第41話 二学期の始まり


 あっという間に夏休みも終わった。俺はいつもの様に学校に行く為に家を出る。宿題は全て終わっているので心は軽い。

 俺が家を出ると見計らった様に若菜が家から出て来た。

「雫、おはよ」

「おはよ若菜」


「今日からまた学校だね」

「うん」


 若菜とあんな事が有ったけど、自分自身で納得したのかいつもの彼女に戻った。ただ家で二人でいる時の密着度は前よりは増したような気がする。

 今日も学校のある駅に着くと優里奈と真理香が待っていた。


「おはようございます雫さん、下坂さん」

「おはようございます。早瀬さん」

「おはよう真理香」


「おはよう雫、下坂さん」

「おはようございます。東条さん」

「おはよ優里奈」



 三人が前と同じように後ろに付くと仲良くしゃべり始めた。海と山の遊びでこの三人は随分仲が良くなったようだ。俺としても嬉しい。


 下駄箱で上履きに履き替えると優里奈と真理香と一緒に教室に入った。俺は自分の席に行き鞄を机の上に置くと


「雫おはよ」

「おはよ良太。随分日焼けしたな」

「ああ、部活と海でしっかりと焼けたからな」

「海?」

「なに、家族と一緒さ。それよりお前はどうだった夏休み」

「俺か、俺は…………」

「私達とずっと一緒でしたよ」

「「「「え、ええーっ」」」


いつの間にか優里奈と真理香が側に来ていた。

「いや、そんな事無い。宿題だって全部終わっているし。優里奈も真理香も俺の困る事言わないで」


「「「「え、えええーっ」」」

「ねえ、聞いた、聞いた。神城君、早瀬さんの事名前呼びしたわよ」

「うん、聞いた。やっぱりずっと一緒だったのかしら」


「雫さん、ごめんなさい」

「雫、ごめん」


「「「「え、えええーっ」」」

「ねえ、聞いた、聞いた。早瀬さん、神城君の事名前呼びしたわよ」

「うん、聞いた。やっぱりずっと一緒だったのかしら」


おーい、女子達、言っている事リフレインしているぞ。


予鈴がなったので二人が自分の席に戻ると

「雫、後で教えてな。夏休みの事」

「何にも無かったから!」


西泉願力先生が入って来た。いつ見てもゴリラが眼鏡を掛けているように見える。


「皆おはよう。夏休みは事故もなく過ごせたようだな。良い事だ。学級委員、自由研究だけ集めて後で職員室へ持って来てくれ。

この後、体育館で校長先生からお話がある。全員行くように。以上だ」



 体育館で校長先生の有難くて長ーい講話が終わった後、また教室に戻って来た。皆で喋っていると願力先生が入って来た。


「今から、席替えを行う。くじを作ったからこの箱から一人一人引く様に。廊下側の先頭から引いてくれ」


 うーん、何とかこの席を維持したい。クラスメイトが引く毎に唸ったり喜んだりしている。何と良太は一つ前になっただけみたいだ。


 俺が引く頃には、くじの入った箱にはもう一枚しか残っていない。最後の一枚を取ると俺の顔が緩んだのが分かった。

 ふふふっ、窓際後ろから二番目。やったぜ。でも一番後ろは誰だ?


「雫、宜しくね」

なんと後ろには優里奈が。

「ああ、宜しく」


「雫さん、宜しくお願いします」

えっ、俺の右隣りに真理香だと!神様意地悪しているの??


 幸い良太が、俺の右斜め前で位置的に変わらないのが良かった。俺の前の席は、まだ話した事の無い眼鏡を掛けた女の子だ。自分の席について俺の方に振り返り


「神城君。琴平まどかです。宜しくね」


 何故か眼鏡を取って挨拶して来た。柔らかい茶髪で大きな目をしている。鼻もスッと通っており、下唇がプルンとしていて丸顔だ。可愛い顔している。


「ああ、宜しく」

「嬉しいな。神城君の側に来れて」

「えっ、何で?」

「だって、普段は神城君とは話す事も出来ないから」

「???」



「雫、今日は水やりよ」

「雫さん、水やり終わるまで待っています。一緒に帰りましょう」

「へっ?!」


「ふふふっ。神城君。また今度ね」

そう言うと前を向いてしまった。


また今度って、どう意味なんだ?


「ようし、みんな移動したな」

そう言うと教室を出て行った。


午前中三限だけ有ったが、どれも夏休みの宿題の提出や答え確認等で終わった。


最後に願力先生がもう一度居室に来ると

「では、今日はこれで終わりだ。気を付けて帰るように」

そう言って教室を出て行ってしまった。


「良太、ちょっと」

そう言って、良太を廊下に呼び出すと


「なあ、琴平さんって誰?」

「ああ、バレーボールクラブの子だよ。明るくて積極的な子だ。クラスの中でも人気の有る子だ」

「そうなのか」

「良太は、あの三人にがっちりとガードを固められているから分からないだろうけど」

「そうか。二学期は何とかしないとな」

「そうだな。そう言えば雫、少し背が伸びたか?」

「いや分からん」

「教室戻ろうぜ」


教室に戻ると、やはり若菜もいた。

「雫帰ろ」

「悪い、今から水やりだ」

「じゃあ、待っている」

「いやでも」

「雫さん、下坂さんと二人で教室で待っています」

「わ、分かった」


 良太が笑っている。

「雫、じゃあな、二学期も波乱の幕開けだな」

その後あいつは部活だーと言ってあっという間に去って行った。


 俺はその後、優里奈と花壇に水やりをした。結構草が生えていたり、枯れた花が有ったりと時間が掛かったが、何とか終わらせて教室に戻ると


「雫さん、終わりましたか」

「雫終わったのね。帰ろ」


結局、朝と同じように三人が後ろについて学校を出た。


「ふーん、そういう事か」

私はクラブの合間に教室の建物を見ていると神城君とあの三人が一緒に出て来た。


「ふふふっ、これはチャンスありそうだな」


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


おや、新しい女の子が現れました。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

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