第81話 家に帰る


 次の日、婆ちゃんの墓参りの為、両親と花音が爺ちゃんの所に来た。


「お爺ちゃーん」

「おお、花音か。久しぶりじゃのう。会いたかったぞ。そう言えばもう高校生か?」

「うん、お兄ちゃんと同じ高校だよ」

「それは良い」


「お義父さん、ご無沙汰しております」

「幸一郎君か。元気そうで何よりじゃ」


「お父さん。久しぶり」

「唯香、久しぶりじゃのう。一段と綺麗になったか?」

「お父さんいつからそんなに口が上手くなったの?」

「ははっ、事実を言ったまでじゃ」


「雫様のお父様、お母様、ご無沙汰しております。柚原紗友里です」

「えっ、紗友里ちゃん。まあ綺麗になって。いつ来たの?」

「昨日です。神城様に呼ばれまして」

「そうなの。久しぶりね。後でお話しましょ」

「はい!」


 若菜達がものすごい顔しているけど大丈夫かな?


 父さん達が来た午後、婆ちゃんの墓参りに皆で行った。若菜、真理香、優里奈、琴平さんそして紗友里も婆ちゃんの墓の前でとても長くお祈りしていた。

 婆ちゃんますます驚いているかな。


 その日の夕飯は一段と賑やかになった。珍しく爺ちゃんが父さんとお酒を飲んで盛り上がっている。楽しそう。


花音が俺の洋服を引っ張っている。

「なに、花音」

「ねえ、お兄ちゃん、まさかと思うけど柚原紗友里さんも嫁候補なの?」


紗友里に聞こえたのか

「花音ちゃん。候補ではないですよ。嫁です。これは決まっている事です」

「それは無いよ。お兄ちゃんのお嫁さんは私だから」

「ふふふっ、雫様。素敵な妹様です」


「な、何言っているの。本当なんだから。お兄ちゃんは誰にも譲らないわ」

「はい、分かりました。覚えておきましょう」



 楽しかった夕飯も終わりになった。父さんと爺ちゃんは何か話が有るらしく奥座敷に二人で行ってしまった。


「花音、花火でもやるか?」

「うん。でもあるの?」

「大丈夫。皆が来るからって塚原さんが買ってきてくれている。でも打ち上げとかは無いよ」

「全然いい」


「じゃあ、みんな花火しよう」

「「「「「はい」」」」」


 紗友里もやっぱり女の子だ。他の子達と楽しそうにしている。良かった。仲良くしてくれると嬉しいのだけど。


 その夜、紗友里は慣れている所為か一人で一間を使って寝た。他の四人は一間で寝ている。流石に琴平さんも一人では怖いと言っていた。


 でも江戸間八畳だから四人なら十分寝れるけど。両親と花音は奥の一間を使って寝ている。



 俺は一人で考えていた。爺ちゃんはどういうつもりで紗友里を来させたのだろう。確かに任せておけとは言ったけど。


 それに紗友里は奈良の高校。俺とは離れているし。まあいいか。でも爺ちゃんも凄い事言ってたな。


 高校生の内に子供なんて駄目に決まっているのに。でもなんで皆の前であんなこと言ったんだろう。


もういいや眠ろう。明日は帰るんだ。楽しかったな。でも何も考えがまとまっていない。このままでは不味いよな。




翌日


「爺ちゃん、また来るね」

「雫、待っておるぞ」


「お義父さん、ありがとうございました」

「幸四郎君、例の件宜しくな」

「分かっています。唯香とも相談して上手く対応します」


「爺ちゃん、またね」

「花音、楽しみにしているぞ」


「では神城様、これで失礼します」

「うむ、源之進殿に宜しくな」


「お爺様、お世話になりました。大変楽しかったです」

若菜が代表して言っている。


「また、来年も来ておくれ。皆も楽しみに待っている」

「ありがとうございます」


 爺ちゃんにみんなで挨拶をした後、塚原さんが運転するマイクロバスで地元の駅に向かった。


「塚原さん、ありがとうございました」

「雫様、またお待ちしております。皆様もお気をつけて」





東京駅に着くと

「雫様のお父様。これで失礼させて頂きます」

「ああ、気を付けて帰りなさい」

「はい」



 紗友里さんは奈良の高校に通っていると昨日の夕食後の話で聞いたけど。いくら彼女が魅力的でも高校生の遠距離恋愛なんて実る訳無いし。口だけだったのかな?

 でも、方法はある。まさかね。 若菜曰く



 俺達は東京駅から同じ電車に乗った。途中、真理香と優里奈と別れ、若菜と琴平さんそれに家族で駅を降りた。そして家の近くの信号で琴平さんと別れると


「雫、明日は?」

「若菜、明日は寝ていたいよ」

「えーっ、午後からじゃ駄目?」

「起きれたら」


「若菜おねえちゃんも疲れているんじゃないの?」

「そんな事ない」


「ふふふっ、若菜ちゃん、お昼には雫を起こしてあげて」

「起こすだけなら私がする」

「じゃあ、二人でね」

「いや、俺寝ているから」

「「駄目!!」」

「…………」




 若菜と別れてと言っても隣だけど、俺は家に入るとスポーツバッグを洗面所において手洗いうがいをしてから自分の部屋に戻った。


 ふーっ、楽しかったけど。

真理香や優里奈に一人で考えたいとか偉そうな事言ったけど何も見えていない。


 琴平さんは良いとしても、あの三人から一人選べなんて。誰を選んでも、いやそもそも選ぶ判断が出来ない。


 選んでどうするんだ。俺は高校生活を楽しみたいだけなのに。


 若菜。好きだよ。まあ、してしまったけど。とても大事な幼馴染。鍛錬のきっかけは、あの子を守る為。でもお嫁さんという感情はない。大切にはするけど。


 優里奈。好きだよ。多分他の子より好きなんだろう。中学の時、俺が告白して付き合い始めた。一時の誤解は有ったけど彼女の側に居たい。でも好きだから一緒に居たいのとお嫁さんにしたいとは違う気がする。


 真理香。どうなんだろう。してしまったけど大切な友達という感じ。お嫁さんとして考えるなんて。


 紗友里。知合いというだけ。何であんな事言って来たんだろう。爺ちゃんどういうつもりかな。でも確かに爺ちゃんから見れば申し分ない子だけど。


 琴平さん。友達だよね。



 今から将来のお嫁さんの事なんか考えたくもない。良いじゃないか皆と仲良くしてなにが悪いのかな。急いでお嫁さんの事決める必要なんかない!


 眠くなっちゃった。ご飯になったら起こしてくれるだろ。


―――――


雫怒っちゃいましたけどその通りだよね。


次回をお楽しみに。


この作品と並行して下記の作品も投稿しています。読んで頂ければ幸いです。

「九条君は告白されたい。いや告白はあなたからして(旧題:告白はあなたから)」

https://kakuyomu.jp/works/16816927860661241074


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価(★★★)頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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