第32話 早瀬家の別荘 岩場の遊び
早瀬さんの別荘に来て二日目の朝。こういう所ではいつも以上に早く目が覚める。海側のガラス窓には遮光性のカーテンを引いてあるがそれでも明るくなったのが分かる。
大きなあくびをして起きるとカーテンを開けた。
えっ、女の子四人が流石に水着ではないがもう遊んでいる。いったい何時なんだと時計を見ればまだ七時。早い。
若菜がこっちを見た。手を振っている。
「あっ、雫が起きた」
思い切り手を振ると雫が応えた。他の子も手を振っている。
「雫さんも目が覚めたようですし、そろそろ戻りますか」
「そうしましょう」
俺は部屋のバスルームの隣にある洗面所で顔を洗うと短パンTシャツを着てダイニングに行った。
「「雫おはよ」」
「雫さんおはようございます」
「お兄ちゃんおはよ」
「皆おはようございます」
やはり花音は妹とはいえ、女の子四人と俺一人では、なんか恥ずかしい。
「雫さん、もう朝ごはんは出来ています。食べましょう」
テーブルの上に焼き魚、目玉焼き、海苔、シラス入り大根おろし、漬物、お茶碗とお味噌汁のお椀が乗っていた。
横にご飯のジャーとお味噌汁が入ったお鍋がガスコンロの上で柔らかく湯気をたてている。
「えっ、これ全部作ったの?」
「ええ、四人で作りました」
「えーっ、なんか申し訳ないです。俺何もしていないし」
「そんな事は気にしないで下さい。それより食べましょう」
「「「「「頂きます」」」」」
朝ごはんは美味しかった。海辺に来たことも有るのだろうけど、この子達の作る料理は本当に美味しい。皆いい奥さんになるんだろうなと思ってしまう。
あれ、女の子達が俺を見ている。
「どうしたの?」
「雫があまりにも美味しそうに食べるから見惚れちゃった」
「だってとても美味しいだもの」
「えへへっ、お兄ちゃんが寝ている間にみんなで作ったんだ」
「そうか、皆ありがとう」
俺は三杯もご飯をお代わりしてしまった。朝ごはんが終わった所で早瀬さんが
「今日は岩場に遊びに行きましょう。波が穏やかなので魚達を綺麗に見れると思います。昼食は帰って来るのは大変なのでおにぎりを作りましょう」
「あっ、おにぎりだったら俺も作れる」
「だめ、お兄ちゃんの手でおにぎり作ったら大きすぎるよ」
「そうよ、雫」
「雫は、浮輪の空気の状態とシュノーケルの準備でもしていて」
「雫さん、シュノーケルは小屋に人数分あります。出しておいて頂けますか」
「…………。分かった」
女子力高すぎだよ。この四人。仕方なく俺は歯磨きを終えた後、門の内側にある小屋に入った。
小屋と言ってもそれなりの大きさがある。昨日も入ったが、戸を開けると浮輪やシュノーケルなんて小物で、ウォータージェットが二台、ウォータースキーが二セット、ニーボード五台など、海岸で遊ぶには十分事足りる物が置いてある。もちろんパラソルやボンボンベッド、シートの他、釣り道具も一式ある。
昨日利用した浮輪五つを小屋の外に出して空気のチェックをした後、シュノーケルを取ろうとすると
「雫さん、シュノーケルの場所分かりますか?」
「ああ、ここでしょ」
ガラッ、ピシャ
いきなり戸が閉まった。早瀬さんが俺の側に来るといきなり抱き着いて、
「雫さん、素敵ですね」
思い切り抱きしめて来た。
「ちょ、ちょっと早瀬さん。こんな事したら駄目だよ。他の子が」
「大丈夫です。水着の準備をしていますから」
水着にラッシュガードを着ているとはいえ、思い切り柔らかい物が当たって来る。俺はそのまま立っていると
ガラッ。
「あっ、やっぱり。早瀬さん離れて!」
若菜が思い切り早瀬さんの体を引っ張った。
「あっ、もう少し位良いではないですか。下坂さんは雫さんを知っているんでしょ?」
「えっ、知っているって?」
「その、あれです」
若菜が顔を真っ赤にして
「知らないわよ。雫ガード固いから!」
また出て行ってしまった。
「勘違いしたのでしょうか」
「何を?」
顔を赤くして下を向きながら
「私以外の方は、その…………。も、もう雫さんとしているのかなと思いまして」
「ちょ、ちょっと。それ早瀬さん。妄想です」
「えっ、してないんですか。お二人共?」
何も言わずに頷いた。ここは嘘も方便。
早瀬さんがいきなりパッと顔を明るくして
「ふふっ、そうですか。そうですか。それは良かったです。さあ行きましょう」
早瀬さんが小屋を出て行った。
俺は女の子用の少し小さめのゴーグルとシュノーケルの付いたセットを四つと俺用の大きめのそれ、それと岩場歩きようの底が厚めのかかと付サンダルを人数分持って外に出ると何故か皆いた。
「お兄ちゃん、遅いわね。何していたの?」
「雫、早瀬さんと何していたの?」
花音と優里奈がジト目で俺を見ている。
「ナ、ナニモシテナイヨ」
「なんで棒読みなの怪しい」
優里奈が追及すると
「私は雫さんにシュノーケルの場所を教えていただけです」
今度は若菜が早瀬さんをじっと見ている。
「あっ、おれまだ水着着ていない。ちょっと行って来る」
サッとその場を後にした。もう一度玄関のアプローチに戻って来ると
女の子達は水着にラッシュガードを来た姿で、シートやクールバックにランチセットを持っていた。
「クールバッグ俺が持つよ」
「はいお願いします。飲み物とコップや保冷剤が入っています」
早瀬さんが俺にクールバッグを差し出した。持つと少し重い。
「では、行きましょうか」
「はーい」
花音が明るく答えたので何となく場が和んだ。
―――――
第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
岩場遊び次も続きます。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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