第86話 学園祭


 紗友里が来てから色々あったが、何とか落ち着きを取り戻した。

……と思っていたのだが、


学園祭二日前になって、午後のHRで


「学園祭の時、雫さんと一緒に焼きそばを担当するのは私です」

「何言っているの紗友里。あなただけじゃない。皆雫と一緒に担当したいわ」

「そうよ」



「神城何とかしてくれ」

「そう言われてもな。分かった。じゃんけんにさせるか」

「いや、お前がずっと担当していて神城ズを順番で交代させればいい」

「いや、それは」



徳山視点


 神城ズとは下坂若菜、早瀬真理香、東条優里奈、琴平まどか、柚原紗友里の事だ。いちいち呼ぶのが面倒という事で俺がつけた。グループ名?だ。


 焼きそば模擬店は生徒会を通った。鉄板やガス台もクラスの中から提供できる奴がいてそれを借りる事になった。予算も十分に貰えた条件付きだが。


 一日七時間半。一回二時間を五人、焼き手、盛付け、具材準備、お金で担当すると二日でもクラス全員三十五人で基本一回拘束されるだけで後はフリーだ。ちなみに最後の日は早く終わるという甘い考えである。


 広告担当も必要だが、それは有志という事になった。皆何も問題無いと思っていたのだが。


 焼き手とパックへの盛付けは鉄板で並んで行う。その盛付けで神城ズが揉めているのだ。

 モテる奴は大変だ。



「徳山、担当は女子と男子別々でじゃんけんか阿弥陀で決めないか。そうすれば問題無いと思うのだが」

「そうだな。阿弥陀を紙に書くのが簡単でいいな」



「雫一緒だね」

若菜が嬉しそうにいう。


真理香、優里奈、まどか、紗友里が羨ましそうな顔をして二人を見ている。でもこれで決まりだ。


 俺達は一日目の一回目を担当する。理由は生徒会からの依頼だ。聰明生徒会長の依頼を断り切れなかった。午後巡回だ。だがこちらも聰明生徒会長が一緒という事で揉めたが、役目が役目なので紗友里だけ空いた時間良いという事になった。





 学園祭当日


何故か神城ズがみんな模擬店の側で宣伝をかって出ている。おかげで


「良太、早く具材準備。足らない」

「わ、分かった」

「パック足らないわ。教室から持って来て」

「急げ神城、もう二十人も並んでいるぞ」

「焼くのが間に合わない」



 若菜を除く神城ズが、思い切り宣伝してくれたおかげで一日目まだ九時半だというのに模擬店の前に二十人の行列が出来ている。



「流石。学年成績トップファイブの美少女達が宣伝するとこんなになるのか」

徳山が感心している。


「徳山、このままだと午前中で具材無くなっちまうぞ」

「そうだな、明日何もしない訳にはいかないから業者に追加注文しておく。もっとも焼きそば食べに来たのか神城ズを見に来たのか良く分からないけどな。

 神城明日も午前中みんなとここにいてくれないか」

「勘弁してくれ」


午前の担当が終わりホッとしていると


「雫、何処見て回ろうか」

「そうだな。まず花音の1Aに行ってみる」

「そうしましょう」

皆の賛同を得たので花音の教室に行く事にした。喫茶店をやっているらしい。



 花音が受付にいる。


「花音来たよ」

「あっ、お兄ちゃん。いらっしゃい入って。客入り悪くて」

「まだ初日の午前中だから」

「若菜お姉ちゃん達も入ってくれるの?」

「もちろんよ花音ちゃん」

「やったー!六人様でーす」


 中に入ると生徒達が驚いた顔をしている。どうしたのかな。


「あ、空いている席にお座りください」

喫茶店の店員風の恰好をした女の子が言ってくれた。


「ありがとう」


でもテーブルは四人座りが一番大きい。困ったな。若菜が


「ねえ、この二人席と四人席くっつけていい」

「は、はい」


周りも目を丸くしている。


「なあ、あれが神城さんのお兄さんだ」

「凄いな。噂では聞いていたけど」

「凄い美人揃いだ」

「腕も凄いらしいぜ」

「そ、そうなのか」


「ねえ、ねえ神城君よ」

「本当だ。凄いね」

「学年成績一位から五位まで全部あの人達でしょ。その上あの容姿」

「信じられないわね」

「神様は理不尽だわ」


 なんか俺出たくなって来た。


 俺達はコーヒーとケーキのセットがお薦めだというので全員でそれを頼むと嬉しそうにカーテンの向こうに行った。


花音が受付を離れて俺のとこにやって来た。

「どうした花音?」

「お兄ちゃんありがとう売上助かる。明日も来れる?」

「う、うん分かった」

「じゃあ宜しくね」


 売上協力依頼だ。良いのかな?


 その後、模擬店でたこ焼きを皆で食べて野外のステージで一コマだけ見ると俺と紗友里で生徒会に顔を出した。優里奈が何とも言えない目で紗友里を見ている。


生徒会室のドアを開けると

「あっ、神城君待っていたわよ。お弁当用意してあるけど」

「大丈夫です。食べて来ました」

「そう」

聰明先輩がじっと紗友里を見る。他の役員も紗友里に驚いている。


「柚原さん、別にいなくても神城君と私だけで良いですけど」

「いえ、雫さんが巡回をすると聞きました。当然私もお傍にいます」

「どういう意味よ」

「意味などありません。言った通りです」


 また始まった。少し紗友里に話し方注意しないと。悪気が無いのは分かるけど。


「聰明先輩。紗友里は武道の有段者で…………」

「知っているわ。神城君のお爺様の親戚の人の孫でしょ。榊原さんでしたっけ。その上転入試験はほぼ満点。先生達も驚いていたわ」

「ふふっ、そこまでご存じなら何も言わなくても宜しいのでは」

「まあいいわ。神城君が大丈夫って言っているのだから」


 俺やっぱり転校したくなって来た。


 そんな一騒動も終わり、俺と聰明生徒会長、紗友里は一年の教室から巡回する事にした。

 一年生は生徒会の巡回腕章に少し驚いていたが、特に問題は無かった。今年の一年生は素直な子達が多い様だ。花音が受付でニコニコしていたが。


 二年の教室を回り始めると

「雫さん、お化け屋敷のようです。ここも確認するのですか?」

「うん」

「柚原さん、ここは私と神城君で行きます。あなたは外で待っていて下さい」

「駄目です。私が雫さんと入ります」


 もう何でこうなるの!


「聰明先輩、明日も回りますから明日は先輩と一緒で。それに去年は一緒に入りましたよね」

「わ、分かったわ」

思い切り不服そうだ。


中に入ると

「雫さん、こういう所はこうするのですよね」

思い切り俺の腕にしがみついて来た。腕に当たる感触が中途半端じゃない。腕が挟まれている様だ。

「紗友里、もう少し緩めないか」

「いやです。やっとこうして居られるのですから」

「そ、そうか」

「ゆっくり巡回しましょうね」



 外に出ると

「神城君随分時間かかったわね」

「はい、しっかりと監視してきましたから」

「…………」

 不味い人を一緒に連れて来てしまった。


―――――


学園祭二日目はどうなる事やら?


次回をお楽しみに。


この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。

「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」

https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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