第80話 新たなライバル


「誰、雫の側に居る人(女の子)は?」

「まさか、あの人がここに来るとは」

「東条さん、ご存じなんですか」

「下坂さん、柚原紗友里さんです」


「誰それ?」

「伊賀と甲賀の里の人達をまとめ上げた有力者。榊原源之進様のお孫さんです。不味い人が現れました」

「「「不味い人?」」」

「いずれ分かります」



 琴平まどかは自分が好きになった人は、少し腕っぷしの強い、勉強の出来る男の子だと思っていた。


 でもここに来てなぜ、下坂さん、東条さん、早瀬さんが高校生の内から神城君の側に居たいのは少し分かった様な気がした。


 あの人(神城君)は、色々な人から将来を期待され、そしてそれだけの実力を持つ人。だからこの人達も彼に魅力を感じていたんだ。


 ところが、更に新しい人が、それも私達より十センチ以上は大きい、それにあの胸。Tシャツがはちきれそう。そして切れ長で鋭い目。でも少し東条さんに似ている気がするのは気の所為かしら。




「雫!」

「あっ、お帰り、若菜、真理香、優里奈、琴平さん」

「雫、誰その人」


「紹介するよ。柚原紗友里さん」

「雫様、この人達は?」

「俺の友達で同じ高校のクラスメイト」

「ふーん、そうなの。始めまして、柚原紗友里です。そして雫様の妻です」

「「「「妻―!!!!」」」」



「そうです」

「紗友里!」

「雫様、良いではないですか。いずれそうなります」


全くこの女調子に乗って。

「紗友里、久しぶりね」

「あら優里奈、あなたも居たの。ふーん、まさかあなたがここにいるとはね」


「東条さん、お知り合い?」

「ええ、少しね」

「少しじゃないでしょ。親戚なんだから」

「「「えーっ!!!」」」


参ったな。このままでは収集がつかない。

「皆、外じゃ暑いだろう、中に入ろう」



 ふふふっ、面白いのう。思ったより早く孫が見れるかもしれん。



若菜達と紗友里と一緒に少し遅い昼食を食事処で取った後、道場で模範演習をする事にした。



「雫様、私も少し体を動かしたいのですが」

「紗友里、ここは神城の中でも各国のリーダーが集まっている。遊びじゃないから駄目。

 亀石さん達に迷惑が掛かるよ」


「雫良いではないか」

「爺ちゃん!」

「雫様、お願いします。電車の長旅で体が硬くなってしまいました」

「もう、まあ爺ちゃんが良いって言っているけど」


「雫、私たちも見てていい」

「えっ、それは構わないけど」


俺は若菜達をガラス張りの休憩室に連れて行った後、更衣室で着替えた。


「あっ、雫が来た。去年と同じ青い胴着に黒帯だ」

「かっこいいですね」

「琴平さんははじめてみるものね」


「あっ、柚原さんも出て来た。赤い胴着に黒帯。えっ、黒帯?」

「紗友里は榊原源之進、紗友里のお爺様の所で幼い頃から鍛えている。段位は知らないけど、普通の男では体に触る事も出来ないわ」


「「「ほんとに?!」」」



「亀石さん、ごめんなさい。紗友里が我儘言って」

「いいえ、大丈夫でございます。ここにいる者達も女子だからといって甘く見ると大変だといういい教訓になります」


「では紗友里様、お願いします」


「柚原さんがやるわよ」



 俺は、中学以来の紗友里の演習にちょっと不安があった。相手はフランスのリーダーだ。

あの人は、この中でも強い方だ。優しく相手してくれると嬉しいだけど

 

 紗友里は、自分より体の大きい男を見ても何とも思っていない。


 あっ、相手の蹴りを紙一重でかわした後、相手が次の動作に入る前に軸足に蹴りを入れている。強くなったな。亀石さんが困った顔をしている。

「次」


 あっ、今度は間を詰めて正拳を打って来た人を一瞬下がって間合いを取った後、次の拳が出る前に鳩尾に蹴りを入れている。中々いい。

 亀石さんが呆れている。



「ねえ、柚原さんって、凄すぎない」若菜曰く

「東条さんの言った通りだわ」真理香曰く

「始めて見るけど凄いですね」琴平さん曰く

「…………」優里奈曰く


 あの女、前よりも強くなっている。武道で強いうえにあの容姿。せっかくこの前、して貰ったのに。まあいいわ。結果が出れば雫の隣は私。



 俺はいつもの様に皆に模範演習を行って今日は終わりにした。



「雫様、ありがとうございます。でも準備運動にもなりませんでした」

「紗友里、そういう事は言わないよ。女の子なんだから」

「分かっております。雫様相手だったら、一瞬ですからね。でもこうして一緒に出来るなんて紗友里幸せです」

「こら抱き着くな」

「でも」

「場所をわきまえなさい」

「はい」

紗友里がしゅんとしてしまった。


「あっ、ごめん。言い過ぎた」

「いえ…………」


ふふっ、やっぱり雫様はお優しいお方、あの人達には早々と退場して貰いましょう。次の手も打ってありますし。



若菜達も山遊びをして、紗友里も遠くから電車に乗って来たうえに演習したから、先にお風呂に入って貰う事にした。五人一緒でもいいだろう。



「若菜達、紗友里と一緒にお風呂入って来て」

「「「「はーい」」」」

「私は雫様と一緒が」

「紗友里、駄目!」


 

 私達は、紗友里さんと一緒にお風呂に入ることになった。何となく分かってはいたけど何あの胸の大きさ。私、下坂さん、早瀬さん、東条さんもスタイルには自信あるけど。


 胸の大きさに比べて腰が締まりお尻もしっかりとしている。身長と相まってスレンダーな体だ。あの体であの動き。凄いというしかない。


神城君が少しだけ遠くに見えるな。でも負けない。私だって。



 俺達は食事処で爺ちゃん、塚原さん、亀石さんと一緒に夕食を取った。中々賑やかな風景だ。爺ちゃんが喜んで皆と話をしている。


「雫、みな器量よしだのう。流石我が孫じゃ。紗友里殿も来て頂いた。儂は楽しみだぞ」

「爺ちゃん、高校卒業までは待ってよ」

「良いではないか。別に学業して子育てしても問題なかろう。どうじゃ、皆さん、雫の子を産んでくれるか」

「「「「「はい!!!!!」」」」」


「爺ちゃん!」

俺は立場無いよ。今日は早く寝よう。


 ふふっ、雫のお爺様も許してくれている。もしこの前の事が上手くいけば。優里奈曰く


 まあ、お爺様がお許しになっているなら。真理香曰く


 なにこの二人の顔、油断できないわね。でも高校生の内なんて。若菜曰く


 どうしよう。まだ神城君にあげてもいないのに。早くしないと。琴平さん曰く


 ふふっ、この四人がどうあれ、私が雫様の妻になる事は決まっている。神城様が早く子供を見たいと言うならそれも良いかもしれない。


 でもまだ雫様とは……。この人達は多分雫様としている可能性がある。いつも側にいれるから。急いだほうが良さそうね。次の手も打ってあるし。紗友里曰く


―――――

本文中にある伊賀、甲賀の里と歴史上の伊賀、甲賀とは全く関係がございません。ご理解の程お願いします。


 うーっ、この子達凄い。紗友里の参加で益々大変そう。でも紗友里の次の手って?


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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