第48話 琴平まどかは考える
私は転校生。中学二年の時、神城君と同じ中学に転校して来た。親の仕事都合だ。私は転校生で彼とは別のクラス。学校だけでは彼の存在さえも知らなかった。神城君を始めて見たのは中学三年の時。
偶々学校の有る駅で女の子が暴漢に襲われそうになっているのを見た。
あーあっ、可哀そうにと思って遠巻きで見ていたら、いきなりその男達に声を掛けた男の子がいた。
どう見ても敵うはずがないと思って見ているとあっという間に三人を倒し、女の子が礼を言う暇もなく名前だけ言って立ち去った。
あの時からだ。私が彼を意識し始めたのは。学校でもちょくちょく彼を見に行ったけど、テニス部に入っていて幼馴染の下坂さんとちょっとイケメンの川平君といつも一緒で声を掛けるチャンスが無かった。
あの頃は私もそんな勇気無かったし。
それから一年して高校に入った時、まさか同じクラスに彼がいるとは思わなかった。声を掛けようとしたけど、彼の周りには学年トップスリーの容姿、頭脳を持つ早瀬さん、東条さん、下坂さんがいて声を掛けるチャンスどころか隙間も無かった。
そんな時、二学期の席替えでなんと彼の前の席になった。これはチャンスと思い、早速声を掛けたが、まさか早瀬さんが彼の隣、東条さんが彼の後ろの席になるとは夢にも思わず、いつも話しかけてはこの二人にブロックされてしまった。偶には二人だけで話したいのに。
私の隣の席に川平君が座っている。彼を利用して何とかあの三人に割り込むことが出来ないか考えていたら、まさかの神城君と聰明先輩のデートを見つけた。
後で聞いたら聰明先輩がゲーセンに連れて行ってくれと言われたからと言っていたが、彼女があそこに興味を持つとは考えられない。多分彼女も彼の事が好きなのだろう。
彼女と別れてから一人で居る彼を何とか喫茶店に誘って話す事が出来た。どうも彼の家は私の家の近くらしい。このチャンスを何とか生かしたい。
早速、彼と喫茶店で話した翌日少し早めに駅に行き、彼を待った。それから十五分程して彼が来た。でも側に下坂さんがべったりとくっ付いている。
とても話せる状況ではないのでそのまま気付かれずに電車に乗り、学校の有る駅まで来ると今度は東条さんと早瀬さんが待っていた。
これはとても登校時に声を掛けるのは無理。残るは彼と親しい川平君を利用する手だ。そっちを考えて見るか。私はそのまま登校すると
「川平君おはよう」
「おはよう琴平さん」
なんで、琴平さん俺に挨拶するんだろう?
「川平君、クラスメイトで席が隣なんだから朝の挨拶位当たり前でしょ」
げっ、心読まれている。
「川平君、今日のお昼一緒に食べない。偶には話したいなって思って」
「えっ、俺とですか?」
「うん」
そう言って周りには見えない様にウィンクをした。
昼食の時間になった。例によって神城君は三人の女の子に囲まれている。
「川平君、行こうか」
学食は人が多いが隅の方は空いている。隅の方に行こうとすると川平君が、
「おれ、買って来るから先座っていて」
私は頷いて隅の席に向かった。
川平君は定食にした様だ。
「さっ、食べましょうか」
「美味しそうですね。自分で作るんですか」
「そうよ。川平君食べる」
「い、いやいいです」
そう言われたが、タコさんウィンナーを一つ皿の上に乗せた。食べながら
「ねえ、神城君っていつもあの三人が周りにいるの?」
「大体ね」
「でもそれだと神城君、他の人に馴染めないよね。この前も二学期にもなって徳山君の事も知らなかったんだから」
「そうだな。中学時代はそうでもなかったんだけどな」
「そうなの、下坂さんがいたでしょ。それに一時期だけど東条さんと付き合っていた事も有ったし」
「えっ、何でそんなこと知っているの?」
「川平君も知らないんだ私の事。がっかり」
そう言って彼の顔をじっと見てやった。誰だか分からない?思い出してよって感じで。
うっ、何見てんだ。昼食べ辛い。うん?!でもどこかで見た事ある様な??
「あっ、二年生の時転校して来ただろ。でもあの時髪の毛長かったよな」
「ふふふっ、嬉しいな。覚えていてくれたんだ。それでね神城君ももっとクラスの他の人達とも話せる機会設けた方が良いかなって思って」
「確かになあ。今のままでは三年生になってもあのままの様な気もするし」
「でしょう。だからあの三人から偶には解放してあげて?!」
「えっ、俺が?!」
「あなたしかいないでしょ」
「でもなあ、単に声掛けただけじゃ、あの三人、雫を開放してくれそうにないし」
「だから、クラスの他の人達とも協力して神城君を三人から剥がすのよ」
「どうやって」
「それは…………」
ふふふっ、これでいい。神城君があの三人から解放されればチャンスはいくらでもある。それにあの三人自体も別々にさせる事が出来れば。楽しみが増えたわ。
琴平さんが川平君を昼食に誘うなんて。私は琴平さんに川平君を向けるつもりでいたけど必要無いかしら。
あれ川平君こちらをチラチラ見ながら徳山君と話をしている。なんだろう。
二人してこっちに来た。
「雫」
「神城」
俺は三人と食事を終わらせて話をしていると川平と徳山がやって来た。
「三人共話し中悪いな。雫。今度みんなでカラオケに行かないか。お前が水やりとかない時」
「うーん。カラオケ苦手だし」
「大丈夫だよ。みんなで楽しまないか。中間テストも終わっていいんじゃないか」
「そうだよ神城。偶には行こうぜ。文化祭の打ち上げの時も行ったけど別にへたじゃなかったぞ」
「そうだよ。神城君。いかない?」
「ちょっと、良太」
俺は良太を廊下に誘うと
「なあ、どうしたんだ急に?」
「いやな琴平さんが、いつも雫があの三人と囲まれているとせっかく文化祭でみんなと馴染んだのに、また他の人と話すチャンスがつぶれているから何とかしようよって言われてな。
そんなちょっとお節介な話もあってさ。でも俺もそれ良いと思ったんだ。お前だって他の人とも話したいだろう」
「……。そうだな。琴平さんの発案ていうのがちょっと引っ掛かるけど、確かに良太の言う通りだな。それに徳山も声掛けてくれたし」
俺は教室に戻ると徳山と琴平さんに
「うん、いいよ。行こうか」
「オーケー、じゃあ直ぐにでも準備するね」
琴平さんが、他の女の子達の所へ行った。
あれっ、直ぐに帰って来た。
「神城君。みんな行きたいって」
「そ、そうなんだ」
ふふっ、第一次作戦成功だ。あの三人が私の顔睨みつけているけど無視して
「川平君、徳山君。男の子の方も誘って」
「「了解」」
―――――
第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
ふむっ、これはまた。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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