第38話 爺ちゃんの所に行く 美少女達は考える


 雫のお爺様の所に来て三日目。


 今日は雫が、道場で国内各事務所と各国の拠点から集まったリーダー達に指導するという事で、私達は母屋から中庭を見たり、母屋の周りを散歩する事にしていた。

 


 今私達三人は、母屋の長い廊下から中庭に広がる大きな庭園を見ていた。三人共黙っている。


若菜視点♡


 私は、一昨日と昨日の雫を見て、今までの接し方では彼を自分に振向かせる事が出来ないと感じた。

 猪を一撃で倒す事が出来るのに、女の子一人に手も出せない。どうすればいいのか。


 同じ日に同じ病院で生まれ、幼稚園、小学校、中学校そして高校も一緒になった。私は雫の良い所を一杯知っている。この二人よりも。


 東条さんは中学の時に付き合っていた。信じたくないけど肉体関係まであると彼女はいっている。私は私からのキスがやっとなのに。


 雫が東条さんをどう思っているか分からない。でも何となく女の直感だけど、私と早瀬さんより好意を持っている様な気がする。


 なんとかして、私に振向かせないと。力ずくでは、たとえしても雫が私一人を見て来るという様な事は期待できない。


 私にあるのは幼馴染という絶対的な特典だ。でもこれが雫には私に踏み込む事が出来ないハードルになっている。


 思い切って既成事実を作ってしまおうか。責任感の強い彼なら結婚してくれるはず。でも誰も喜ばないよね。


 どうしよう。今はとにかくこの二人に雫からこれ以上好意を持たせない様にさせる事だけ。




真理香視点♡


 一昨日と昨日の雫さんの立ち振る舞いを見て、十分にリーダーとしての資質が有る事は十分に分かりました。


 中学の時、暴漢に襲われようとした私を簡単に助けてくれた事は、ここに来てそれが無理な事ではなかったことが十分に分かりました。

 

 ここまで成る雫さんの努力と達成能力は早瀬産業を率いていくに重要な能力です。そして外国の方達にも物怖じしないどころか、立っているだけで従えてしまう。とても十六才とは思えない。


 お爺様が言っていた、雫は特別だからというのは本当かも知れない。持って生まれた帝王力。人が学んでもそれを身に着ける事は容易でない。


 でも大きな問題が二つある。一つは東条さんと下坂さんの存在。彼女達の魅力は侮れません。女の感と申しますか、東条さんには下坂さんと私より少し多くの好意を寄せている気がします。


 どうすれば、私だけを見てくれる様にする事が出来るのか。別荘であられもない姿で彼を誘おうとしましたが、彼は拒絶しました。私が無理矢理キスをさせて頂きましたが。


 私は自分でも決して魅力の無い女だと思っていません。彼には早瀬産業の財力などなんの魅力も無いようです。


 色仕掛けも駄目、財力にも興味ない人(雫)。でも一度でいいあの体で私は…………。私って思ったより何なのかしら。


 こんな事思っている暇はないわ。とにかく一度お父様に会って頂き、事の流れを決めていかなければ。


 そしてもう一つの問題。それは早瀬家に婿として入って貰わなければいけないという事。私は一人娘。お爺様、お父様と築き上げた早瀬産業を維持発展させるには、婿入りは必須条件。


 彼が婿入りを拒むとは思えないけど、お爺様の言いようでは神城一族の長として生きて行く事も考えられる。その時、彼の妻になれるのは、下坂さん一人。


 何とかしないといけません。





東条優里奈視点♡


 雫、私の思いの人。中学の頃、私に告白してくれた。とても優しくて、私を包み込む様に周りから私を守ってくれた。


 だから彼と一緒に居ると自然と他の人達にも心を開く事が出来た。あの失敗さえなければ、今こんな事にはなっていなかった。


 でも今は名前で呼んでくれるようにまで戻る事が出来た。体の関係も受け入れてくれる。下坂さんや早瀬さんより一歩リードしていると思っても間違いなさそう。


 彼は責任感が強い人。一昨日、昨日の彼の振る舞いを見ても皆さんからの信頼は、誰から教えて貰った訳ではなく、彼自身から自然と出たものだ。


 だから、あの二人にこれ以上、雫から好意を寄せる様な事をさせなければ、間違いなく私と一緒になってくれる。

 

 雫の力は、ここに来て十分に分かった。想像以上だったけど、お父様に会って貰いさえすれば第十三代東条家当主として立派に東条家を率いてくれるはず。


 でも、雫は婿入りという事をどう考えているんだろうか。彼の事、問題ないとは思うけど、神城一族の長として生きて行く責任がある気もする。その時選ばれるのは下坂さんだけ。


 どうすれば。






 俺は道場での鍛錬と指導を終えて、シャワーを浴びて着替えてから三人の所に来た。暇をして申し訳ないかなと思いつつ、中庭の見える廊下に来ると


 えっ、何この雰囲気。皆の体から黒いオーラが出ている様な。やばい。これは一度退散だ。


廊下から去ろうとした時、

「あっ、雫だ。終わったの?」

「う、うん」


「雫寂しかった」

いきなり若菜が飛びついて来た。


「下坂さん、抜け駆けはずるいです」

「嫌だ。離れたくない」


「駄目よ、下坂さん。みんな均等よ」

「えっ?!」


「下坂さん、東条さんの言う通りです。三人でシェアしましょう」

「シェ、シェア?」


「はい、シェアです。雫さんに抱き着きたい時は、三人とも抱き着かせて下さい」

「あっ、それいい。それなら二人の前で思い切り抱き着かれる」

「い、いや」


「雫いいでしょう?」

「…………」


 せっかく鍛錬できた俺の体だけど、この三人のお陰で精神ボロボロ疲れた。今日は猪鍋。それで元気付けよ。はぁ。





 爺ちゃんのとこに来て四日目。


今日は父さん母さんと花音が来る。お墓参りという事も有って、爺ちゃんと俺は今日、鍛錬をしない事にしていた。

 塚原さんが駅まで迎えに行ってくれている。




「お爺ちゃーん」

「おお、花音か、可愛いのう。元気だったか」

「うん」


「お父さん、久しぶりです」

「おう、唯香か。ひさしぶりじゃのう」


「お義父さん、久しぶりです。元気そうでなによりです」

「幸一郎君か、久しぶりだな」


「お兄ちゃん」

花音が思い切り抱き着いて来た。そしていきなり離れた。


「お兄ちゃんのばか!」

「えっ?」

「だって、お邪魔虫三人の匂いが付いている」

「え、えーっ!」

妹とは言え、女性って怖い!!!


 この後、真理香が父さんに挨拶をした事で何故か若菜が不機嫌になっていた。


 その後、婆ちゃん(神城総一郎の妻)の墓参り行った。婆ちゃん驚いていただろうな。俺が三人も女の子を連れて行ったことに。


 でも三人共、婆ちゃんの墓に手を合わせている時間がとても長かったような。気の所為かな。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


雫の夏休みの苦悩?は家に帰ってからも続きます。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

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