第49話 もうすぐ期末テスト
私、琴平まどかの二年A組のカラオケ作戦は上手行った…………はずだった。
ところが、ところがクラスのほぼ全員が参加する事になり、カラオケ店長はニコニコだったが、十人部屋を四つ取って貰う事になり…………。
神城君と二人きりの雰囲気を作ろうとあの二人もばらばら別室にしたはずだったのが…………三十分もしない内にメンバシャッフルとか言って彼の所に来てしまった。
今、彼の右には早瀬さん左には東条さん、そして前に私という席順でいる。何故か川平君は別室でクラスの子に捕まっている様だ。
テニス部で一年からレギュラー、背が高く、成績優秀でイケメンときたら女の子は離す理由がない。徳山君も同じく捕まっている様だ。
結局そのまま一時間半が過ぎ、彼とぐっと親しくなってデートの約束を取り付けようとした私の作戦は失敗した。
しかし、まだチャンスはある。彼の成績順位は中間テスト十二位。私は四位。なんとか二人だけのテスト勉強会に持ち込めば予想以上の成果が有るかもしれない。
神城君の登校ルートは、私の家のある通りから少し歩いて通りのぶつかる十字路を通る。彼と下坂さんがそこを通る時間は、把握している。
今日も私の五メートル前を二人で仲良く歩いている。これをストーカーと呼ぼうが何と言われようが、私の登校ルートが同じだけという理屈を頭の中に埋め込んでいる。
「雫、後二週間で期末テストだね。また勉強会しよう」
「いいよ」
「ねえ、二人で出来る日作ろうよ」
「いいけど、真理香と優里奈が何と言うか」
「分からない様にすればいいじゃない」
「でもどうやって」
雫の頭の中は私を含めた三人で一パックにされているようだ。この前私の知らない間にAクラスでカラオケ大会が開かれたと聞いた時は頭に来たけど、結果として何も無かった様なので良かった。問題はそれを企画した子が琴平まどかという事。
彼女を雫に近寄らせる訳には行かない。川平君を利用しようと思ったが、彼が全く琴平さんに興味ない事が分かったからやめる事にした。あんなに可愛いんだからくっ付けばいいのに。
「若菜何考えているの。もうすぐ駅だよ」
「あっ、ううん何にも」
学校のある駅に着いた。彼の後ろには下坂さん、早瀬さん、東条さんが歩いている。あの三人は恋敵のはずなのになぜか仲が良く見える。楽しそうに話している。理由は分からないけど。
せめてあの中に入れれば。
今日もあっという間に午前中の授業が終わり、昼食も取って優里奈と水やりの時間だ。
「雫、もうすぐ期末テストね」
「そうだな」
「ねえ、二人だけで勉強会しよう」
「でも…………」
「あの二人に分からない様にすればいいでしょう?」
なんか若菜と同じ事言っている。
「どうやってするの?」
「雫が、私達の前で、一人で勉強するからいいって言うか、図書室だけみんなでして、家では自分でするとか言えば、私と出来る時間が作れる」
「…………」
考えるものだな。でもなあ。
「それバレた時の俺の心の被害はどうなるの。若菜と真理香から相当言われそうなんだけど」
「うーん、その時は私だけの彼になればいいじゃない」
なるほどそれが目的かも。という事は若菜も同じ考え?
「それは…………」
水やりが終わった。ホースリールを巻いてジョーロと一緒に小屋に入れて終りだ。
「優里奈俺が片付けておくから先戻っていいよ」
「ありがとう」
ガチャ。
「えっ?!」
優里奈が近づいて来て俺に抱き着いた。
「ねえ、お父様と会って貰った時してない。そろそろ駄目かな」
「……分かった」
優里奈が俺の胸に顔を付けて
「ふふっ、ありがとう。嬉しいわ。雫とすると心が落ち着くの。じゃあ後で連絡する」
チャイムが鳴ったので急いで教室に戻ると真理香が
「雫さん、少し長くありませんでした?」
「そうかな。草も生えていたし、枯れた花も有ったので時間かかったんだ」
「そうなの?」
琴平さんも俺を疑いの目で見ている。ちょうど5限目の先生が入って来た。良かった。
放課後、今日も若菜が迎えに来た。
「雫帰ろ」
「下坂さん。お話が。東条さんも」
「「なに?」」
「もうすぐ期末テストです。今回も雫さんと私達三人で勉強会をしようと思います」
何故か若菜と優里奈が俺の顔を見た。
「ふふっ、やはりそうでしたか」
「どう言う意味?」
「下坂さん、東条さん。雫さんと二人で勉強会しようと考えていませんでした?」
「「ソンナコトナイヨ」」
「なぜ二人で棒読みになるのです。まあいいです。そこで考えたのですが、来週から一週間図書室では皆でやって、金、土、日だけ私達が一人ずつ雫さんと勉強会開くというのはいかがでしょう」
持って行かれてしまった。流石早瀬さん。
全くこの人は。これでは私と下坂さんが悪者じゃないない。
「雫はどうなの」
「…………俺はそれでもいいけど。みんなが良いなら」
「では決まりですね。金曜日は家の近い下坂さんでいかがでしょうか」
「ちょっと待ってよ。土日は一日あるけど、私は夜だけじゃない」
「金曜日は図書室の勉強会を止めましょう。雫さんと二人だけでして下さい。私と東条さんは午後一時から六時までにすればよいと思います。
そして二人だけの時は雫さんの家。こうすればフェアでしょう」
「そ、それなら良いわよ」
勉強会の後だって雫と一緒になれる。
「私もそれでいいわ」
ふふっ、これで…………。
「ちょっと待って」
「琴平さん如何しました」
「その勉強会も私入れてくれないかな」
「「「えっ」」」
「図書室だけでも良いんだけど」
「…………雫」
若菜が俺を見て来た。
「俺は良いけど」
「じゃあ、決まりです。来週の月曜からですね」
若菜、真理香そして優里奈が思い切り俺の顔を見ている。何か言いたそうだけど?
―――――
第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
ふむ、ふむ!!
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます