第74話 悪い奴は裁かれる


琴平さんを襲った悪い奴の末路です。

―――――


 俺、後藤克磨(ごとうかつま)は、琴平さんが好きだった。可愛くてスタイルが良くて頭も良い。バレーボールのセンスもある。そんな女の子が自分の彼女になってくれたらと思っていた。


 だが、彼女には意中の人がいる見たいだ。毎日部活に来る彼女を見ながら日増しに高まる感情が抑えきれず、琴平さんと同じ女子バレーボール部の知合い八代佳世に相談した。名前は伏せて。


「八代、今日部活終わった後、相談に乗ってくれないか?」

「おっ、後藤が私に相談かい。まさかやらせろなんて言わないだろうな」


 確かに八代佳世(やしろかよ)は背が高くスタイル抜群だ。こいつが練習していると男子どもが横目で良くチラ見している。中身は結構軽そうだが。


「いや、遠慮しとくよ。取敢えずファミレスな」

「そうか~残念だな。お前なら良いかなと思ったんだが、まあいい」

「…………」


 部活の練習後、俺と八代は近くのファミレスに行った。知合いがいないのを確かめると奥の方の席に座った。注文はドリンクバーだけだ。


「で、後藤相談とは何さ?」

「……俺前から好きな奴がいるんだが、そいつは他の男子が好きらしいんだ。どうすればこっちを向いてくれるかなと思ってさ。お前経験豊富だろう、こういう事」

「うーん、難しい事聞いてくれるな。私の場合は簡単だったけどね」



「どうした?」

「ふふっ、好きな子にちょっと告って、やらせてあげたら簡単に付き合ってくれた。一応今でも続いてはいるけど」


「なんだそれ。まあお前は女の武器が有るから良かったけど俺には無いからな」

「あるじゃん。あんただって男だろ。一度しちゃいなよ。その後優しくすれば、結構女の子は好きになるよ」

「強引な方法だな」

「でも他に方法無いんでしょ」

「ああ」


「で、誰なのさ?」

「お前の後輩、琴平まどか」

「何っ!……。あの女か」


 私は三年生。本来部活ではレギュラーになって夏の大会で引退するはずだった。それがあの女の所為でレギュラーになれずに引退する事になった。これはあの女を貶めるまたとないチャンス。こいつを利用するか。


「後藤、あの女抱きたいか」

「何を言っている。……まあ本音だ」

「だったら、私にいい考えが有るわ。今新人勧誘の真っ最中。それを利用するのよ」

私の考えを話した。


「それは直ぐにばれるだろう」

「大丈夫。私が琴平にだけその件で声を掛けて、他の連中には私が別件で声を掛けて部活後に用事を作る。特に部長にはしっかりと言い含めておくわ。分からない様に」

「分かった」


 確かに俺もうまくいくと思っていた。琴平さんは女子にしては背が高いが、所詮女の子、入り口側を塞げば、力ずくでどうにでもなると思っていた。


 そして途中までは上手く言っていた。だが逃げられた挙句、俺は気絶させられた。学校側は俺と八代に停学処分を言い渡した。

 親からはめちゃくちゃに怒られた。一切外に出るなとまで言われた。


 俺は当然退学になると思っていたが、部活担当の先生から改心した上で部活に励むなら今までの実績を考慮して一週間の停学にすると言って来た。


 バレーボールで大学推薦を狙っていた俺としては願ってもない事だった。進学校という学校側の体裁もあった様だ。


 八代に連絡を取ったが、あいつは休みを利用して彼氏と遊び放題だったみたいだが。

 まあ、あいつの彼氏は他校だから今回の件は分からないだろうけど。




 今日から学校だ。真面目に戻るか。

 俺は、下駄箱で上履きに……あれ上履きが無い。おかしいな。家に忘れたか。まあいい。来客用のスリッパを借りるか。


 教室に入ると皆一様に驚いた顔をしている。まあ、みんな知っているんだろうな。当分肩身が狭いが覚悟しないと。



 席に行くと、うぇっ!酷い。机の上が落書きだらけだ。椅子はべとべと。なんじゃこれ。

隣の席に座る仲のいい奴に

「おはよ。これ酷いよな」


 俺の顔を見ると汚物でも見る様な顔をして

「話しかけないでくれるか。まさかお前が、同じ部の女子を部室で襲う奴とは思わなかったよ。二年まで真面目な奴だと思っていたのに。お前最低だよ」



「よく学校に来れたもんだよな」

「汚物と一緒に居るのはいやだぜ」


「後藤君、真面目な子だと思っていたのに」

「所詮見かけだったのよ」

「もう話しかけないし。無視しよう」


「くっ!…………」


これじゃあ勉強どころじゃない。


予鈴が鳴って少しして担任の先生が教室に入って来た。


「みんなおはよう。今日から後藤が停学期間を終えて戻った。仲良くな」

それだけ言うと出て行ってしまった。


 完全に無視されている。とにかくこの椅子じゃ座れない。俺は教室を出て、担任に声を掛けた。

「先生」

「どうした後藤」

「椅子と机が汚されていて」

「お前、上履きどうした。スリッパじゃないか」

「朝来たら上履きが無くなっていて」

「そうか。大変だな。机と椅子は自分で綺麗にしろ。予備は無い」


 駄目だ。仕方なく教室に戻ろうとすると隣の教室から八代が出て来た。泣いている。


「どうした、八代」

「後藤、机が悪戯書きされていて。椅子がべとべとで。皆から総スカン食らった」

「お前もか」

「私、教室に戻れない」

「……保健室に行くか?」

「うん」



保健室に行くと保健の先生が

「どうしたの君達。どこか悪いの?」

「いえ…………」

「じゃあ、教室に戻って。ここは男女で遊ぶとこじゃないから」


「「…………」」




「八代、今日は帰るか」

何も言わずに頷いた。




 次の日、新しい上履きと机の悪戯書き消し、それに椅子の油取りを持って教室に行った。

 何とか座れるようにして授業を受ける事にした。



 やっと午前の授業が終わり、購買で買ったパンとジュースを持って、部室に向かう。ここなら一人で食えると思ったが。



「後藤、お前は強制退部だ。二度と顔を出すな」

「部長そんな……。顧問は大丈夫と言っていたのに」

「顧問からもお前は退部だと言われている。嘘だと思うなら自分で聞け」



俺は直ぐに職員室に行くと、他の先生の視線が凄かった。とにかく顧問の先生に

「先生。俺は部活やれるんですよね」

「お前は退部だと言ったはずだが。お前がいると部が試合に出れないどころか存続も出来なくなる」

「そんな……」


仕方なく、パンとジュースを持って教室に戻ると椅子がまたべとべとにされていた。


「くそっ、誰だよ。こんな事したのは。お前知ってんだろう?!」


隣にいる奴の胸倉を掴んで起き上がらせた。


「何すんだよ。知らねえよ」

「ふざけるな」

「ぐはっ」


「きゃー。後藤君が殴った」

「先生を呼んで来る」


 やっちまった。



 婦女暴行未遂、停学処分明け二日目に無抵抗の生徒を殴ったことで、文句無しの退学処分。挙句殴った奴からは訴えられて警察沙汰になった。


 矢代の口車に乗らななければ。あいつは停学明け二日目から登校拒否となりそのまま自主退学した。


どうすりゃいいんだ。


―――――

やっぱり悪い事は早々世の中簡単に許してくれません。

しかし、先生方も反省した方が。

あまりこういうの好きじゃないですけどけじめです。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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