第55話 クリスマスパーティ


 午後四時に始まる予定だった真理香の家のクリスマスパーティは少し遅れた午後四時半に始まった。


 遅れた理由は男だけでやった飾り付けがやっぱりちょっとという事で修正が入ったのが理由だ。

 だから午後三時に出来た時呼びに行ったのにと今更思っても仕方ない事だけど。


 来客用リビングには女の子達が作った料理がテーブルいっぱいに並んでいた。

若鳥丸焼き三羽。レモンやキャビア、シュリンプ、アンチョビが乗っているクラッカーが数えきれない位ある。


 ちなみにキャビアは、真理香のお父さんのプレゼントという事で喜んで頂いた。その他に野菜スティック、茹で小エビの盛り合わせ、切り分けたバケットやクリスマスデザインされたケーキ、オレンジ、グレープ、アップルなどの飲み物等が並んでいる。


「わーっ、凄いな。これ四人で作ったの?」

「雫さん、流石に私達だけでは手が足りなかったのでお手伝いさん達にも手伝って貰いました」

「それでも凄いよ」


 良太も徳山も早く食べたいモードがオーラになって出ている。それぞれ好きなジュースを氷の入ったグラスに注ぐと


「それでは」

「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」


良太がじっと若鳥を見ている。

「どうした良太」

「いや、美味しそうだけどこれどうやって切るの」

「ふふふっ、川平さん。心配しないで下さい。私が切り分けます」

「お願いします。早瀬さん」

「大丈夫ですよ。私も出来ます」

「私も」

結局男子だけが知らないだけだった。


 少しの間、男三人は大いに食欲を満たしつつ、女の子四人それなりのお澄ましでちょっと世間話をしつつ、食べていると多分お腹が膨らんだのか良太が俺に小声で

「雫、俺みんなにプレゼント持って来たんだけど、どうやって渡そうか」

「うーん、分からん」


俺の言葉に真理香が

「川平さん、聞こえていますよ。優しいですね。それではプレゼント交換の時間にしましょう」

と言うと優里奈が

「良いですね」


という事でプレゼント交換が始まった。最初は言い出しっぺの良太が


「あの、これ使ってくれると嬉しい」

と言ってリボンで可愛くラッピングされた小箱を他の人に渡した。


次に徳山が同じように六人に渡すと俺は


「これ若菜と俺から」

と言うと何故か真理香と優里奈が少し不機嫌な顔になった。若菜は平然としている。


まさか、下坂さん地の利を生かして雫さんと一緒に買うとは。真理香曰く

下坂さんにやられたわ。雫としっかり買い物デートしていたのね。優里奈曰く

全く、下坂さんは。琴平さん曰く


俺は、見て見ぬ振りをしつつ五人に渡す。

「あれ、雫さんと下坂さんの分は」

「いや贈る側が自分で買ったものを自分で貰うのもおかしいから私達以外の人だけに買いました」

「「…………」」


何故か真理香と優里奈が複雑は表情をしている。やっぱり不味かったかな。別々にすればよかったか。


「それでは、私が」

空気を和ませようと琴平さんが声を出した。


琴平さんナイスです。


それから優里奈、真理香の順で皆にプレゼントが行き渡ると真理香が

「数が多いのでご自宅で開けて下さい」

ここで開けられたら不味いですからね。


真理香と優里奈から俺に貰ったプレゼントの箱が他の人より大きいような気がするが気の所為かな。


 そして恒例のゲームが始まった。当然勝った人が負けた人に好きな事をお願いできるという罰ゲーム付。


 人数が多いので簡単にババ抜き、七並べ等カードゲームなった。

一回目ババ抜き

「はーい、一番抜けた」琴平さんが声を出して宣言。


そして最後に残った人は俺だった。やっぱりな。こういうの苦手。


「では、神城君この中で一番好きな人は?」

「はっ?!それ聞く?」

「うん」


なんだあのどや顔は。楽しいんでいるな。


ふふふっ、神城君どうするの?


