第75話 もうすぐ夏休みでもその前に
GW過ぎた後は賑やかだったな。優里奈の件もあったし。でも良太が今までのあいつに戻ってくれたことは嬉しい。白百合さんと毎日べったりだがそれもいいだろう。
「良太おはよう」
「おはよ雫」
「良太顔色がいいな。何か良い事あったのか」
「ああまあな、部活に戻れるようになったよ。父さんの説得は大変だったけど」
「そりゃ、良かったな」
「あの、神城さんおはようございます」
「あっ、おはよう白百合さん」
俺はそのまま自分の席に行くと鞄を机の上に置いた。さっきまで一緒に登校していた優里奈がチラッと俺を見る。
おれもチラッと見た後、一限目の教科書を取ろうとすると
「雫、学期末テスト」
「うん?」
「一緒に勉強しよ」
「うん」
俺の前に座っている琴平さんが振り向いた。
「神城君、私も一緒に」
「ああいいよ」
「ふふっ、じゃあ後で」
何故か優里奈の綺麗な目がきつくなっている。
お昼休み例によって俺の所に若菜、真理香、優里奈そして琴平さんがいる。
教室には他の子達もいるが、女子だけだったり、男女一緒だったりと賑やかだ。話し声も聞こえてくるが、ここはあえて聞かなかった事にするのが礼儀だろう。
今日は、花壇に水やりの日だ。
「雫、食べたら水やりね」
「うん」
「雫、再来週の月曜から学期末テストよ。来週からはテストウィークにもなるわ。今日からでも始めない?」
「雫さん、私もそれが良いと思います」
「雫、図書室で始めようか」
まだ私はこの会話には入れない。何となく神城君が三人のシールドで囲われている気がする。何とか突破しないといけないけど。
私はもう決めている。多分この三人もそうなのは間違いない。だから初めてをあげても何も変わらないと思う。でも最初は私が一番大切だと思う人にあげたい。
その為には、神城君に私をいつも意識させる必要がある。だから一緒に図書室で勉強する。
でも不思議、私達はまだ高校二年生、結婚とか先の話なのに……。この人達、一年の時から神城君を奪い合っている。何か理由が有るのかな。私には分からない。
「雫、水やり行こう」
「うん」
水やりはもう一週間に二回になった。今は梅雨も明けて厳しい日差しだ。花だって水が欲しいよな。
「優里奈、校門の所の花壇に水やって来る」
「うん、宜しく」
俺はホースリールとジョーロを持って校門に向う。結構暑い。
せっせと水やりをすると、花達が嬉しい顔をしている様な気がする。水やりが終わり校舎裏の花壇に戻るとちょうど優里奈も終わった所の様だ。
「優里奈、終わったよ」
「じゃあ、片付けて戻りましょう」
いつもの様にホースリールとジョーロを小屋の中に入れて片付け終わると
ガチャン
「えっ!」
優里奈が抱き着いて来た。
「雫、この前はありがとう。無茶な事になってしまって。お礼も何もしていない。今度家に遊びに来て」
俺の背中に腕を回して少し背伸びしながら口付けして来た。そのままにさせていると唇を離しじっと上目遣いに俺を見て
「雫、最近不安なの。下坂さん、早瀬さんそれに琴平さんと聰明さん。もしかしたらもっと増えるかも。あなたが素敵な人だから仕方ないのかも知れないけど。
ねえ、夏休み入ってからでいい。家に来て」
「わ、分かった」
俺は優里奈のいつもの我儘だと思って返事した。
放課後になると
「雫行くわよ」
若菜が元気に言って来た。俺は鞄を抱えるとそのまま教室を出た。
図書室は、別棟の三階にある。そこまで廊下を歩き階段を登るのだが、一年生、二年生はもちろんの事、三年生の男子までが俺が通るとみんな壁際による。
ちょっとこの前の藤原先輩の件はやりすぎだな。先輩が防具を付けて無ければもっと優しく出来たんだけど。
女子達は何とも言えない眼差しで俺を見る。俺、砂糖やケーキじゃないんだけど。とにかくああいう事はもう絶対にしないにしよう。
他の生徒が俺をいや俺達を見る理由は他にもある。そう俺の後ろに付いてくる四人の美少女。若菜、真理香、優里奈、琴平さん。
どの人を見ても学年トップの容姿であり、更に成績順位一位から四位までを独占している子達だから。
なんか複雑な気持ち。平穏な学校生活を望んでいたのに。もうこの学校居づらい感じ。転校しようかな。まだ一年半もあるし。
なんて思っていると図書室に着いた。
「雫、いつもの様に図書室では復習を中心にするわ。分からない事あったらすぐに聞いてね」
「分かったよ。若菜」
「ねえ下坂さん。土日の事も決めておきましょう。私は前の方法で良いと思いますが」
「前の方法?」
「琴平さんは初めてか。図書室は皆で来れるけど土日はそれが出来ないから、雫さんと一対一で勉強会するの。具体的には、土曜日は午後から下坂さん。土曜日と日曜日が私と東条さん。但し日曜は午後一時から午後五時まで。それで土曜の時間と一緒にする」
凄いこの人達そこまで神城君の事を!
「今回は四人いますからどうしましょうか?」
「真理香、今回土日は一人でやるよ」
「「「駄目!!!」」」
「そこの人達静かにして下さい」
図書委員に怒られてしまった。
優里奈が小声で
「今度の土曜日は下坂さん、日曜日が早瀬さん。次の土曜日は琴平さん、日曜が私では如何でしょう。琴平さんは雫の家から近いわよね」
「そうね、私はいいわ」
「私もそれで」
「私もそれでいいです」
これで神城君と二人だけの時間が作れる。私の家で行えば…………。
「琴平さん、雫と二人だけの時は、雫の家で行います。誰も下心起きない様に」
「…………」
何これ。既に闘争済みな訳ね。
「じゃあ始めましょうか」
若菜の言葉で始まった。
カリカリカリ。カリカリカリ。カリカリカリ。
カリカリカリ。カリカリカリ。
こうして俺はこの子達からしっかりと拘束された結果、夏休み二日前に張り出された結果は、
一位 東条優里奈
早瀬真理香
三位 下坂若菜
琴平まどか
五位 川平良太
六位 神城雫
七位 徳山大輔
なんてことだ。一位、三位が同列だ。皆気合入っている。良太は順位維持。俺が六位とは。それに徳山が七位に入って来た。
今まで十五位当たりだったのに。しかし白百合さんは五十位以内に居ない。大丈夫なのだろうか。
「雫、頑張ったわね」
「雫さん、凄いです」
「雫、良かったわ」
「神城君、良かったね」
「神城、追いついたぜ。次は抜くからな」
「徳山か、俺なんかすぐ抜かれるよ」
「お、余裕だな。今度一緒に勉強しようぜ」
「そうだな。それも良いな」
「徳山さん、雫さんは私達と勉強します。お気持ちは嬉しいですが、ご辞退ください」
「えっ?!……。神城、お前…………。検討を祈る、じゃあ」
「お、おい徳山」
行ってしまった。
「真理香!」
「でも……雫さんただでさえ女子のライバル多いのに男子まで入ってきたら」
「い、いや徳山彼女いるから」
「ですが世の中両党使いも居ますし」
「…………」
明後日から夏休み。もう爺ちゃんの所ずっといようかな。あっでも爺ちゃんこの子達連れて来いって言ってたし。どうしよう。
―――――
雫の苦難は続きます。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価(★★★)頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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