第47話 中間テストのその後で


 文化祭の十日後に中間テストが有った。例によって、良太、若菜、真理香、優里奈と俺で図書室と俺の家で勉強会をした。


 お陰で今回もそれなりの成績を収める事が出来た。但し今まで見逃していた人がいた。そう俺の席の前に座る琴平まどかだった。この子はなんと優里奈、真理香、若菜についで学年で四位に入っていた。


 一位 優里奈 四百九十五点

 二位 真理香 四百九十三点

 三位 若菜  四百九十点

 四位 琴平さん四百八十五点

 ・

 十位 良太  四百七十五点

 十二位 俺  四百七十点

 

 何故か女子三人が偉く険しい顔をしている。


「不味いね」若菜曰く

「そうですね」真理香曰く

「私達も気を抜く訳には行きませんね」優里奈曰く


何を心配しているんだろうか?俺にはさっぱり分からない。

「皆どうかしたの?」


「雫には関係ない事。気にしないで」

 ただでさえ、早瀬さん、東条さんで手を焼いているのに新しい女に横から入らせる訳には行かな。


「下坂さん、東条さん。作戦会議が必要です。今日の放課後に集まりましょう」

「分かってます」

「そうしましょう」


放課後、

「雫、今日は一人で帰って」

「雫さん、ごめんなさい」

「雫、ごめん」


「あっ、いいよ」

 あの三人が何を話すのか知らないが、一人で帰れるのは嬉しい。久しぶりだ。中間テストも終わった事だし、何処か寄り道するかな。ゲーセンもいいか。


 何となく心がウキウキしながら学校からゲーセンに向っていると

「神城さん」


聞き覚えのある声に振向いた。

「あっ、聰明先輩」

「神城君、ちょっと時間ある」


せっかく一人で帰れるのに。

「あっ、そんなに時間取らせないから。駄目かな」


顔に嫌だって出ていたのかな。

「そんなことないです。何ですか?」


「じゃあ、歩きながら。ねえ、神城君、生徒会に入らない?文化祭の時の事で生徒会内では君の事がいつも話題になっているの。入ってくれないかな」

「聰明先輩断ります。俺には不向きなので。それに文芸部の事も有りますから」


「そうか、やっぱり駄目だよね。諦めるわ」

えっ、簡単だな。もっと色々言われるかと思ったのに。


「神城君、これから何処に行くの」

「えーっと」

ゲーセンに一人で行くなんて言えないし。どうしようかな。


「私、ゲームセンターって行った事無いの。もしあなたさえ良ければ一緒に行ってくれないかな。君と一緒なら安心できるし」

へっ?!聰明先輩ゲーセン行くの?


「いいですよ。時間あるし」

丁度いいや、でも無いかな?


 やったー。神城君とデート出来る。ゲーセンはあまり興味ないけど、行くかなと思ってあてずっぽで言ったら当たったみたい。

 ふふふっ、いつもあの三人の独占はずるいわよね。でも今日はあの三人どうしたんだろう?




その頃女子三人は、学校近くのファミレスにいた。

「この集まりは琴平さんの件で認識合っていますか」

真理香が口火を切る。


「もちろん」

「私もよ」


「それでは、彼女の事ですが、最近席が近い事を利用して色々と雫さんに声を掛けています」

「早瀬さん、声を掛けるって何?」

「下坂さんは別クラスだから分からないのは仕方ないですが、琴平さんは雫さんの前の席に座っています。その位置を利用して遊びに誘うとしたり昼食を二人で食べる誘いをしています」