雫私だよね。

雫さん。私ですよね。

雫。私を選んで。


「えーっと、良太」

「「「「えーっ」」」」


「だって、良太親友だし。俺が一番好きな男友達だから」

「ぶっぶーっ。もう神城君ったら」

「えっ、だって答えの選択権俺だし」


はーっ、その答えが有ったか。神城君がこの三人の誰かを選んだ時、絶対混乱するからそのチャンスをものにしようと思ったのに。もう。


「仕方ないですわね、雫さんの言う通りです」

「そうね。雫の言う通ね」

「私もそう思う」


うっ、こんな時はこの三人結託するのか。


二回目のババ抜きでは徳山が最後になった。一番は早瀬さん。

「徳山さん、三学期の目標を教えてください」

「うーんと。彼女を見つける事です」

「「えーっ」」

俺と良太が驚いた。良太が、


「えっ、徳山モテるんじゃないの?」

「いや、夏休み位まで好きな人がいたんだが、全然歯が立たなくてさ。というかその人好きな人がいるのが分かったから」

「ふーん。ちなみに誰?」

「いや、川平普通ここで聞かないだろう」

「でも気になる。同じ学年?」


徳山が首を横に振って

「二年生」

「「「「「え、えーっ!」」」」」

全員が驚いた。


「そうか、大変だったな」

「いや、まあ仕方ない。その人神城が好きみたいだから」

爆弾発言だ。


「「「「えーっ!」」」」

「ちょ、ちょっと徳山、最後の一言要らなかったのに」

「いや、言っておきたくてさ。俺の好きだった人を取られたんだから」

「でも、告白したの」

「いや、声も掛けてない」

六人全員で滑った。


その後七並べに変え二回行ったが混乱を招く質問が多かったので終了。でもあっという間に六時半になってしまった。


「皆さん、もう六時半です。お開きにしましょう」

「早瀬さん、じゃあ片付けましょう」

「ありがとうございます。取敢えずキッチンに運んで小皿やグラスだけ片付けましょうか。大皿などは食洗器で洗浄できますから」


片づけは重い物は男達がやって、軽い物は女子が片付けて終わった。

そしてそれぞれに早瀬さんにお礼を言うと俺、良太、徳山、若菜、優里奈、琴平さんは駅に向かった。




私は皆さんを門の所まで送った後、家族用のリビングに足を運んだ。


「お父様、今日は友達の為にリビングとキッチンを使わせて頂きありがとうございました」

「気にする必要はない。皆良い友達のようだ」

「はい、毎日が楽しいです」

「そうか、神城君とはどうなっている。彼の周りには中々の器量よし、性格よし、料理も出来る女の子が三人もいるではないか。大丈夫か?」

「はい、最後には必ず私が彼の側に居ます」

「そうか、期待しているぞ」


 自分の部屋に戻った私は、お父様にああは言ったけどというのが本音だった。琴平さんが入って来た。それに最近下坂さんと雫さんの距離が近いような気がする。冬休みの間にもう一度…………。何とかしないと。




真理香の家の最寄りの駅に着いた俺達は、俺と若菜、琴平さんが同じ方向、良太と優里奈が反対方向という事で別れた。


同じ駅で降りて琴平さんと別れる十字路まで来ると

「神城さん、下坂さん今日は楽しかったです。ありがとうございました。それではまた」

「琴平さん、俺も楽しかった。気を付けてね」

「琴平さん。さよなら。また学校で」


琴平さんと別れて少し経つと若菜が手を繋いできた。

「ねえ、他の人のプレゼント一緒に見ようか」

「良いけど、今日はもう午後七時を過ぎているし、明日にしようよ」

「じゃあ、明日で良いよ。朝十時頃行くね」

「そうだ若菜。明日花音のプレゼント買ってあげたいから付き合って」

「ふふっ、もちろん」

「じゃあね」

いきなり俺の頬にキスをして自分の家に入って行った。



「ただいま」


玄関に入ると廊下をパタパタ足音立てて妹が来た。


じーっ!


「ぶっ、ぶーっ、お兄ちゃん、鏡見てからダイニングに来てね」


なんだ、あいつ。部屋に戻って部屋着に着替えた後、手洗いを兼ねて洗面所に行くと

「あーっ、若菜の奴」


頬にしっかりと口紅が付いていた。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


若菜、優里奈、琴平さんからのプレゼント。何が入っているんでしょうね。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

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