第52話 学校は終業式なんだけど
真田は次の日から学校に来なくなった。理由は何となく分かるが、あまり関わりたくない。
若菜は次の日からは、まるで何も無かった様にというか前より距離感が近くなった感じがする。駅までだけど。
いつまで琴平さんは、僕達の後ろを着いてくるのだろう。でも声を掛けたりしたら若菜が不機嫌になりそうだし、今はこのままにしていよ。
「雫、もうすぐ冬休みだね。クリスマスにお正月初詣。ねえ二人で過ごそう」
「いいけど、若菜の家族の都合もあるだろう」
「うん、もちろん。でも二人で居れる時間も一杯有るよ」
「そうだな」
あれから三週間が過ぎた。雫とは、あれきりだけど、これからの雫は誘えばしてくれる。そんな感じがする。
だからもう焦らなくていい。冬休みの間にもう一度くらいしたいな。クリスマスイブなんか素敵だけど。
でも早瀬さんと東条さんが雫に何もしないで冬休みを過ごすとは思えない。何とか防がないと。
学校のある駅で早瀬さんと東条さんと合流するといつもの様に学校に向かった。周りの生徒も私達の事は見慣れたみたいで前程私達を見なくなった。
教室に入っていつもの様に良太と話した後、予鈴が鳴って少しして西泉願力先生が入って来た。
「皆さんおはようございます。これから体育館で校長先生からのお話があります。全員行くように」
それだけ言うと出て行ってしまった。
校長先生の話は今日も長かったけどそれを聞いた後、教室にみんなで戻って来た。
そう今日は終業式。明日から冬休みだ。
いきなり良太が俺の方を向いて
「雫、今日空いているか」
「ああ、特に予定無いけど」
「そうか、じゃあちょっと付き合ってくれないか」
「いいけど、何の用事だ」
「後でな」
成績表も貰い、帰り支度をしていると若菜が教室に入って来た。
「雫帰ろ」
「若菜、帰りは良太と一緒なんだ」
「えっ、何それ。川平君、雫に何の用事?」
「あっ、ちょっとな。雫と俺の事なんだ。だから今日は二人だけにしてくれ」
「…………」
若菜、真理香、優里奈の三人は、そのまま帰って貰った。
「良太、俺に用事ってなんだ」
「雫、悪いな、ファミレスに付き合ってくれ」
「お前とか?」
「良いじゃないか」
理由も分からないまま、学校の近くのファミレス行くと一人の女の子が座っていた。
「あっ、神城さん」
俺はその子を見た後、良太に
「なあ、これどういう事?」
「雫悪い。話を聞いてあげてくれないか」
「…………」
仕方なく座って飲み物だけ頼むと
「あの、あの私……白百合綾香です。文化祭の時、助けてくれた」
「……ああ、あの時の子か。それで俺に何の用事?」
「あの、あの……あの後、ずっと神城さんの事が気になって。お話したいなと思ってクラスにも行ったんですけど。全然会えそうになくて。それで川平さんに頼んで」
「良太、どういう事?」
「白百合さんの友達が俺と同じテニス部で、その子から白百合さんを紹介されて、話を聞いたら今日の事だったと言う訳だ。同じクラブの同学年の子から頼まれたんで無下にもできないから雫に声を掛けた」
「そういう事か。それで白百合さんは俺に何の用?」
「…………。あのお友達からで良いのでお付き合いして下さい」
「はっ?!」
「…………」
「俺、君の事全然知らないし」
「これから知って貰えれば」
「ごめん、俺白百合さんと付き合えない。理由は好きな人がいるから」
間違っていないよな俺。うん。
「そ、そうですか」
下を向いてしまった。
「良太、後頼む」
「ああ」
参ったな。ああいうの苦手。でも好きな人って。みんな好きなんだけど……。困ったなあ。
まだ時間あるし、寄り道して行くかな。取敢えずどこ行こう。問題集買って帰ろ。この前買えずじまいだったし。
その足で、近くの本屋に行くと、あれっ、琴平さんだ。まあいいか。
この前の期末で一番点の取れなかった数学と英語の問題集を選んでいると
「神城君」
「あっ、琴平さん」
「何選んでいるの?」
「うん、この前の期末テストで点の悪かった数学と英語の問題集。冬休みの間にやっておこうと思って」
「そうなんだ。一緒に選んであげようか」
「えっいいの?」
「うん、テストで駄目だったところはどの辺?」
ふふっ、まさか神城君が一人で問題集を買いに来るとは。確かに今日は川平君と用事があるからってあの三人とは帰らなかったみたいだけど。チャンスね。
私は、彼から点が上手く取れなかった辺りの問題が多い奴を選ぶと
「ねえ、神城君。私と一緒に勉強しようか。私もその辺苦手だし」
「えっ、でも琴平さんって学年四位だよね」
「四位じゃ駄目、あの三人の上に行きたいから」
「そ、そうなんだ」
それからちょっと喫茶店に入って神城君とお話が出来た。クリスマスを二人で過ごすのは流石に断られたけど、冬休み中に問題集で分からない所をビデオチャットで一緒にやれる約束が出来た。これでいい。絶対あの三人には負けない。
私と神城君が家の有る駅を降りると大分暗かった。
「ねえ、家まで送ってくれない。暗いし寒いし」
「……いいよ」
仕方ないかな。いつもはまっすぐ行く四つ角を右に曲がって十分程して琴平さんの家は有った。
「ちょっと、上がって行く」
「いや、流石に止めておく」
「そっか、そうだよね。送ってくれてありがとう。問題集一緒にやろうね」
「ああ」
俺は、午後六時ちょっと前に家に帰って来た。
「ただいま」
パタパタパタと花音が廊下を走って来た。
「お兄ちゃん、遅かったね。今日は午前中で終わりだったはずでしょ」
「うん、色々用事が有ってな」
「用事?そうなの」
「何で疑うんだ」
「別にー」
また俺に抱き着いて来た。クンクンと犬の様に匂いを嗅ぐと
「ふふふっ、そうか用事か。仕方ないな」
何故か嬉しそうな顔をしてリビングに戻ってしまった。分からん?
部屋に戻って部屋着に着替えると鞄からスマホを取り出した。えっ、若菜から一杯チャットメールが来ている。
『いつ家に戻るの?』
『いつ帰るの?』
『どこいるの。もう四時だよ』
『もう五時だよ』
あちゃ、スマホをサイレントモードにして鞄に入れて有ったから気が付かなかったんだ。仕方ないと若菜のアドレスを直接タップした。
直ぐに出た。
『若菜』
『雫遅いよ。何処に行っていたの。川平君は午後三時には分かれたといっていたし』
『うん、ちょっと本屋によって問題集買った後、面白そうな本が有ったんで立ち読みっしてた』
『ふーん、そうか。って問題集って何?』
『数学と英語』
『じゃあ、一緒に勉強しよ』
『えっ!』
『何が、えっなの。何か不味い事でもあるの?』
『いや、ちょっと。一人で頑張ってみようと思って』
『そうなの?分かった。でも分からない所有ったらすぐに言ってね』
『うん』
『あと、雫明日用事入っている?』
『特には入っていない』
『じゃあ、二人で宿題一緒にやろうか。明後日クリスマスイブだし』
『そうだな。いいよ』
『じゃあ、十時位に行くね』
『うん』
雫、何かちょっと変だったけど明日会えるから良いか。二人だもんね。
若菜には悪いけど、あそこで琴平さんの事だしたらまた揉めるし。
―――――
第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
雫の心の優しさが、自分でトラブル呼び込んでいますね。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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