第33話 早瀬家の別荘 岩場の遊びその二


砂浜を通って岩場の側に来ると

「ここでシートを敷いて荷物を置きましょう」

「良いですね。そうしましょう」


 岩場が目の前の浜辺にシートを敷いてクールバッグとかを置いた。

サンダルを岩場用に履き替えてシュノーケル付きゴーグルを持つと


早瀬さんが

「岩場用サンダルも履いて下さいね。結構痛いです。後必ず二人以上で行動をお願いします。場所によっては岩場の際から深い所も有りますから」

「お兄ちゃん、潜るの?」

「せっかくだから少しな」

「私も潜りたい」

「花音は潜れないだろ。珍しいものが有ったら取って来るから」

「ぶーっ、分かった」


 結構ボコボコしている。海水の溜まった穴にはイソギンチャクや巻貝、逃げそこなった小さな小魚が一杯泳いでいた。



「わーっ、綺麗な魚がいる」

「ねえ、こっちにグニュグニュ動いている奴がいる」

「これ食べられないかな」


 女の子達は、大きめの穴の中でゴーグルをつけてシュノーケルで息をしながら好きに遊んでいるみたいだ。


「早瀬さん、この岩場の側の深さってどの位あるの」

「私は潜った事は有りませんが、浅い所で一メートル深い所で五メートル位あると聞いています。雫さん潜るのは良いですがくれぐれも無理をしないで下さいね。あくまで遊びですから」

「分かっています」


 俺は、岩場の際を歩きながらあまり深くなくて潮の流れの弱い所を見つけて静かに海の中に入った。


 静かだ。やはり水の中はいい。綺麗な魚が群れを成して泳いでいる。岩場の壁を見ると色々な魚がいた。貝類も一杯いる。いくつか取ると一度海面に上がった。


 息を吸うともう一度潜る。あれこいつ、岩場の隅から赤い触角が出ている。伊勢海老だ。手を出して岩場の奥に突っ込むと抵抗は有ったものの、何とか取れた。手元の網に入れて一度海面に上がる。何度かこれを繰り返した後


「ふーっ、気持ちいいけどもう上がるか」


 随分流されたようだ。皆よりずいぶん離れていた。岩場に上がると網の中を見て

これBBQで食べれないかなと思いながらみんなの所に戻ると


「あっ、雫さん、居なくなったので心配しました。どうしてたのですか?」

「これ」


手に持った網を早瀬さんの顔の前に見せると


「えーっ、凄い。これ雫さんが取ったのですか」

「うん」

 声を聞いて他の子達がやって来た。


「お兄ちゃん凄い。その髭のあるやつって海老でしょ」

「うん、多分伊勢海老、小さいけど食べれそう」

「雫、それサザエ?」

「うん、岩場に張り付いていた。これはしっかり食べれそう」

「雫、それウニ?」

「うん、紫ウニだよ。焼いて食べると美味しいんだ」


「雫さんは、こんな事何処で覚えたのですか。普通の人だと無理ですよ」

「ああ、爺ちゃんに連れられて夏は海とか山とかに行かれたから」

「そうだったんですか。雫さんの事もっと知りたいですね」

「大したことないよ」

「「「そんな事無い!」」」


「では皆さん、雫さんの事はまた後にして、一度シートに戻りましょう。もう一時間経ちました」

「そうしようか。ラッシュガードだけだとこの日差しきついしね」

早瀬さんと若菜の言葉に花音と優里奈が頷いた。


 戻る前にシートから一番近い岩場の海水が溜まっている穴の中に網を入れた。今日は楽しいBBQになりそうだ。


「この日差しでは、パラソルを持ってきた方が良かったですね。今から取りに行って来ますか」


「俺取りに行って来る。二本有ればいいかな」

「はい。私も一緒に行きましょう」

「「「駄目!」」」

「えっ?!」

「雫が一人で行くか私達も一緒に行くかです」

若菜の言葉に優里奈と花音が頷いている。


「早瀬さん。場所分かるから俺が一人で行って来る」

「ごめんなさい」

 もう、せっかく雫さんと二人きりになれるチャンスだったのに。


 早瀬さんの思い通りにはさせないわ。でも早瀬ん思ったより積極的。学校と違う。気を付けないと。

「若菜お姉ちゃんどうしたの?」

「うん、なんでもないよ」


 歩いても一、二分の距離だ。小屋からサッと取って来て戻るとお互いに日焼け止めを塗っていた。

 なんか微笑ましい光景だな。


「持って来たよ。立てるのこの辺でいい」

「お願いします」


 手で砂の軽い部分を取って固い所を出すとパラソルの柄のとがった先端を利用して砂浜に差し込んだ。ぐいぐいとやる。結構力いるが、何とかささると

「できたよ…………。みんなどうしたの」


皆俺の方をじっと見ている。


雫さんのあの体、堪らない。夢に出て来そうです。

雫のあの体に私…………。ふふふっ。

雫と絶対するんだから。

お兄ちゃん、妹だって良いんだよ。


「あの、皆さん。どうかしましたか」

「「「「何でも有りませーん」」」」

「そ、そうですか」


「雫さん、私に日焼け止め縫ってもらえます」

「はいっ?」

「はい、背中の方が塗れなくて」

「早瀬さんさっき私が…………」

「いえ、雫さんにもう一度」

「ずるーい。お兄ちゃん。私も」

「「雫私も」」


 俺今海水浴来ているんだよな。この四人の体に日焼け止めクリームなんて塗れる訳ないだろ。俺の神経ボロボロになるぞ。


「あっ、皆で塗り合えばは早く終わるよ。そしたらもう一度岩場行こうよ」

「だからその前に雫さんから塗って頂きたいのです」


早瀬さん俺の言葉理解してーーー!!


 逃げようがないこの状況に精神的拷問ともいえる、高校一年の美少女達の背中に日焼け止めを塗るという事をさせられた。早瀬さんなんか、後ろ向きとはいえ、途中まで水着降ろすんだもの。


 俺だって男の子だーーー。南無阿弥陀仏、法蓮華経。羊が一匹、羊が二匹。邪念退散。息子よ沈まれ。



四人塗り終わった頃には、俺の心臓は破裂しそうになっていた。

「駄目、もう駄目。俺寝てる」

何故か俯せで寝る俺。皆分かるよね。


「大丈夫ですよ。もう十二時を過ぎました。お昼にしましょうか」

「「「賛成」」」


 四人の作ってくれたおにぎりはとても美味しかった。何と卵焼きや鳥からまで入っていた。やっぱりこの子達いいお嫁さんになるよ。うん。


 ご飯休憩をした後、俺達はまた岩場遊びをした。俺は今度は潜らずにみんなと一緒に大きな穴の中と言っても腰位まである深さの海水の中で思い切り楽しいだ。


「皆さん、もう四時になります。そろそろ引き上げてBBQの支度をしましょうか」

「「「「賛成」」」」


こればかりは俺も喜んだ。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


 海水浴という雫の苦行が続きますね。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る