第84話 嵐は徐々にやって来る
二学期は学校行事が色々ある。学園祭、体育祭、そして中間テスト少し離れて期末テストと目白押しだ。あと進路決め。この学校は三年になると理系、文系で別れる。
本当は決めていないといけないんだろうけど俺は何も決まっていない。どうしようかな。有名国立とか興味ない。若菜が言っていた通り私立でもいいんだけど。
「雫様、何を考えているんですか?授業は終わりましたよ」
「えっ、いけない」
「雫様、…………」
「紗友里、雫さん」
「神城君いる?」
いきなり入口で俺の名前を呼んだ人がいた。声は知っている。逃げたい気分満載で声の方に振り向くと
「神城君、学園祭の件なんだけど」
「あっ、聰明生徒会長」
今気づいた風に言うと
「雫さん、こちらの方は?」
「神城君誰この人?」
「紗友里、こちら聰明生徒会長。聰明生徒会長、こちら二学期から転入して来た柚原紗友里さん」
「生徒会長!」
「柚原紗友里!」
なんか変な雰囲気。
「それで生徒会長が、雫さんに何の用事何ですか?」
「柚原さん、あなたに用はないわ。私は神城君に用事があるの」
「雫さんの用事は私にも関係あります」
「何でよ?」
「紗友里!」
「済みません、雫さん」
「ごめん聰明先輩、紗友里は別に悪気が有って言ってるんじゃないんだ」
「まあ良いわ。ところで話の件だけど学園祭の時、また去年みたいに巡回の役やって貰えないかな。君の名前は学校中に知れ渡っているから。安心できる」
あんまり良くない目立ち方だけど。
「考えさせて下さい。学園祭楽しめるの今年位なので」
「分かったわ。じゃあまた後でね」
それだけ言うとサッと教室を出て行った。
「雫さん、何の話なんですか」
「うん、後で説明するよ」
柚原さん、近さを利用して好き勝手しているわ。真理香曰く
調子に乗って。若菜曰く
あいつ、場所を利用して雫に。優里奈曰く
もう少し近ければ、不利だわこの場所。まどか曰く
今日の六限目はHRだ。学園祭の催し物を決めなければいけない。クラス委員が前に出て学園祭の役員を決めようとしている。まとめ役だ。
一年の時はクラス委員がそのままやったが、今年は決めるらしい。俺は関係ない振りしよう。
前に座る良太が、
「おい、雫。今年はどうするんだ学園祭。またあれやるのか?」
「今年はクラスの人と楽しみたいよ」
「そうだな。あっ、徳山が役員やるみたいだ」
徳山が学園祭のクラス役員なら安心だ。皆が、やりたい事を言い始めた。
まあ、順当に喫茶店、模擬店だな。お化け屋敷なんて出ている。去年は喫茶店だし。模擬店もいいんじゃないかな。
「神城、なんかやりたい事ないか?」
うっ、いきなり徳山が俺を名指しで呼びやがった。
「あ、ああ。俺は皆がやりたい事を一緒にやりたい」
「駄目だよ神城。何か言ってくれ」
「じゃあ、焼きそば模擬店」
「雫さん、焼きそば屋さんですか?」
紗友里が聞いて来た。
「まあ、楽しそうだし。順番で担当すれば他を見れる時間も多そうだし」
「そうですね、雫さんと一緒に見て回りたいです」
「そうか、神城いい思い付きだ」
「そうだな」
「「俺も焼きそば模擬店がいい」」
「「俺もだ」」
「女子はどうですか?」
「神城君の意見に一理あるわね。彼と回れるし」
「そうね、でも私彼いないけど」
「今のうちに探す」
「そっか」
何か変な方向に会話が流れているけど?
「じゃあ、決まりだ。今年は焼きそば模擬店で生徒会に出す。必ずしも通る訳じゃないから、それは心していてくれ」
早速、徳山が生徒会室に行ったようだ。あいつはイケメンだし面倒見がいい。いい男だ。でもまだ概算予算まとまっていないぞ?
まあいいか。あいつがクラス担役員なら楽しい学園祭になりそうだ。
放課後、また聰明先輩が教室にやって来た。
「神城君、ちょっと話があるの。生徒会室に来てくれない。時間は取らせないから」
「えっ、でも俺これから帰るんですけど」
「何か約束でも?」
「それは無いですけど」
「生徒会長、約束はあります」
いきなり優里奈が割って入って来た。
「雫は私と今日大切な約束が有ります。直ぐに帰る必要があります。ねえ雫」
優里奈が目線で促してくる。
「うん、聰明先輩今思い出しました。直ぐに帰らないといけません」
「約束って?」
「生徒会長、他人のプライバシーに立ち入るのは良くないと思いますが」
聰明先輩が優里奈を睨んでいる。
「分かったわ。神城君、明日なら良いわよね」
「生徒会長、明日は私と約束が有ります」
真理香が言って来た。
「そうなの神城君」
「そうです」
「神城君明後日は?」
「明後日は私と約束が有ります」
「下坂さん。…………。分かったわ。神城君、君の意思で生徒会室に来てくれないかしら」
「分かりました」
聰明先輩がさっと教室を出て行った。
「さっ、雫帰ろ」
「ちょっと待ちなさい。優里奈」
「何、紗友里。あなたは何も出来なかったでしょ」
「っ!…………」
「なあ、見た」
「ああ」
「モテ過ぎるのもほどほどがいいな」
「俺もそう思う。帰るか」
「ああ」
男子諸君、俺も一緒に帰らせてくれ。
結局、帰りもいつもと同じになった。下校時は花音がいないので紗友里は一人で歩くことに。
駅でみんなと別れようとすると
「雫、私達今日は約束があるでしょ。行きましょ」
「優里奈、さっきのは会話のあやでしょ」
「紗友里、いいえ雫とは今日約束があるの二人のね」
「「「「本当なの?」」」」
「雫行きましょ」
優里奈から言われると断れない。
「ああ、そうだな」
四人の強烈な視線を感じながら俺は優里奈に手を引かれて改札に入った。
「やられましたね」真理香曰く
「そうね、あれを強引に持ってくるとは」若菜曰く
「何とかしないと」まどか曰く
「こんな事許されない」紗友里曰く
「ふふっ、上手くいったわ。雫私の家に行こう」
―――――
これはこれは。
次回をお楽しみに。
この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。
「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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