第45話 文化祭の二日目 午後の部


 俺がスポドリを飲んで休んでいる間は、交代の二人が巡回に出て行った。聰明先輩は神林先輩を連れて別室に行っている。


 この部屋に残っているのは、俺と女の子二人、それと届いたばかりの幕の内弁当。ちょっと教室に戻りたいな。


 午後は確か一時からだ。今日は午後の部に優里奈が入るはず。若菜は午後フリーと聞いている。ちょっと相談してみよう。女の子に声を掛けた。


「あの」

「ひっ!」

「ご、ごめん。脅すつもりじゃなくて。俺自分の教室に戻りたいから聰明先輩に伝えておいてくれないかな。午後一時には戻って来るからって言っといてくれると」


 頭をコクコクと縦に振っている。声を出していない。怖がられちゃったみたいだ。

俺は、そのまま生徒会室を後にすると教室へ向かった。


「あっ、雫」

「優里奈と真理香か」

「どうしたの、生徒会の役目は?」

「うん、今休憩中。午後一時に戻ればいいんだ」

「そうか。じゃあ私達と回ろうよ」

「良いけど。若菜は」

「下坂さんはまだ、入り口で椅子に座っていました」

「そうか」



 それから俺は真理香と優里奈に引っ張られて教室や廊下の展示を回った。もうすぐ十二時半になる。そろそろ戻らないと。

「俺、そろそろ戻るから」

「うん分かった。楽しかったわ雫」

「雫さん楽しかったです」

「うん俺も」


生徒会室に戻ろうとすると

「雫!」

「若菜、どうしたの?」

「十二時に交代したから、雫休憩かなと思って生徒会室行ったら、出かけたって言うんだもの。どこ行っていたの」

「う、うん。教室に戻ろうとして真理香と優里奈に会って、三人で回っていた」

「えっ、私抜きで!酷いよう雫」

俺の胸をドンドン叩いている。


「ごめん」

「じゃあ今から私と回って」

「でも俺今から生徒会室に行かないと」

「じゃあ、私はどうすればいいの」

「じゃあ、こうしよう。俺何も食べていないんだ。外の模擬店で一緒に食べようか」

「うん」


 結局三十分しかなかったので焼きそばとたこ焼きしか食べれなかったが、若菜はとても嬉しそうにしてくれた。あーんもさせられて参ったけど。


「じゃあ、若菜。また終わったらな」

「うん、雫無理しないでね」

「分かっている」


急いで生徒会室に戻ると

「神城君どこ行っていたの。お昼は食べたの?」

「あっ、はい、外の模擬店で」

「誰と?」

何故か聰明先輩が突っ込んでくる。


「クラスの連中とです」

「そうなの」

疑惑の目になりながらも納得してくれた。


「さあ、行きましょうか神城君♡」

「はい」


 午後はもう教室にはいかない。グラウンド周りを見て場所を荒らしていないかなどを確認するらしい。


 模擬店のゴミ処理で少し注意があったが、特にそれ以外は問題が無かった。もう三時半だ。片付けも始まるので俺達も生徒会室に戻ろうとすると校門で騒いでいる。


「聰明先輩、どうしたんですかね」

「さあ、行ってみましょうか」


 大人三人と言ってもあまり良さそうな雰囲気でない人が校門を警備する人と言い争っている。


「どうしたんですか」

「どうしたもこうしたもねえよ」

「何だこれは、挨拶もねえで。勝手にこんなことしやがって」


おかしいわ、この辺にはこんな人たちいないはずないのに。どこから来たのかしら。


「警察を呼びますよ」

「へえ、呼んでみなよ。可愛い姉ちゃん。高校生のくせに良い体してるじゃねえか」


いきなり、聰明先輩の胸を一人の男が触ろうとした。仕方ない。


「ぐぇっ」

右手首がぶら下がっている。


「お、お前この野郎」

次の男が俺に殴りかかって来た。相手が動作に入る前に左脇腹を右ひじで回転突き。


「ぐぉ」

男は後ろに吹っ飛んであばらを押さえている。


三人目が怖そうな顔をして

「兄ちゃんやるじゃないか」


いきなり俺を蹴って来た。馬鹿かこいつ。

足が上がる前に軸足を払った。そのまま後ろに転倒した。


「凄い、見えない」

「誰なんだこの人」


ピポーピポーピポー。


「く、くそっ、覚えていろ。おい引き返すぞ」


「済みません。師範代」

「あの、ここではそれは無しで」

「済みません」


「後は頼みます。皆さんがやっつけたという事で。ねっ、聰明先輩」

「あ、うん、はい」

「それでは」


 聰明先輩の手を引いて構内に逃げ込んだ。参ったな。まさか、こんな展開になるなって。


 ほほぅ、いいものを見せて貰った。神城の孫はいいのう。あれならば。


 その後、先生達も駆けつけたが、俺達は退散した後なので警備員が上手く話してくれていると良いんだけど。


校舎に着いたので手を離そうとするとあれっ、


「聰明先輩。手離しましょ」

「ちょ、もうちょっとこのままで」

「えっ」


「あっ、雫。なに手なんか繋いで」

「いやこれは」

「もう離れなさいよ。雫は私のものよ」

「へっ?!」

「下坂さん、何を行っているんですか。雫さんはわたしのものです」

「二人共冗談じゃないわ。雫は私のものよ」


「ひ、ひーっ」

聰明先輩が三人の勢いに逃げて行ってしまった。

「もう三人共!」


仕方なく校門でのことを小声で説明してあげた。

「なーんだ。そういう事。なら早く行ってくれれば」

「そうですよ雫さん」

「そんなこと言ったって」


あれ、優里奈が怪訝な顔している。

「どうしたの優里奈」

「あ、うんなんでもない」


 あっ、体育館行くの忘れてた。聰明先輩、午後二時に体育館に行く予定にすればって言ってたけど、午後から回ったのって校舎周りとグラウンドだけだよな。忘れていたのかな?


 文化祭二日間は大した問題もなく?平穏に終わりを告げた。そして我がクラスも支出を上回る売り上げがあり、みんなで文化祭の打ち上げをやる事になった。真理香も優里奈も参加したので男子達は思い切り盛り上がった。


 俺も今回の文化祭でクラスに馴染めた感じがする。徳山君と良太には感謝しないといけないな。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


流石雫だけど。このままで終わるのかな?


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

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