第89話 将来の事
中間テストも終わり、季節は晩秋に入って行った。最近女の子達が目立つような事も無く平穏な日々を送っている。多少水やりの時、優里奈と紗友里が揉めているが。
優里奈視点
もう、お知らせが有っても良いはず。でもまだ来ない。上手くいったはずなのに。あの後特に激しい運動もしていなかったし。……体育祭なんてリレー走っただけだから。でも練習も少ししたけど。
紗友里に対してはストレスが有る。あの子が転校してこなければ、間違いなく私が雫の隣を決める事が出来た。
今、彼女は雫と同じ家に住んでいる。これだけでも精神的にストレスだ。何も無いといいのだけれど。
紗友里はあの容姿だけど男を受付ない雰囲気がある。もちろん下手な事しようとすれば返り討ちにあっているはず。
だからまだ経験はないはず。それが逆に怖いけど。
彼は私の席の一つ前。今も目の前で授業を受けている。紗友里が隣の席なのは癪だけど。
お腹が痛い。えっ、これはまさか。直ぐに行かないと。
「先生」
「なんだ、東条?」
「ちょっと体調が悪くて」
「そうか、すぐ保健室いけ。一人で行けるか?」
「大丈夫です」
私は教室ではなくトイレに行った。
えっ、月のものが!そんな。一通りの処置をすると絶望の気持ちで保健室に。
ドアを開けると
「ど、どうしたの東条さん?顔が真っ青よ」
「少し休ませて下さい」
「分かったわ。直ぐにそこのベッドに横になりなさい」
保健の先生がカーテンを閉めてくれた。
涙が止まらない。おかしい。完璧だと思っていたのに。少しだけ眠くなって来た。
「東条さん。保健の先生、東条さんは?」
「まだそこで休んでいます。静かにして下さい」
「はい」
私、下坂若菜といつもの女の子達で東条さんが心配になり保健室へ来ていた。
そっとカーテンを開けると彼女が目を閉じている。あれっ、涙の後?……見なかった事にしておこう。
「まだ寝ているわ。仕方ない。教室に戻りましょう」
「下坂さん」
「あっ、目が覚めたの?」
「ええ」
「顔色めちゃ悪いよ。あっ、もしかして月のもの?」
彼女が首を縦に振った。
「そっか、じゃあもう少し休んで」
「あの、雫は」
「……ここにいるけど。雫」
「雫、少し傍にいて」
「いいよ」
この状況じゃ仕方ないか。
「雫、私達先に教室に戻っているね。チャイムなったら戻って来るのよ」
「分かっている」
他の子達が出て行くと
「神城君も大変ね。噂は聞いているわ。次のチャイムが鳴るまで私も席を外してあげる」
「すみません」
先生が出て行くと
「雫…………」
「どうした優里奈」
「少しで良い。私を抱いて」
仕方なく俺は優里奈を腕の中に入れると何故か、泣いていた。
ほんの数分だったけど。
チャイムが鳴った。
「俺行くから」
「私も行く」
「大丈夫か」
「うん」
雫に抱擁して貰ったら少し気持ちが楽になった。次の機会もあるから。そう思う事にした。
昼休み昼食を終えた俺は
「今日水やりだけど優里奈は休んいて。俺と紗友里でやって来る」
「いや私も行く」
「駄目だ、そんな青い顔して」
「でも」
「でもじゃない。教室にいて」
「東条さん。私が代わりに行きます」
下坂さんの意図を汲んだ私は、
「そうですね。お願いします」
これで紗友里は自由に出来ない。
「行くよ紗友里、若菜。時間が無いから」
「「はい」」
今の季節水やりは週一回昼休みだけ。三人は直ぐに戻って来た。紗友里が少し不満そうな顔している。つまり何も無かったんだろう。下坂さんありがとう。
放課後、
「雫、進路決めた?」
「若菜。その内父さんと話すつもり」
「えーっ、遅いよ。春の進路ガイダンスだってはっきりしてなかったじゃない。次は逃げられないよ」
「そうなんだよな」
「他人事じゃないの!」
「雫さん、そろそろお決めになれば宜しいのでは。私と一緒で決まりです」
「紗友里、何を訳の分からない事を」
「私は雫さんの進路がそのまま私の進路ですから」
この女何とかしないと。優里奈曰く
雫さんももっと厳しく言えばいいのに。真理香曰く
いい加減にして欲しい。まどか曰く
「紗友里、俺の進路は俺が決める。皆もだよ!」
全員が下を向いてしまった。前見ないと危ないよ。
優里奈と真理香と駅で別れる。更にまどかとも別れるともう若菜と紗友里だけだ。
「雫、家に一度戻ったらそっちに行くね」
「いいよ」
いつもなら若菜が遊びに来れば俺の部屋だけど紗友里も居るのでリビングで三人でいる。
「雫、本当に決めないと。大学は行くでしょ?」
「ああ」
「理系と文系はどっちにするの?」
「それがはっきりしていないんだ。若菜俺ってどっち派?」
「うーん。どちらかと言うと理系の頭だよね。テストの点数や昔からの物の考え方も」
「そうか、じゃあ理系かな」
「雫様、文系が良いのでは?」
「紗友里は何故そう思う?」
「お爺様のお仕事をお継になるなら文系でも良いかと」
「柚原さん、何言っているの。雫のお爺様のお仕事は理系的考えが無ければ出来ません。数字に強くなければ経営は成り立ちません」
「でも武術に理系は要らなくは…………ないかな」
「ふふっ、では理系だね」
「若菜は俺を小さい時から見ているからな。正しいんだろうけど。でもなあ」
「雫、何を心配しているの」
「大学で数字ばかり追いかけているのは……」
「雫様、東京の有名国立に入れば理系、文系どちらに入っても三年次にはどちらも選べます。今はあの大学の理系に入りましょう」
「いや紗友里。俺はあそこに行くほど頭良くないし、そこまで一生懸命勉強する気もない。今の成績で入れるところがいい」
「でも雫、もう少し頑張れば地葉大には入れるよ。一緒に行こう」
「それは魅力的だよな」
不味い。下坂さんに一日の長がある。何とかしないと。紗友里曰く
「下坂さんの言に聞くものがあります。雫様が地葉大ならば私もそこを目指します」
「紗友里は東京の有名国立に行きなよ。奈良の高校でも学年トップ、今の高校でも学年トップだろ。勿体ないよ」
「えっ、柚原さんの奈良の高校って県下一の進学校ですよね。そこでもトップ!」
あの高校は偏差値で大竹高校より高い。ここは雫の考えに乗って。
「そうですよ。紗友里さんは私達と違って頭いいんですから有名国立を目指してください」
「下坂さん、あなたに言われたくありません」
「待った、それ以上話進めないで。また拗れるから」
危ない、危ない。この二人は直ぐに揉めるから。
「とにかく父さんと今日話してから」
「雫、直ぐに教えてね」
「雫様私もです」
―――――
はてさて、雫の今後は?
優里奈さん少し可哀想。同情します。でも結果オーライですよね。
次回をお楽しみに。
この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。
「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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