第65話 ホワイトデーはどうしよう


 今日も今日とて若菜と一緒に駅まで歩ている。後ろの琴平さんいい加減に声掛ければいいのに。


「なあ、若菜。最近良太の様子が変じゃないか」

「うんまあね。でもクラス一緒じゃないから分からないよ」

「そうか」


「雫、もうすぐホワイトデーだね。それから三日で終業式。早かったね。ねえ春休みはどうするの?」

「うん、爺ちゃんの所に行く。あっ、今の季節はまだ山の中厳しいから夏休みみたいにいけないよ」

「分かっている。いつから行くの?」

「春休み入ったら翌日から一週間」

「そんなに!その間雫とは会えないの?」

「ごめん仕方ないよ」

「じゃあ、その前に雫。いいでしょ」

「えっ…………」

「だってそんなに会えないなら。お願い」

「……分かった」

この会話、後ろの琴平さんに聞こえて無いだろうな。振り向くの不味いし。



 今の会話どういう意味だろう。爺ちゃんの所ってなに?下坂さん今のお願いって何?

 後で聞こうかな。席隣同士だし。



 俺は教室に着くと良太が登校していた。側に女の子がいる。あれっ、あの子って。


「良太おはよう」

「おはよ雫」


 女の子がこっちを見ている。やっぱり軽音部の。そうか琴平さんが言っていたのは本当なんだ。良太が、また女の子と話し始めた。まあいいか。


 良太は、この前の学年末テスト以来、人が変わった。挨拶すると返事は返してくるがそれだけ。部活も中断しているらしい。学校が終わればすぐに帰って行った。でもこれが理由なのかは分からないな。




「神城君おはよ」

「ああ琴平さんおはよ」

「ねえ、春休み爺ちゃんの所って何?」

「えっ、聞こえていたんだ。うーん。気になる?」

「えっ、…………。あっ、ごめん。いきなりだったよね。聞いたこと忘れて」

気になり過ぎて神城君の気持ち考えなかった。ミスったな。


 前の入口から願力先生が入って来た。先生グッドタイミングです。




 ホワイトデーに悩んだその週の土曜日、俺は仕方なく花音と一緒にショッピングモールのある駅に来ていた。


 今までは若菜だけだったので、一緒に買いに来ていたが、今回はそうはいかない。まさか若菜に他の女の子のお返しを相談する訳にも行かず花音と一緒に来ることにした。


「お兄ちゃん、花音が食べたチョコをくれた四人と高級チョコくれた二人のお返しは選べるけど、若菜お姉ちゃん、真理香さん、優里奈さんのプレは私じゃ選べないよ」

「うーん。困った」


「だから悩まない方法が有るって。三人共無しにして花音を選ぶって方法が」

「それは無い。花音は大切な妹だ。あの子達とは別だよ」

「それって特別って事?」

「そうだけど」

「そうか。えへへ。そうか特別か」

何か花音勘違いしている様な。でも今はこのままで。



 午前中に花音はクラスの子四人分と琴平さん、聰明先輩のお返しを選んでくれた。

 ピンクや紫や青のラッピングに簡単なリボンを合せて付けて貰った。

俺では選ぶことが出来ない内容だ。花音を連れて来て良かった。さて三人のプレを選ぶ前に昼食を取る事にした。


「花音、お昼にしようか。何が良い。今日はご馳走してあげる」

「えっ、ほんと。じゃあ〇ック」

「いいのかそれで」

「うんいいよ。新製品出たし。食べてみたいから」

「そうか」



 俺と花音は、駅の近くにあるお店に入った。とても混んでいる。順番になると


「お兄ちゃん、私はこれのセット。飲み物はストロベリーシェイク。席取っておくね」

「わかった。俺は○ッグ〇ックのセットとコークで」


 カウンタで頼んだものを先に花音に席を取らせておいたテーブルに持って行くと花音が窓の外を見ている。


「どうした花音?」

「お兄ちゃん、あれ良太君でしょ。可愛い女の子連れいるよ」


 本当だ。白百合綾香さんだ。今日はデートなのか。おっ二人とも嬉しそうな顔をしている。良かった。


 メインを食べ終わった花音はポテトを可愛い口でハムハムと食べながら

「お兄ちゃん。三人にプレ決まった?」


俺は首を横に振る。


「駄目じゃん。どうするの?」

「うーん。色違いのハンカチ。色はチョコくれた時のそれぞれの色で」

「それでいいの。でもそれじゃ決着付けれないよ」


「でもなあ。なあ花音。決めなきゃいけない事なのか。三人共友達だし」

「お兄ちゃん、現実把握能力欠如だよ。

 三人共明確に彼女候補いやお嫁さん候補の意思表示しているじゃない。だったら決めないと三人を真綿で首絞めている事になるよ」


「そうなのか。……分かった。決めない事にする。三人にそう言うよ」

「えーっ、それでいいの。まあ三人がそれで納得するなら私は良いけど」


 結局、若菜には真っ白なレースのハンカチ、真理香には淡い青のレースのハンカチ、そして優里奈には紫のレースのハンカチを買った。


 優柔不断だと呆れられて三人共離れていったら寂しいけど、今の俺に三人の誰かなんて選べない。だったらこうするしかない。今は決められないと。


 爺ちゃんのお年玉が役に立った。諭吉さんが二枚消えた。しかし女の子のハンカチって高いよね。


 俺達は、買い物が終わったのでそのままデパートを出るとえっ、良太が白百合さんと何か話している。

 あれ良太が彼女の手を引いて歩き始めた。あっちって。若菜と真田の事を思い出した。

 まあ、そういう事なのね。仲良くね。


「お兄ちゃんどうしたの」

「うん、何でもない。帰ろうか」

 まだ花音には教えないでおこう。自分の事を棚に上げるとはこの事だろうけど。




良太と白百合さん


「綾香、良いかな?」

「でも…………」

「もう我慢できないよ」

 今回の色々な件でストレスが溜まっている。綾香とすれば少しは気が晴れるかもしれない。


「分かった」

良太君とするって、私きちんと彼女として認められたんだよね。


…………。


彼女初めてじゃなかった。ちょっと驚いたけど俺もそっちの方が気が楽でいい。



俺達がラブホから出ようとした時、


「おっ、テニス部の川平じゃないか。そっちに居るのは軽音部の白百合さんか。昼間っから盛んだね。白百合さんこんど俺ともしてよ。まあ今日はこっちの連れと用事があるからまたな」


 不味い、二年D組の村上だ。東条さんの時や文化祭の時、雫にやられた奴だ。なんて奴に見られたんだ。


「良太君。大丈夫?」

「綾香大丈夫だ。それにもうすぐ終業式。学校で会う事もないだろう」

「そうだけど」


―――――


良太。ちょっと不運。変な方向に行かなきゃいいけど。



次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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