「それは不味いわね」


「早瀬さんと私がいない時なんて何をしているか分かったもんじゃないわ。この前も休み時間に少し二人で席を外したら、雫に思い切り近寄って何か誘っていたし」

「それは確かに不味い。雫は彼女にどんな態度なの?」

「今の所、失礼にならない程度に避けてはいますが、琴平さん凄い積極的です。雫さんの優しさにつけ込んで何をするか分かりません」


「じゃあ、どうするの。私は別クラスだし、早瀬さんと東条さんで何とかして貰わないと」

「これについては、琴平さんはこの三人の共通の敵とみなして対応しましょう」

「そうね、私か早瀬さんかどちらかが必ず雫と一緒に居る事にして、彼女が雫に話しかけてきたら、参加するなりして彼女の意図を砕くのが一番ね」

「でも普通にクラスメイトとして雫さんに話しかけているのを無理に邪魔するのも問題ですね」


「じゃあ、川平君に琴平さんへアプローチして貰えば。好きになってとかじゃなくて、普段なるべく声を掛けてくれる様にして貰うとか」

「下坂さん、何も代償無しに無理でしょう」

「彼の陽動が上手くいけば川平君は琴平さんと付き合えるわ。彼女人気あるし」

「下坂さん、お願いできます?私と東条さんは川平さんとあまり親しくないので。あなたは中学からの知合いですよね」

「……分かったわ。頼んでみる」

あまり彼とは話したくないけど今回は仕方ないか。

「「ではお願いします」」




 私、琴平まどかは、クラスメイトとちょっと寄り道しようと歩いていた。

 あれっ、あれは神城君と聰明生徒会副会長だ。二人で歩いている。彼があの三人以外で居るなんて珍しい。ちょっと後をつけてみるか。


「あっ、ごめん私用事できた」

「いいよまどか、じゃあね」




 あーっ、二人でゲーセン入って行った。あの二人出来ているのかな?神城君があの三人以外と付き合うなんて考えられないけど。私も気付かれない様に入ってみよ。



それから一時間位して

「神城君、今日はありがとう。楽しかった。ねえもし良かったらまた会ってくれるかな?」

「えっ、良いですけど。時間有ったら」

「やったー。じゃあまたね。あっ、生徒会の事気にしなくていいから」


 えっ、どうなっているの?聰明先輩俺に声掛けたの、そっちが優先じゃなかったのかよ。

まあ、言われても入らないけど。さて帰るかな。



「神城君」

「えっ?!」

「私、琴平まどか」

「ああ、琴平さん」

「神城君、聰明さんとデートしていたの?」

「いや、いきなり声を掛けられてゲーセンに付き合わされた」

「そうなんだ。ねえ時間ある」

「もう家に帰ろうかと思って」

「良いじゃないもう少し。カラオケ行かない?」

「カラオケは、ちょっと」

「いいじゃない」


 いきなり手を引っ張られた。困ったな。あんまり気のりしないんだけど。手を叩く訳にも行かないし。琴平さんって結構強引だな。


 結局俺はカラオケを勘弁してもらう代わりに喫茶店で一時間近く付き合わされた。彼女は、結構俺の家の近くだという事も分かった。ちょっと不味いかも。


 俺の事名前呼びしていいかなんて聞かれたから即座に断ったけど。これ以上揉め事の種を撒きたくない。



 なんとか琴平さんとも別れて一人で家に向かっているとポケットに入れてあるスマホが震えた。若菜からだ。


「はい」

「雫、どこいるの?家に帰っていると思って来てみたらいないから」

「ああ、ちょっと一人でぶらぶらしていた。今帰っている所」

「一人で?」

「そうだよ。何か用事が有ったの?」

「ううん、無いけど。早く帰って来れたから雫と遊べるかなと思って」

「そうか。ごめん」

「まあいいわ。じゃあね」


 何か怪しいな。あの口ぶり。でも私達以外で雫に声掛ける人なんていないと思うけど。琴平さん…………まさかね。


 やばかったな。聰明先輩とゲーセン行って、琴平さんと喫茶店行ったなんて言ったら、どうなるか分からない。琴平さん明日、普通に接してくれると良いんだけど。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


暗雲漂う雫。この先どうなる事やら。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

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