第51話 期末テストのその後で
期末テストは、勉強会の終わった翌週月曜と火曜に行われ、週末には廊下に上位五十人の成績順位が発表された。
一位 東条優里奈 四百九十六点
二位 早瀬真理香 四百九十二点
三位 下坂若菜 四百八十八点
四位 琴平まどか 四百八十二点
・
九位 川平良太 四百七十五点
十位 神城雫 四百七十四点
予想通りの順位だが、俺が良太と一点差と言う事で俺自身が驚いた。
「雫すげえな。三学期末テスト頑張らないと本当に抜かれるな」
「ああ、俺も驚いている。あの子達のお陰だ」
「ところで最近下坂さんの姿見ないけどどうしたの?」
「うーん。俺も分からないんだ」
若菜との勉強会の後、月曜も火曜も朝一緒に登校していない。真理香も優里奈も気にしていたが、詮索する気はない様だ。
昼食にも来なくなった。教室を覗くとクラスの女の子達と食べている。何となく心の中がしっくりこなかった。
次の週の帰りに学校を出るのが少し遅くなって優里奈と一緒に帰っていると
「雫、あれ」
「えっ?あっ!」
若菜が知らない男の子と歩いていた。
「下坂さんと同じクラスの真田和正君。珍しいわね彼女が雫以外の子と下校するなんて」
「そうか、何か用事があるんじゃないのか」
真田君は前から下坂さんに好意を寄せていた。どんな理由で雫から離れ真田君と一緒に居るのか分からないけど、私にとっては都合の良い事。でも雫は何も気付いていない。
「雫、気にならないの」
「俺が若菜に他の男の子と一緒に居る事を何言える立場でもないし」
「……雫がそう思うなら良いけど」
その週末、俺がコンビニに行こうと思ったら若菜が可愛い恰好して家から出て来た。
「若菜」
「なあに、なんか用事」
「いや、どこか行くのかなと思って」
「雫には関係ないでしょ」
若菜はそれだけ言うと駅の方に歩いて行ってしまった。
そうだよな。あの時だって。俺が若菜を突き放したんだから。他の男の子を好きになっても仕方ないか。
若菜視点
雫は結局あの二人のどちらかを選ぶんだろうな。私を守るって言っているけど、幼馴染のままでずっといる気なんだ。二人にはしてあげているのに私にはしてくれない。
結局、雫とは何も進展ないままに過ごすなら私だって…………。
駅で真田君と待合わせ。その後は彼に任せてある。
男の子とデートなんて初めてだし。いつも雫が…………。いいや今日は真田君に。彼は私が好きだって言ってくれたし。
駅前で真田君が待っている。あっ、私に気付いてくれた。
「真田君、待った?」
「ううん、今来た所」
「そっか、今日はどうするの?」
「うん、ここから四駅乗るけどそこでお昼食べて映画でも見ようかなと思って」
「うん」
まあ想像通り。真田君、雫程がっちりしていなけど、ちょっとイケメンだし。身長は雫よりないけど。太っても痩せてもいないしいいかな。
彼と四駅先まで行った。普段からクラスメイト程度しか知らなかったので、色々話した。お昼も食べて映画も見た。その後お話して別れた。でもその時
「下坂さん、明日も会いたいです」
「明日も………いいですよ」
ふふっ、そんなに毎日私と会いたいんだ。いままで雫を追いかけてばかりだったから嬉しいな。
今日も、真田君と会う。ちょっと気分が高揚して家を出ると、同時に雫が出て来た。
「若菜、今日も出かけるのか?」
「私が出かけてはいけないの?」
「いや、今日参考書買いに行こうと思って。若菜に一緒に来て欲しかったんだけど」
「そんなの早瀬さんか東条さん誘えばいいじゃない。雫は、私なんか相手にしてくれないんでしょ」
「えっ、何言っているの?」
「言葉そのままよ。雫は早瀬さんか東条さんを選ぶんでしょ。私はただの幼馴染なんでしょ。私もう行くわ」
「ちょ、ちょっと待てよ若菜」
「何よ」
「誰と会うの?」
「気になるの。雫、なんで私と会う人が気になるの」
「だって…………」
「はっきり言えないじゃない。時間無いから行くわ」
「えっ!」
気になるなら止めてよ。なんで止めてくれないの。まだ間に合うよ雫。結局駅まで来てしまった。真田君が待っている。
雫視点
俺は、最近若菜が俺を遠ざけている事が気になっていた。あの勉強会以来ずっと避けている。
流石に気になって参考書を買いに行くのを口実に若菜と話してみようと思っていた。でも出かけてしまった。仕方ないのかな。
お昼を一人で食べた後、家にいるのもつまらないので本当に参考書を買いに行く事にした。
四駅先の街のデパートに入っている本屋で色々売っている。駅を降りてデパートに向っていると、あれっ若菜と真田?なんか楽しそうだな。
つい二人の後を遠巻きについて行ってしまう。俺何しているんだろう?
