第54話 クリスマスイブは皆で


 冬休み二日目。何故か都合よくクリスマスイブだ。

あの三人いや四人が一緒に行うというのはちょっと予想外だったな。まあ良太と徳山が来るというのは解かる様な気もするが。


 徳山は結構イケメンなんだから、付き合っている子とかいないのかな。いればこれに参加しないか。


 そう言えば、終業式の日に告白された子どうしたのかな。あの後、良太に押し付けたから今日礼を言っておこう。


 今日は午前九時半には起きて朝食を取った後、自分の部屋で特に何をする訳でもなくベッドの上でゴロゴロしている。何気なく机の上の時計を見ると午前十一時少し前だ。そろそろあいつが来る頃だな。


タンタンタン。ガチャ。


「雫、おはよ」

「若菜か、おはよ」

いきなりベッドの横に座って俺に被さって来た。


「ちょ、ちょっと」

「いいじゃない。雫が横になっているんだから。ねえ、ちょっと早めに出て皆へのプレゼント買わない」

「プレゼント?何買って良いか分からないよ」

「二人で考えようよ」

「……若菜に任せた」

「もう」



二人で昼食を外で食べる事にして、午前十一時半には家をでた。


 しかし昨日の件もあるのか、若菜からの距離感が凄く近い。手を握って来るのは構わないけど恋人つなぎとかというのは、どうなんだろう?


「若菜、手を繋ぐのは二人だけの時だけだよ」

「分かっている。でも今は二人だけでしょ」

そう言いながらも若菜は周りをクルクルと見ると

「えへへ。大丈夫。知っている人いないから」


 ニコニコしている。若菜が嬉しいならそれでいい。俺達は四つ先の駅にあるショッピングモールで昼食済ませた後、五人へのプレゼント買おうとしたが、


「なあ若菜、プレゼントっていくつ買うの?」

「一人に一つだよ。早瀬さん、東条さんと琴平さん、それに川平君と徳山君」

「いや聞いているのは、若菜の分と俺の分を分けるのかっていう事」

「それはいいんじゃない。二人で一つにしよう。でも雫、私のは買ってね。私はもう買ってあるんだ雫の分」

「えっ、そうなんだ」

不味い、俺何も用意していない。若菜って何が欲しいんだろ。分からん?


「若菜、俺こういうの難しいから、お店で若菜が欲しい物選んで」

「うん、分かった。じゃあ婚約指輪」

「へっ、い、いやそれは流石に」

「今、好きな物ッて言ったじゃない。嘘なの」

「若菜、俺まだ高校一年だよ。いくら何でも」

「雫、婚約は年齢に関係ないよ。それに私もう十六。結婚出来るよ……。ふふふ、冗談よ。でも指輪が良いな。安くてもいい。買って」

「…………。分かった」

いいんだろうか?それに学校に着けて行けないよね。


「なあ、指輪って学校には着けて行けないだろう」

「もちろん。だから学校以外で着けるわ」

それならいいか。


 結局、俺の月小遣いの半分が飛んでしまった。皆には、ハンカチにした。持っていても困らないだろう。


 午後二時に若菜の家のある最寄りの駅に着くと皆が待っていた。まだ十分前なのに。皆結構色々持っている。

 それにしても目立つな。あの五人。周りの人があの子達を見ながら歩いている。


「あっ来た。雫、下坂さん」


「こんにちわ、皆さん」

「皆待った?」


「雫さん、まだ十分前です。問題ないですよ。早速買い物に行きましょう。取敢えずこんなメニューを考えたんですがいかかでしょうか」

真理香がメモを皆に配っている。


「わっ凄い。若鳥のホール三羽って、早瀬さんこれって結構な設備いるよね」

「琴平さん、大丈夫です。我が家のキッチンを使えば同時に出来ます」


流石早瀬さんだわ。我が家も出来ない事は無いけど。優里奈曰く

うちじゃとても出来ないわ。若菜曰く

男三人は、メニューを渡されても作り方がそもそも分かっていない。


「では行きましょうか」


 皆で食べ物や簡単な飾りつけを買って早瀬さんの家に行くと案の定、俺と東条さん以外が驚いている。右と左に高さ二メートル、長さ百メートルはあるだろう塀が延びている。


 玄関というより門の前には大きな車止めがあり、門から玄関までは軽く十メートルはある。門には黒服でサングラスをした男が一人お辞儀して待っていた。


 俺も始めて来た時は驚いたが、二回目でもやっぱり真理香の家は大きいなと思う。爺ちゃんや東条さんの所は道場や宿泊施設が有るから大きいけどここは住居だけだからね。


「さっ、皆さん、遠慮しないで入って下さい」

「「「「…………」」」」


 若菜、琴平さん、良太と徳山が目を丸くしながら門をくぐった。更に手入れの行き届いている庭を通り玄関に行くとお手伝いさんが三人お辞儀をして待っていた。


「「「お嬢様、お帰りなさいませ」」」

「ただいま、少しキッチンとリビングを一つ使います」

「ご主人様から伺っております」


ここでも四人は

「「「「…………」」」」


一度キッチンに行き、真理香が設備を説明している。入り口には先程のお手伝いさんが立っていた。


「何か分からない時、私が手を離せない時は、そこの者達に声を掛けて下さい」

「何なりとお申し付けください」

お手伝いの一番偉そうな人が声を掛けて来た。


「後、今日使うリビングをご案内します」


 連れて行かれたのは、この前俺と真理香が使っていたリビングではない。来客用だろうタペストリが飾られテーブルが置いてあった。


「雫さん達は、こちらで飾りつけをして下さい。簡単なのでお任せします。では私達はキッチンで料理を始めましょう」


俺と良太そして徳山も無言で頷いた。女の子達がいなくなると


「雫、早瀬さんがお金持ちとは聞いていたが、俺の想像を超えている。凄いお金持ちのお嬢さんだな」

「神城、俺も驚いた。早瀬さんが家を使わしてくれるって言うから、普通の家を想像してたんだけど、桁違いだった」

「うーん、まあこんなもんじゃない」

「「えーっ!」」


「雫、お前来たことあんの」

「一回だけだけど」

「「えーっ!」」


「それより早く飾りつけしようぜ。俺こういうの苦手。良太知っている」

「あんまり、徳山詳しそう」

「知らなくはないけど。まあ始めようか」



俺達は何とか雰囲気を作ったが、一時間位掛かってしまった。


「なんとか終わったな。これで良いかな」

「分からん、雫誰か呼んできて」

「いや俺に言われても」

「そうだよ神城。どう見てもお前が適任だ」


俺は、キッチンに行くと仲良く四人で料理を分担して作っていた。皆女子力高いな。


「あっ、雫さんどうかいたしました」

「いや、飾り付けが出来たので、あんなんでいいか見てほしくて」

「お任せしていますから、どんなんでも良いですよ。ねえ皆さん」

「そうだよ、雫」

「雫私もそう思う」

「神城さん、いいんじゃない」


「そ、そうか。じゃあ」

参った。四人が同じ考えとは。


 ふふっ、ここで誰か一人抜ければ、その人は短くても雫さんと二人の時間を作れる。ここは、全員を動かせない様にした方がいいわ。


 早瀬さん、考え有っての事ね。流石だわ。若菜曰く

 早瀬さん、流石ね。ちょっと二人になりたかったけど。優里奈曰く

 早瀬さん、東条さんと下坂さんにスキを与えないのね。この三人に割り込むには私も頭使わないと。琴平さん曰く


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


女の子達のクリスマスイブバトルはこれからですね。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

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