第60話 三学期です
今日は三学期の始業式。
家を出ると若菜も出て来た。
「おはよ雫」
「おはよ若菜」
「三学期が始まったね。三学期は忙しいね。直ぐに構内実力テスト、次がバレンタインデー、学年末試験が有ってホワイトデー。あっ、花音ちゃんの受験もある」
「ああ、テストばかりだな」
呆れた顔して俺の顔を見ている。
「どうした。若菜」
「雫、大切なことあるでしょう」
「うん、何?」
「ホワイトデーよ。どうせ早瀬さんや東条さんにも渡すでしょうけど」
「うーん、そういうの無しにしない?」
「駄目!」
朝から気が重い。
今日も変らず学校の有る駅で早瀬さんと東条さんが合流すると後ろで三人仲良く話し始めた。
俺は下駄箱で、家で洗って来た上履きを袋から出して履き替えて、そのまま教室に行って席に着くと早速
「おはよう雫」
「おはよう神城君」
「おはよ良太、琴平さん」
「雫、休みはどうだった。楽しかったか?」
「まあまあな」
「そうか、俺はまた三人の美女を侍らしてハーレムな正月でもしていたかと思ったが」
「良太、そんな訳ないだろう。静かに一人で宿題やってたよ」
なぜか、真理香と優里奈の視線が痛い。
「へーっ」
「良太はどうだった?」
「俺は、家族旅行だよ。毎年正月はハワイだ」
「くそっ、金持ちドラ息子!」
前の入口がガラガラと開いて願力先生が入って来た。
「皆さん、明けましておめどとうございます。一人の怪我も無く休みを過ごせたようで何よりです。これから校長先生のお話が有ります。全員体育館に行くように」
例によって始業式恒例の校長先生の長ーいお話を聞いてから教室に戻ると
「一限目、二限目はHRです。この時間を利用して席替えを行いましょう。この箱の中に席番号を書いた札が入っています。窓際一番前の席から取りに来るように」
いよいよ始まった。この環境が解放される日だ。俺は六番目。引くくじは多い分チャンスはある。
札を引いた琴平さんは複雑な表情をしている。まだ始まったばかりなのに。いよいよ俺の番だ。
窓際一番後ろでありますようにと祈りながら取った札は、…………窓際から二列目後ろから三番目だ。まあまあだな。
この後も、真理香、優里奈と引いて行く。まだ席番号は開けていないので分からない。
「皆引きましたか。では移動するように」
俺は良太に
「良太、俺が今日からここになる」
「えっ、そうか。俺は優里奈さんの席だ。また近いな嬉しいぜ」
「おう、宜しくな」
真理香は、窓側から三列目の一番後ろだ。まあ近い。優里奈は廊下側一列目の前から三番目随分離れた。大丈夫かな。俺がいないと結構コミュ障が出るから。
琴平さんはなんと窓際から三列目、俺の右隣りだ。徳山は廊下側一番列目の一番前。何と不運な。
「ようしみんな決まったな。それでは三時限目から普通授業だ。それまで自習しているように」
そう言うと教室を出て行ってしまった。
「神城君、今度は隣になったわね。宜しく」
「ああ琴平さん、宜しく」
ふふっ、早瀬さんも東条さんも神城君から離れたわ。これで普段の休み時間彼と自由に話せる。良かった。
不味い。雫がいないと。
「東条さん、宜しく」
「…………え、ええ」
誰か俺を思い切り見ている。優里奈か、話しかけられている。頑張れ優里奈。
雫さんと近いとは言え、今までの様にちょっと話しかけるという事が出来ない。琴平さんは隣。何とかしないと。昼食も今までのようにはいかないわ。
やがて午前中の授業も終わり、良太に声を掛けよとすると
「雫、お昼今日持って来ていない。学食行こう」
いきなり若菜が声を掛けて来た。優里奈と真理香も寄って来る。
「雫、私もそうしたい」
「雫さん、私もです」
「良太一緒に」
「い、いや俺は徳山といく」
あっという間に徳山と出て行ってしまった。
仕方なく、学食に行くと…………不味い、本当に不味い。学食内のほとんどの生徒がこちらを見ている。
「おい、見て見ろ。あれが有名な神城と美少女三人組だ」
「すげえな。俺もあんなの一度でいいからやってみてえ」
「東条さん綺麗だな」
「俺は早瀬さんだ」
「いや俺は下坂さんだよ」
「あれ一年だろう。ちょっと腕っぷしが強いからって。なんだあの野郎、かっこつけやがって。おい今度みんなで痛い思いさせようぜ」
「それは止めた方がいい。お前が百人いても敵わない」
「ほんとかよ!」
なんか凄い事言われている。おれ購買でパン買って教室に行こうかな。
「雫さん気にしないで食券買いましょう」
「雫、あんなの気にしないの」
若菜、真理香、優里奈はA定食ヘルシーな定食だ。俺はボリュームのあるB定食を買うと四人座りの席に着いた。
「やはり明日からまた持ち回りでお弁当にしましょう」
「早瀬さん、私もそう思う」
「私も」
「そう言えば昼食を一緒にしたいと言っていた琴平さんがいませんね」
「そうですね」
「まあ、都合の良い事です。気にしない事にしましょう」
なんか、この三人、纏まると強いな。
「そう言えば来週月曜と火曜は構内実力テストです。雫さん、一緒に勉強しましょう」
「「そうだよ雫」」
「いや、俺はいいよ。日にちも無いし、自分でやるよ」
不味いですわ。東条さんはともかく下坂さんはお隣。
不味い、下坂さんだけが雫を見るチャンスがある。
今回この二人は雫とは出来ない。私と二人だけ。ふふふっ。
「下坂さん、何か嬉しそうですが」
「いえ、気の所為でしょ」
「若菜、今回は俺一人でやるよ」
「えっ、何言っているの雫」
「「やっぱり!」」
結局テストまでの間が土日しかなかった事もあり、俺は一人で勉強した。この三人のお陰でやり方も分かっている。
結果は、
一位 東条優里奈
二位 早瀬真理香
三位 下坂若菜
四位 琴平まどか
そして
九位 神城雫
九位 川平良太
良太に並んだ。やったぜ。
「雫、追いつかれてしまったな」
「良太、たまたまだよ」
「たまたまでもだ!」
「良太」
マジに良太が不機嫌になっている。どうしたんだろう。たかだか構内実力テストなのに。
「雫、構内実力テストだからだよ。学期末テストなら川平君もああは言わないわ」
「そうなのか」
「雫さん、川平さんにも家の事情があるようです。ここはこのままの方が」
家の事情ってなんだ?確かにあいつの家は病院だし、両親とも頭は良いんだろうけど?
―――――
おや、思わぬところで不穏な空気が。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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