第62話 悩みの種


 はぁー、こんなにチョコもらうとはなー。


 去年までは若菜だけだったから良かったのに。そもそも静かな高校生活を送ろうと目立たなくしていたはずだったのだが。


何処で間違った?!


 悩んで解決できるなら良いんだが。来週は学年末テスト週間だ。なんかやる気ないな。そう言えば良太の奴、俺と同順位になった事に怒っていたような。どうしてだ?


 良太とは中学からの親友だ。三年間一緒にテニスをやり……俺は真面目で無かったが……同じ高校に入った。俺が学年九位なんて俺自身が驚いているが、それがどうかしたのだろうか?


 俺は別に国立大学行こうなんて思っていないし…………。でもあいつの親って医者だよな。って事はあいつは医学部に行くのか。まあ、勉強しないといけないだろうな。


 俺はどうするかな。爺ちゃんの仕事継ぐのって大変だし、サラリーマンなんてガラじゃないし。まあ、大学卒業までに考えればいいか。


 取敢えず、目先の学年末テストに手中するか。チョコの件はその後でいいや。




 学年末テストは月曜日から金曜日までの五日間。はっきり言って大変だった。流石に今回は全教科問題なしと言う訳にはいかなかったが、取敢えず終わった。


 結果はと言うと


一位 東条優里奈

二位 早瀬真理香

三位 下坂若菜

四位 琴平まどか


とここまでは、常連。ところが


八位 神城雫

十一位 川平良太


 何と良太が順位を落とした。いつもなら冗談の様に俺に声を掛けて来る良太が苦味虫を噛み潰した様な顔をしている。




川平良太視点


 くそっ、十一位だと。不味い。雫より後ろじゃねえか。それにこれでは親父からクラブ活動を中止させられてしまう。綾香のテストを見ていた所為か。あまりそれを理由にしたくない。


 白百合綾香とは、彼女が雫に振られた後、話をするようになっていつの間にか惚れてしまった。

 付き合う様になって、今回は勉強を見て欲しいと言う事で俺も一緒に居られるからと喜んでいたらこの様だ。


 綾香は二学期までは五十位以内にも入っていなかったが、今回は三十八位と上がった。彼氏としては嬉しいが、彼女を振った雫の後ろに俺が付く訳には行かない。父親への言い訳も考えないと。





学年年末テスト順位を見た後、俺は教室に入った。良太が頭を抱えている。どうしたんだ。

「良太、どうしたんだ頭でも痛いのか」

「雫か、どうもこうもねえよ。お前に抜かれちまったから頭が痛いんだよ」

「それどういう意味?」

「そのまんまの意味だ。どうしても俺は雫の前に居たかったんだ。それなのにくそっ!」

「…………」

俺、良太に何かしたっけ?



 仕方なく、俺は自分の席に着くと琴平さんが左手の人差し指を廊下に向けて、そのまま廊下に出ようとしている。仕方なく付いて廊下に出ると


「神城君、今の川平君には話しかけない方がいいわ」

「なんで?」

「ここだけの話だけど、川平君、白百合綾香さんと付き合っているのよ。それで彼女の勉強見てあげたんじゃないかな。

 白百合さんなんて二学期まで順位表にも乗ってこなかったのに今回は三十八位よ。だから自分の勉強時間が取られた。

 彼氏として、白百合さんを振った神城君には負けたくなかったのよ。まあ男の意地みたいなものね。

 でも順位が下がったのは彼自身の問題。神城君には関係いない事よ。むしろ神城君が順位上げた事が凄いのよ」


「…………」


 白百合綾香って、軽音部の……。あの後、良太に押し付けてファミレス出ちゃったけど、そういう事になっていたのか。参ったな。





 午前中の授業が終わり、昼食時間になると若菜、優里奈、真理香がやって来た。いつもの様にお弁当を一緒に食べる。


「雫さん、学年末テスト八位なんて凄いです」

「そうだよ雫。頑張ったね」

「雫良かった」


「いや、学年トップスリーに上目目線で言われてもな」

「何をいっているんですか雫さん。最初は三十八位位だったでしょう。素晴らしいですよ」

「雫。二年からは成績順でクラス分けになるから雫と一緒のクラスよ。先の話だけど雫は理系と文系どちらに進むの。

 三年になるとそれも加味してクラス分けされる。私雫と一緒にする」


「うーん、どっちでもいいよ。大学だって適当に行けばいいし」

「雫、二年の夏前には進路を決めないといけない。だからそれまでに決めて。それに塾の事も有る。学校の勉強だけでは絶対足りないよ」

「うーん、ううん、まあそうだね」


 下坂さん、雫さんリード凄い。確かに理系文系は決めないといけない。私は国立出来れば国立トップの大学に行きたい。

 早瀬産業の跡取りとして雫さんもあそこを出て貰う必要がある。ここは下坂さんの手に乗って。


「雫さん、私もそう思います。中途半端な大学より国立トップを目指しましょうよ」

「え、えーっ、い、いやいや俺はそこまでは」


不味い、早瀬さんはもっと先を考えている。ここは私も下坂さんの手に乗るか。


「雫、下坂さんや早瀬さんの言う通りよ。一緒に国立トップを目指しましょ」


 な、何を言っているのこの二人。まさか早瀬さんと東条さんが同じ考えを出してくるとは。それに国立トップを目指す為には、雫も私も相当頑張らないといけない。この二人は大丈夫なんだろうけど。不味い。


「早瀬さん、東条さん。何処の大学に行くかは雫が考える事です。無理強いするのは良くないですよ。雫、無理して国立トップを目指すより身の丈に合った大学一緒に行きましょう」


くっ、下坂さんそう来ましたか。ここは一歩引いて

「そうですね。まずは雫さんのお気持ちを優先しましょう」


早瀬さん、手のひら返して。ここで二人で頑張れば下坂さんは一歩下げられたのに

「そうね雫次第よね」


ふふっ、そうは簡単にこの二人の手に乗るものですか。


 何なんだ、この子達は。俺やっぱり大学進学止めよかな。


―――――


うーっ、恐ろしき。でも良太の件、雫に取って無視でき無さそう。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る