第66話 ホワイトデー
今日は三月十四日。そうホワイトデーだ。色気なく言えばチョコレートメーカーの戦略に乗っただけの話ではあるが、それでもではある。
バレンタインデーの時チョコを貰った女性に男性側から自分の心を表すのだ。世の中はそれでいいだろう。
だが、それでは困る男もいる。
はぁーっ、取敢えず考えた形で行くか。学校までの間に重い気持ちをなんとか整理して…………教室に着いた。
教室に入った途端
うっ!案の上視線を浴びる。チョコをくれた女の子四人だ。俺は、鞄を自分の席においてチョコの入った袋から四つのラップされたチョコを出すと女の子一人一人にお礼を言いながら配った。
思いのほか嬉しそうに受け取ってくれたので良かった。そして席に戻ると先ほどの女の子達より見た目でも分かるちょっと高そうにラッピングされたチョコを出すと
「琴平さん、バレンタインのお返し。チョコとても美味しかった」
ジーっと俺の顔を見る琴平さん。
「うん、良かった。食べてくれたんだ。チョコありがとう」
今回は、私も居るという事を忘れないでくれればいい。でも出来れば…………まあ無理な話よね。でもまだ二年ある。
聰明先輩には昼休み生徒会室に行けば会えるだろう。後の三人は放課後で。そう思っている内に願力先生が入って来た。
眼鏡を掛けたゴリラ見たいな先生がちょっと顔が上気して見えるのは気の所為かな。
午前中の授業が終わり、いつもの様にお昼休み、若菜、真理香、優里奈と昼食をとる。
食べている途中で
「昼食食べたら、聰明先輩の所行って来る。多分生徒会室いると思うんだけど」
「雫、聰明さんは生徒会室にいないわよ。お昼はいつも教室で食べている」
「教室?俺知らないのだけど」
「私が連れて行ってあげる」
「優里奈ありがとう」
仕方ないわ。生徒会に繋がりあるの東条さんだけだし。
私も聰明さんの事知らないし。
「あの、みんなには放課後で良いかな」
「分かった」
「いいですわ」
「いいよ」
お昼を食べ終わると
「雫行くわよ」
俺は、チョコをまとめて入れてある袋から聰明先輩用のラッピングを取り出すと優里奈について行った。
階段を登る。文化祭の時、聰明先輩と生徒会の巡回役として二年生の階には行っているけど、やっぱり緊張する。
「雫ここよ」
2-Aとかいてある教室の入口に立つと先輩はクラスメイトと話をしていた。優里奈とじっと見ていると話をしている先輩女子の一人が聰明先輩に俺達がいる事を教えてくれたみたいだ。
「あっ、神城君!」
大きな声を出したおかげで教室にいる全員がこちらを見た。案の定何かコソコソ言っている。
「ねえ、あれが例の神城って子」
「そうそう、なんかうざっといね」
「見た目とはずいぶん違うらしいわよ。成績も学年トップテンに入っているっていうし」
「ふーん。そうなんだ。でも背が高くてがっちりしているわね」
聞こえていますよ。先輩達。聰明先輩が近づいて来た。
「神城君、あら東条さんも。誰かに用事?」
「あの、聰明先輩に。これバレンタインのお礼です」
「えっ、ちょっ、ちょっと。これ持って来たの。嬉しいけど生徒会室の方が……」
「あら奏、あの子にチョコ渡したんだ。へーっ」
「らしいわね」
「後で聞いてみますか」
さっき聰明先輩と話していた先輩女子達の話が聞こえて来た。
「すみません。でも持って来たので受け取って下さい。チョコとても美味しかったです。ありがとうございました」
「う、うん。良かった。じゃあまたね」
顔を耳まで赤くして席に戻っていった。席に着くと周りから質問を浴びている。
「雫、戻ろうか」
「ああ、なんか悪いことしたかな」
「まあ、ちょっとね」
ふふっ聰明さん、雫に手を出そうとするからよ。本当は生徒会室で他の人のいない時に渡すのが常識だけど。これで釘をさせた。
「雫、春休みはお爺様の所行くんでしょ。帰ってきたら会えないかな?」
「いいけど」
「じゃあ、帰ってきたら一番に連絡して。開けておくから」
「分かった」
二人きりになれるから出来る約束。二年に向けていい感じでいけそう。
教室に戻るともう若菜は教室に戻っていた。真理香も席の友達と話している。
まあ、予定通り渡せたかな。
放課後、若菜がやって来た。少し話をしていると教室には人がいなくなった。琴平さんを除いてだけど。まあいいか。
「若菜、真理香、優里奈。バレンタインチョコありがとう。美味しく食べたよ」
俺はチョコ入った袋から三つのラッピングされたチョコを取り出すと
「若菜、はいこれ」
「ありがとう」
「真理香、はいこれ」
「ありがとう」
「優里奈、はいこれ」
「ありがとう」
「若菜、真理香、優里奈、はっきり言うけど今、三人の誰か一人を選べなんて俺には出来ない。三人共大切な友達なんだ。だからこんな優柔不断な俺なんか嫌だと言うなら嫌われても仕方ないと思っている」
「「「そんな事ない!!!」」」
「雫、いつまでに一人を選んでくれるの?」
「若菜、分からないよ。いつの間にか三人共いなくなっているかもしれないし。ちょっと寂しいけど」
「雫、私だけは絶対あなたから離れない」
「雫さん、私もです。最後には私を選んでくれると信じています」
「雫、私よね。最後に雫の隣にいるのは」
「みんな待って。三人共そう言ってくれるのは嬉しいけど。決められないかも知れないよ」
「ずっと雫の側に居る」
「いえ、私です。雫さん」
「雫、私よ」
「…………。分かった。じゃあ今はこれでいいよね」
「「「うん!!!」」」
凄いこの三人。でもだから三人の内の誰かを選ぶなんて事も無い可能性がる。その時は私。
三人が自分、自分と言えば言う程、神城君は選び辛くなる。ふふっ、その作戦もありかもね。
まあいいわ。卒業までまだ二年ある。その時彼の隣にいるのが私であれば良いだけよ。さて聞きたい事は聞けた。帰るかな。
「神城君、三人さん。お先に。また明日」
「なに、あの上目目線」
「琴平さん私達の話を聞いて何を考えたんでしょう」
「どうでもいわ。でもあの子に雫は渡せない。分かっているわよね下坂さん、早瀬さん」
「「勿論」」
やっぱり、これ呉越同舟かな。
真理香と優里奈とは駅で別れて若菜と二人きりになった。
「雫、お爺様の所に行く前に会えないかな」
「でも、明日、明後日と終業式の日しかないよ」
「雫どこが一番開いている」
「うーん。終業式の日は爺ちゃんの所に行く支度あるし。明日と明後日なら何も予定入れていない」
「じゃあ、明日の放課後いい」
「何するの?」
「取り合えず家に帰ってから」
「分かった」
家の玄関を開けて
「ただいま」
「お兄ちゃんお帰り」
「花音早いな」
「何言っているの。花音は来月からお兄ちゃんと同じ高校生だよ。もう中学は卒業したわよ」
「そうか」
「ところでお兄ちゃん、上手くチョコ渡せた」
「ああ、みんなに渡す事出来たよ」
「みんな納得してくれた?」
「うん納得してくれた」
「そうか、そうか。えへへ。それならいいや」
そう言うと花音は廊下をペタペタと歩いて二階に上がり自分の部屋に行ってしまった。
何なんだ。でも来月から花音も一緒か。
―――――
いやあ、何とも言えません。三人いや四人共雫隣ポジション何が何でも取るつもりですね。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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