第56話 真理香のお誘い
雫は悩む。
クリスマスパーティの翌日、若菜と一緒に真理香と優里奈から貰ったプレゼントを見た。二人共それぞれのイニシャル入りのマフラーだった。添え書きに自分自身も同じ色のマフラーで俺のイニシャルを入れて有ると書いてあった。
それを見た若菜は大分不機嫌だったが、流石に捨てろとは言わなかった。ちなみに若菜も同じだった。何という偶然、この三人頭の中は同じ思考回路の様だ。
琴平さんは俺のイニシャル入りボールペン。添え書きに同じボールペンに自分のイニシャルを入れてあるので一緒の勉強時使って欲しいと書いてあった。
これにも若菜は不機嫌だった。まあ、仕方が無い。良太と徳山はハンカチとブックカバーだ。流石にイニシャルは入っていなかったが。
若菜は、午後から家に帰った。家族でクリスマスパーティをするのだろう。俺の家も同じだ。
さて俺は今大変悩んでいる。若菜の事、真理香に事、優里奈の事、琴平さんはまだ友達ポジションだ。
俺は三人と関係を持ってしまった。優里奈は中学からの流れで仕方ない所もある。
真理香は一度だけ。あれ以来それらしい誘いはしてこないので、あの時は何か意味があっての事と理解する事にした。
問題は若菜だ。一度目は本当に仕方ないと思った。あの時俺が拒否すれば真田と同じような事が起きるかも知れないと思ったからだ。
でもその後がいけなかった。俺自身の不甲斐無さで流されてしまった。その後の若菜の距離感は明らかに誰が見てもおかしいと思うだろう。
俺はまだ高一だ。誰と一緒になるなんて考えたくもない。本当はもっと遊びたい。三人共好きだけど、このままでいいんだろうか。
ベッドの上に寝ころびながら天井を見ているとスマホが震えた。真理香からだ。
「はい」
「雫さん。真理香です。今宜しいですか」
「いいよ」
「雫さん、明日か明後日お会い出来ませんか」
「別に用事入ってないからいいよ」
「では、明日ショッピングモールのある駅で午前十時でいかがでしょうか」
「分かった」
「では明日また」
そう言えば何の用なのかな?まあいいか。会えば分かるし。あっ、マフラーして行かないと。
翌日俺は朝九時には出た。真理香はいつも早めに来る。俺を待っている間に碌な事が起きない様にする為だ。三十分前にはついていたい。
改札を出ると流石に真理香はいなかった。良かった。十分程待つと彼女が改札から出て来た。白いコートに茶色のブーツを履いている。腰まである長い髪の毛はコートの外に出してある。大きく切れ長の目がスッキリと見える。いつ見ても可愛いそして綺麗だ。
「雫さん、待ちました」
「いや。それにまだ二十分前だから」
「あっ、マフラーしてくれているんですね。嬉しいです」
「うん、せっかくのプレゼントだし」
「ねえ雫さん、私映画見たいんですけどいいですか」
「良いけど…………」
珍しいな彼女が映画見たいなんて。でも前にも見たか。ショッピングモールの二階フロアの奥には有名な企業の映画館がある。
「何を見るんですか?」
「これ。いいですか?」
指差したのは有名若手俳優と女優の恋愛映画だ。断る理由もないのでOKした。
「朝一番の放映だから予約しなくても大丈夫だと思ったんですけ」
「人気あるんだな」
「そうですね」
館内に入ると男の人と女の人とのペアばかりだ。結構混んでいる。
最初は普通に男女のすれ違いが段々近づいてやがて濃い場面に入っていく。うん?