あっ、急に止まった。真田が何か一所懸命若菜に話している。若菜は下を向いている。何話しているのかな?
あっ、強引に若菜の手を取って引っ張っていく。ちょっと何しているんだ。
仕方なく付いて行くと、えっ、この辺って。
真田が手を引いて若菜をホテルに連れ込もうとしている。若菜は動かない。俺見ているだけなのか。
また真田が強引に手を引いて若菜が入りそう。あっ、若菜が真田の手を離そうと必死になっている。これは同意していないって事だよね。うん。直ぐに駆け出した。
「若菜!」
「あっ、雫」
「若菜何しているの?」
「神城か、見ての通りだよ。下坂さんは俺と一緒にここに入るのさ」
「違う、入りたくない」
「でもさっき良いって言ったじゃないか」
「言ってない。言ってない」
「真田、若菜が嫌がっている。手を離せ」
「ふん、お前は強いらしいからな。でもこれはどうだ」
いきなり真田が何か投げて来た。さっと避けると後ろでガラス瓶が割れる音がした。同時に俺に殴りかかって来た。
「ぐぇ!」
俺は真田が殴りかかる前に足を払った。頭を道路にぶつけたらしい。
「真田大丈夫か?」
「くそっ!」
そのまま逃げて行ってしまった。
後ろを見ると割れた瓶から何か白い粉みたいなものが散っていた。
「雫。…………」
「若菜、だめじゃないか。こんなことして」
いきなり若菜が俺の胸を拳で叩いて来た。
「こんな事って雫が言えるの。私を守ってくれるって言ったよね。だったら私の大切な物雫が貰ってよ。そしたら私を守る事になるでしょ」
下瞼に涙を溜めながら俺の胸に抱き着いて来た。
ちょっとそのままにしてあげた後、俺は若菜の両肩を優しく掴んで体から離すと
「若菜、分かったよ。でもちょっと待って」
俺は割れた瓶から飛び散った白い粉を見て間違いないと思うと、爺ちゃんのこの街にある会社に電話して採取しに来て貰った。警察も一緒だ。
結局、若菜と俺も警察に行く事になったが、若菜が理由を説明し、その粉の持ち主も教えた。少し説教されたが仕方なかった。
解放されたのは、午後四時。二時間近く警察に居た事になる。帰り道
「雫、さっき言った事覚えているよね」
「えっ、なんか言ったっけ?」
「雫、もしここであなたが私を無視するなら、本当に他の人にあげちゃうよ。好きでもない人に。私の大切な物を雫が貰ってくれることで、私を守ってくれるんだよね!」
「若菜…………」
……………………。
二人で帰る途中、ずっと若菜は俺の腕にくっ付いて来ていた。ちょっと歩きずらそうだったけど。でもとても嬉しそうな顔をしている。
参考書買えなかったし、家に帰るのが午後七時になってしまった。家に帰ったら何故か花音が不機嫌だったけど。
私は家に帰ってから直ぐに自分の部屋に行った。胸が嬉しくていっぱいだった。
これであの二人とはイーブン。いや私が一歩リード。これで幼馴染兼彼女と思っていいよね雫。
―――――
第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
ほう!
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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