第87話 学園祭二日目


 今日は午後から生徒会の巡回だが、午前中は空いている。

二日目は一般来客も多い。朝から賑わっている。俺達は昨日花音に約束した通り一番最初に1Aの花音の教室に行った。


 あれ、受付に花音がいない。

「あっ、神城さんのお兄さん今日も来てくれたのですね。嬉しいです。どうぞ中へ。六人様でーす」


 中々元気のいい子だ。中に入ると


「あっ、お兄ちゃんいらっしゃい。えへへ、似合うかな」

くるっと一回りして見せた。


「ああ、とっても良く似合っているよ」

「嬉しいな、こっちのテーブルくっつけるから皆で座って。お水持ってくるね」


 テーブルをくっ付けるとカーテンの向こうに行った。


「妹さん。一段と可愛くなりましたね。去年の夏以来ですか」

「真理香、そうだな。そう言ってくれると嬉しいよ」

「はい♡」


 なんか、早瀬さん目がハートになっている。どうしたのかしら。若菜曰く


 俺達は昨日と同じようにコーヒーとケーキのお薦めセットを食べた後、二年生の他の教室も見て回る事にした。


 2Bの教室に入ると、あれし白百合さんがいる。どういう事。あっ、でも良太が何か話しかけてる。会うのは不味そうなのでこの教室はパスしよう。


 他の教室も見て回ったが、中々楽しそうにやっている。お化け屋敷だけは避けた。何故って五回入りたくない。昨日紗友里とも入っているし。



「雫さん、十二時です。そろそろ食事をしましょう。午後一時から生徒会の巡回です」

「そうだな。どうしようか」


「雫、2Aの売上協力しようよ」

「若菜それは良い考えだけど」

「雫さん、私も賛成です」

真理香が賛成すると他の三人も賛成してくれた。



「徳山、焼きそば六つくれ」

「おお、神城か。了解」

「どうだ売り上げは?」

「順調だよ。追加発注をした分ももうすぐ売り切れだ」

「良かったな」

「ああ」


 学級委員の所沢明菜さんが

「神城君、出来たわよ、はい六つ」

「ありがとう」


俺がお金を払おうとすると

「雫さん、ここは私が払います。妻の役目です」

「「「妻?」」」


「紗友里!」

「柚原さん、何を戯言言っているのか分かりませんがここは割り勘にしましょう。雫さんの分は私が払います」

「何言っているの。雫の分は私が払うに決まっているでしょ!」



「おい、また始まったぜ神城ズ」

「やっぱり彼女を五股するとああなるんだな」

「気を付けようぜ」

「「「「「何ですって!!!!!」」」」


「「ひーっ」」


男子、言い過ぎ。


「みんな、割り勘だ。俺の分は自分で払う」

「分かりました雫さん」

「分かったわ雫」

「雫さん仕方ないわね」


 なんなのこの人達。訳分からない。まどか曰く

 ふふっ、いずれ雫は私のものよ。今の内ね。優里奈曰く



 更に隣で出している模擬店でジュースを別々に買うとオープンテラスでみんなで食べた。


「雫さん、そろそろ行きましょうか」


何あの態度。若菜曰く

気に入りません。真理香曰く

ふん、今の内よ紗友里。優里奈曰く

呆れた。まどか曰く



 俺は紗友里と生徒会室に行きながら

「紗友里、妻発言はもう無し。ここは学校だから」

「済みません雫様。つい気持ちが」

「雫様も無し。雫さん」

「はい」

少ししゅんとしている。切れ長のきつい目が泣きそうになっている。


「紗友里、分かったよ。俺も嬉しいけど学校では止めて。家ではいつも一緒なのだから」

「はい♡」


何か俺おかしな事言ったかな。


今日はトラブルもなく聰明生徒会長と一緒に午後の巡回に出た。


「神城君、二年生のお化け屋敷は私と一緒の巡回よ♡」

「へっ、あっ、はい」

何故か聰明先輩の目の中に♡マークが有った様な。気の所為か。



 今日は最終日。巡回順番で他の人が教室は回っているので、本来は野外だけのはずなのだが、二年生の教室だけ回った。はてどういう事?


 外に出て巡回していると若菜や優里奈が2Aの模擬店にいる。おかげで人の並びが多い。徳山が待っている人にここまでですと言っても帰らない人が多い。まあ多分そういう事だろう。


 後はグラウンドだ。野外ステージであっ、今年も白百合さんが歌っている。

良太が嬉しそうに前の席で見ている。白百合さんが2Aからいなくなったのってどういう事だったんだろう。良太知っているのかな?

 

 今年は特に何もなさそうだ。終わりの時の優里奈のお父さんの冗談も今年は流石にないだろう。良かった良かった。



「ふふっ、流石神城君ね。君の事は学校内で知らない人はいない。君が巡回するって言っただけで、誰も変な事はしない。助かるわ。

 ねえ。やっぱり生徒会に入ってくれない。私は今年で卒業。君が来年生徒会にいてくれれば心配ないのだけど」


「聰明先輩。お断りします。去年今年でもう十分でしょう。俺は普通に高校生活送りたいんですよ。最後の年位好きにさせて下さい」


「ねえ、神城君。そう言えばお父様に会った貰う約束だったわよね。都合いつがいい」

 

えっ、まだあの約束生きているの。もう無くなったと思っていた。


「いや、あの件は俺じゃなくてお爺ちゃんの会社に連絡して下さい」

「そんな事言わないで。ねっ」


 聰明先輩が俺にぐっと近寄って来た。と思ったら俺と聰明先輩の間にサッと手が伸びて


「生徒会長、雫さんとの距離が近いです」

「えっ、なに?」


多分聰明先輩には見えなかったんだろう。

「生徒会長、立場を利用して雫さんに色目を使うとは」

「何よ、色目って?」

「いました事です。親を理由に雫さんと近づこうなどという考えは止めて下さい」

「神城君、何この子。何とかして」


「紗友里、やりすぎ」

 紗友里の腕を優しく掴んで下げると


「雫様、失礼しました。つい心配になって」

「雫様?!」

「聰明先輩、気の所為です」



 今年はトラブルもない楽しい?学園祭だったが、心が休めなかった。やっぱり考えてしまう。


―――――


雫の心の休まりはいつなんでしょうか。


次回をお楽しみに。


この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。

「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」

https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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