真理香が俺の手を握って来た。チラッと横目で見ると顔はスクリーンの方を向いている。
段々強く握って来た。これ握り返すのかな。どうしよう。まあ軽く握り返そう。
どうしましょう。映画の所為かしら。無意識に雫さんの手を掴んでしまった。でも握り返してくれない。
あっ、キスをしている。その場面で更に強く握ってしまった。えっ、少しだけど握り返してくれた。良かった。
やがて映画も終わり立とうとすると真理香が俺の方を向いてじっと見ている。だいぶ他の人も退場して来た。
「真理香、俺達も出ようか」
「はい」
残念そうな顔をして白いコートを手に掴んだ。
昼食を食べ終わった後、
「雫さん、もっと一緒に居たいのですが外は寒いです。私の家に来ませんか?」
「…………」
何となくあれが目的なのかな。…………あんまり考えても仕方ないか。
「良いよ」
目がパッと開いて嬉しそうな顔になった。
真理香の家の門の前には黒いスーツを着てサングラスを掛けた男がお辞儀をしている。
この前と同じだ。玄関に着くとお手伝いさんは出てこなかった。あの時だからからな。
「雫さん、私の部屋に行きましょう」
「うん」
部屋に入ると
「雫さん、お茶を入れて来ます。少しお待ちください」
「えっ、良いのに」
「そうはいきません。直ぐに戻ります」
ほんの五分位でトレイにティーポットとソーサーに乗ったティーカップを持って来た。
俺が、立ったままで待っていると
「立っていたんですか。ソファに座って下さればよかったのに」
「いや、何となくだ」
俺が座ると真理香が横に座った。二人の間は、五十センチ位は空いている。
「雫さん、さっどうぞ」
ティーカップから美味しそうな匂いがたっている。口に含むととても美味しかった。
うんっ?真理香が俺の顔をじっと見ている。
「雫さん」
十センチ近くなった。
「このパーティはとても楽しかったですね。お父様も素敵な友達だと喜んでおられました」
また十センチ近くなった。スッと顔を寄せて来る。
じっと見られている。どうするの?
「雫さん、好きです。愛してます」
また十センチ近くなった。ほとんど距離が無い。
「俺も真理香の事好きだよ。でも…………」
いきなり抱き着かれて唇を合されてしまった。
「むぅ、むう」
何とか離すと
「真理香好きだよ。でも会ったらいつもこんな事するのは…………」
「何故です。東条さんにも下坂さんにもしてますよね。私は魅力ない女ですか」
俺の手を取るといきなり真理香の胸に押し付けられた。グニュっと凹んでいる。
「あの二人と比べてもそんなに劣らないと思っています。月に一度でも良いんです。初めて雫さんに抱かれた時、とても幸せな気持ちになれたんです。お願いです」
真剣に俺の目を見て来る。やがてもう片方の手でブラウスのボタンを外してキャミソールも引き上げるとピンク色の可愛いブラが見えた。
そして、もう一度俺の唇を拭いできた。
雫さん…………。
私達は、その後ベッドに移動して優しくして貰った。ふふふっ、私の我がままで三回もしてしまいました。私ってやっぱりエッチなのかな。
私の隣で彼が可愛い寝顔で寝ています。優しく口付けをすると
「あっ、真理香」
「目が覚めました。ありが…………」
言葉が終わる前にもう一度されてしまいました。ふふふっ嬉しい。
「雫さん、シャワーを浴びますか?」
「うん、出来れば」
俺がシャワーを浴びてから出て来ると
「雫さん、もう帰られますか。もう少し居れませんか?」
「うん、俺もそうしたいけどもう午後五時だし帰るよ」
「分かりました。でももう少しだけ」
真理香が俺に抱き着いて来た。
「雫さんとこうして居ると心が落ち着くんです」
「…………」
結局俺が家に帰ったのは午後七時だった。食事を終わらせて風呂もしっかりと入ってゴロゴロしているとスマホが震えた。優里奈からだ。
「はい」
「雫、優里奈です。今いい?」
「いいよ」
「雫、明日か明後日会えない?」
「いいけど」
「じゃあ明日。ショッピングモールのある駅でいい?」
「分かった」
スマホを切ってから天井を見た。デジャブーか?
―――――
第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
ふむ。そういう事?
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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