅子に座り


「「「「明けましておめでとうございます」」」」

「さっ、雫、花音食べましょう」

「「はーい」」


 母さんはおせちを出来合のものでなく、なるべく手で作る様にしている。とても美味しい。


「お兄ちゃん、初詣は午前十時出発だよね」

「確かそうだけど?」

「まどかさんは一緒に行くの」

「さあ、聞いていない。まどかは友達が多いからね。去年もそうだったし」

「そうかあ、じゃあ私と若菜お姉ちゃんだけだね」

「そうだけど」

 花音は何を考えているんだ?


「雫、お義父さんは明日くるそうだ。雫と話がしたいと言っていたぞ」

「俺と?」

なんだろう?珍しいな。


やがて十時になると


ピンポーン。


「あっ、若菜お姉ちゃん」


ガチャ。


「若菜お姉ちゃん、あけおめ」

「花音ちゃん、あけおめ」


 若菜が去年と同じ青を基調とした着物を着ている。首にはファーを撒いて、白いハンドバッグを持っている。少し化粧をしているのでいつもより顔立ちがはっきりしている。


「どうしたの雫。見惚れた?」


くそっ油断した。毎年見ているのに去年より更に綺麗じゃないか。

「い、いや。まあ」

「ふふっ、いいのよ思い切り惚れてくれて」


「まあ、若菜ちゃん、綺麗ね。去年より一段と綺麗になったわ」

「ありがとうございます」

「花音、支度するわよ」

「はーい」


 花音が支度をしている間、若菜はリビングでソファに横座りして待っている。


「雫、いよいよ受験生だから頑張ろうね」

「ああ」

「二人で地葉大か都内の公立にいこう」

「そうだな。都内の公立にしようと思っている。家から通えるし」

「わかった。あそこは多摩の方だから十分通えるわ。ねえ、公立の話誰かにした?」

「いや、若菜だけだけど」

「そっか、じゃあ他の子には黙っていて」

「何で?」

「いいじゃない。いずれ分かるにしても。学部は?」

「まあそこまで考えていない。理系ってだけ」

ふふっ、これで雫と一緒にターゲットを絞って勉強出来る。


「お兄ちゃん準備出来たよ」

 花音は去年と同じ薄いピンクをベースとした着物だ。自分の妹ながらとても可愛い。


「えへへ、お兄ちゃん見惚れちゃった?」

「ああ見ほれた」

「わあ、嬉しいな」


「雫、私にはそんなにはっきり言わなかったよ」

「若菜、そりゃまあ兄妹だし」


「若菜お姉ちゃん、お兄ちゃんのお嫁さん第一候補は私ですから」

「はいはい」

「ぶーっ、本当なんだから」


「さっ、出かけようか」

「「はーい」」


 俺達は今年も隣駅にある神社に初詣に来ている。今年も参道は人で一杯だ。参内まで随分ある。


「去年より混んでいる気がする」

「そうだな。結構多いな」


「あっ、まどかさんだ」

「えっ?!」


 確かに。もう参拝は終わったのか、おみくじを友達三人で引いていた。こちらに気付いた様だ。友達と一緒にこちらに近付いてくる。


「神城君、下坂さん、花音ちゃん、あけましておめでとう」

「うん、おめでとう」

「「おめでとうございます」」


 まどかは、赤をベースにした着物だ。淡いピンクのファーを首に巻いている。

「どうお、神城君」

「うんとても綺麗だよ」

「ふふっ、嬉しいな」


「まどか、この人が噂の神城さん?」

「うん」

「なるほどねえ。まあ、まどかの好みっていう事で。まどか話するなら向こうで待っているけど」

「ああいい、もう行くから。じゃあ神城君。今年も宜しく。じゃあね」

 なんか話題のつまにさせられていたような。


「雫、琴平さんの友達って、なんかね」

「仕方ないよ。俺なんか外見の魅力ゼロだろ」

「「そんな事ない!!」」

「雫は素敵よ。外見だってとても魅力的だから」

「そうだよ。お兄ちゃんの魅力分からい人は相手しなくていいよ」


いや、もう十分です。


今年も三十分は待って境内での参拝が終わった。

「お兄ちゃん、おみくじ」

「そうだな」


おっ、大吉だ。

「雫はどうだった。私は中吉」

「俺は大吉」

「いいな、私も中吉だったよ」

「花音は、高校受かって大願成就したから今年は中吉で良いんじゃないか」

「えーっ、毎回大吉がいい」


 待ち人待てば来るか。本当に来てくれるのかな雫。ライバル強敵が多いし。でも負けないわ。雫いつ決めるんだろう?



俺達は初詣が終わると家に戻った。若菜は着物のまま来ている。

「若菜、着物着替えてきたら?」

「うーん、もう少しこのまま」

たっぷり見せておこう。


午後二時になり流石にお腹が空いて来たのか、一度家に戻って着替えると言って若菜は戻って行った。花音は初詣から帰ったらサッと着替えてしまった。


父さんが、昼間からお酒を飲んでいる。楽しそうだ。

「雫、今年も今のままか?」

「どういう意味?」

「あの子達の事だ」

「…………今年中には決めないと思っているんだけど、どうすればいいか分からない」

「そうか」



 翌日、爺ちゃんが来た。今年も泊まることは出来ないそうだが、仕事の挨拶もあるらしくホテルは取ってあるという事で、父さんと色々話している。


「そうだ、雫お年玉」

「ありがとうございます」

 厚い。諭吉さんが一杯。嬉しいな。


「花音ちゃん、お年玉」

「お爺ちゃんありがとう」

「ふふっ、爺も嬉しいよ」


「雫、後で話をしたんじゃが」

「いいよ爺ちゃん」


―――――


爺ちゃんの話って?


次回をお楽しみに。


この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。

「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」

https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします

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