第64話 良太の気持ちは複雑
俺は川平良太。中学時代、神城雫と下坂若菜そして俺の三人は三年間クラスが一緒だった事もあり、とても仲が良かった。三人で遊びにも行った。一年の時、誘われたテニスクラブにも三人で入った。
雫は、用事があるとかで夏合宿とか休日練習にあまり熱心に参加しなかったが、下坂さんは一生懸命練習をしていた。
下坂さんは雫の幼友達。生まれた日も病院も同じ、家も隣同士という事でとても仲が良かった。
二人を見ていて俺も楽しかったが、彼女のテニスをやる姿やちょっとした仕草や行動が俺の心の中に染み込んでいき、いつの間にか下坂さんに好意を寄せる様になった。
クラブ活動でもなるべくペアになる様にして彼女に色々話しかけたが、それが良くなかったのか、途中から俺を避ける様になっていた、いや相手にされなくなって行った。
俺の親は病院を経営している。十床程の街の小さな病院だが、地域に根付いた医療で人気があった。
その所為もあるのか俺に告白してくる女の子が何人かいたが、下坂さんの事があり全て断っていた。
高校は進学校大竹高校を受験。雫も下坂さんも一緒に受験した。見事に三人合格して、また一緒にテニスをしながら三人で楽しめると思っていた矢先、父親から言われた言葉は、高校に入ったら部活は時間を取られない物にしろ。お前は国立トップの大学の医学部を狙えというものだった。
親が入ったからって子供に押し付ける事は無いだろうと反対しテニスも続けると父親に反発した。
もちろん下坂さんが高校でもテニスを続けるだろうという考えも有ったからだ。結局一年の間は続けてもいいが、二年以降学年順位五位以内に入っていなければテニスは止めるという約束をしてしまった。
当然そんな事簡単だと思っていたが…………。一学期の中間テストでは東条さん、早瀬さん、下坂さんという学年トップスリーに大きく水を開けられた。
幸い雫のお陰でこの三人と集中して勉強時間を取る事が出来て、俺の学年成績順位も順調に上がって行った。これならば二年になった時、五位以内を維持する事は出来るだろうと思っていた。
ところがイレギュラーな事が起きた。雫を慕った白百合綾香という軽音部の女の子の友人が同じテニス部に居てその子から白百合綾香を雫に会わせてくれと言われたのだ。
はっきりって自分でいえば良いと思ったが、普段は下坂さん、早瀬さん、東条さんにガードされて近づく事も出来ない。だから俺を利用して会わせたいと言って来たのだ。
同じテニス部で同学年の人からの依頼を無下に断る事も出来ずに、指定されたファミレスへ雫を連れて行ったが、予想通り告白に失敗。雫はその場をサッと出て行ってしまい、仕方なく俺はその後の白百合さんの慰め役になってしまった。
その後、彼女の方から一緒に遊びたい(デートしたい)と言って来たので、下坂さんを諦めていた事やこの子も結構スタイルが良く可愛い事もあり、これに乗ってしまった。
クリスマスも二十四日は雫達と過ごしたが二十五日は空いていたので彼女と二人でデート。その時告白された。まあ、優しくて素敵で一緒にいると心が落ち着くとか言われたら俺も断る理由が無かったのでそのまま付き合う事にした。
勉強も中の上位だと言って、テスト勉強を一緒にして欲しいと言われ、俺も一緒に居れるからと彼女の勉強を見てあげた。
基礎が全然出来ていないので相当基本から教えた結果、彼女は学年三十八位という成績を収めとても喜んでくれたかが肝心の俺は十二位という惨敗。雫は八位。
俺はその結果を見た時、雫が振った女の子の所為で順位が落ちた。あいつは親友という事はゆるぎないが、妙に腹立たしくなった。あいつが悪い訳じゃない事くらい俺だって分かっている。だが感情がそうじゃないと言っていた。
その上、その順位を知った父親が、一学年末テストで十二位とかありえない。まして二学期より下がっている。
約束通りテニスクラブは中止、二年生になったら成績順位を必ず五位以内にしろ。三年では成績トップを狙え。
塾も二年から始めるんだ。それでなければその大学の医学部は入れないと言って来た。
残念ながらまだ高校生の身だ。親には逆らえない。これも雫に対して頭にくる感情の元だった。
雫に関係ない事は分かっている。だが吐き出し口が無い。あいつなら受け止めてくれるはずだ。
俺が成績順位を元に戻したら改めて謝ればいい。この時はそう思っていた。
学校でも雫に冷たく当たった。雫は何が理由か全く分からない様だ。当たり前だ。雫には本来関係ない事で当たっているんだから。
二年の一学期中間までの辛抱だ。クラスは同じになる。必ず五位以内入って雫に謝る。
―――――
なるほど、まあねえ。でもなあって感じですね。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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