第31話 早瀬家の別荘 浜辺の遊び


 玄関のアプローチから門を抜け、車止めとは別の方向に歩くと舗装されていない道をほんの一分も歩かない内に浜辺に出た。


「「「海だーっ!」」」


早瀬さん以外が声を上げた。

 真っ青な青空、遠浅の透明感のある海、水平線がくっきりと見える。左に岩場が有って、いかにも楽しそうだ。


「凄いですね。これ皆早瀬家の所有なんですよね」

素直に思った事を言うと


「ふふっ、そうですよ。別荘はここだけではありません。山にも湖にもあります。他国にも別荘を持っています」

「へーっ、凄い。俺なんか想像できないな」

「いいえ、神城さんにはその立場になって頂きたいと思っています」

「えっ?」


「ちょ、ちょっと早瀬さん。とんでもない事言わないで。雫は譲らないわ」

「私もです。雫は譲りません」

「もう、その話、ここでは止めようよ」

「「「そうですね」」」


妹が俺の手をクイッと引っ張ると

「私がお兄ちゃんのお嫁さんになれば、三人共悩まなくてすむけど」

「「「それは駄目!」」」


「花音ちゃんは家族なんですから、雫さんと結婚出来ませんよ」

「あれ、今早瀬さん、雫の事名前で呼んだ」

若菜がえっ?ていう顔で言う。


「はい、私も皆さんと同じように神城さんを名前で呼ばないと花音ちゃんがいますので区別つかなくなりますから」

「それはそうだね」


早瀬さん、今回の事に紛れて雫を名前で呼ぶとは。まあ良いわ。私は二人と違う。



話をしている内に砂浜に来ていた。真っ白な砂浜だ。


「わーっ、早く海入ろう」

花音が走って水際に行こうとすると、俺は妹の手を掴んで

「駄目、軽く準備運動する」

「えーっ」

「入って痙攣起こしたら楽しくなくなるぞ」

「はーい」


 全員で簡単に準備運動を済ませると女の子達が浮輪を持って水際に走って行った。

凄い光景だ。大竹高校一学年の美少女三人が水着で目の前にいるんだから。まさか早瀬さんの水着姿を見れるとは思わなかった。


 膝位まで海に入ったところでキャッキャッしながら水かけして遊んでいる。中々の光景だ。


「お兄ちゃん早く来て。冷たくないよ」

「そうだよ雫、早く来なよ」

若菜も声を掛けて来た。


じゃあ、俺も行くか。


「あーっ、来た来た」


「うわーっ!」

四人でいきなり水を掛けて来た。


「こらあ!」

俺も必死に一人一人に水を掛けるが多勢に無勢、息が出来なくなる。こうなったら。

海側に走って一気に潜った。


「あれ、お兄ちゃんいなくなっちゃった」

「直ぐに出てくるでしょう」


一分経っても出てこない。

「早瀬さん、不味いんじゃない。潜った所に行ってみよう」

「はい」


 ふふふっ、爺さんの所で鍛えているんだ。四人が来た来た。浮輪着けているから大丈夫。


「きゃっ」

「えっ」

「わっ」

「あっ」


四人の足をすくってやった。少し離れたところで水の上に顔を出す。足はもう着いていない。

「こっちだよ」

「こら、待て」

若菜が浮輪で腕をかいて寄って来た。他の三人も近づいてくる。


立ち泳ぎで待っていると若菜がくっ付いて来た。

「えへへっ、雫見る」

若菜がいきなり水着の胸の所に手を入れて開けた。思い切り見えた。

「ば、ばか。何を」

「この前してくれなかったから。お返し。ふふふっ」


 もう、直ぐにまた潜った。いきなりするな。水の中から見ると他の三人も寄って来た。頭を上げると


「うわっ」


顔に水を掛けて来た。不利だ。今度は陸地に向って逃げた。普通にクロールで泳ぐ。少し泳いで振り返ると四人がまた追いかけて来る。


 そんな事をしていると

「皆さん、そろそろ上がりましょうか。水の中に入ってもう一時間経ちます」

「そうね」

「そうしましょう」


 水際に来て四人が浮輪を体から外すとなんとも言えない光景だ。目のやり場に困る。

 

 今度は砂遊び。何故か俺が埋められる役になった。

四人に一通り埋められると腕と足に一人ずつ乗っている。若菜が


「雫、顔以外は動かないよね。どうしようかな」

「そうですね。雫さんの顔を好きに出来ますね」

「お兄ちゃんの顔にキスしちゃおうか」

「やります」


「ちょ、ちょっと待った。待って」

「「「「駄目」」」」


「やめてーっ」

 腕と足に一人ずつ乗られたら流石に動けない。無理すると彼女達にけがをさせる事になる。なんとか避けないと…………。

間に合わなかった。


「ねえ、もう勘弁して。腕と足が痛い」

「ふふふっ、いいですよ」

早瀬さんがもう一度頬にキスをして来た。一度やると抵抗感がないらしい。


「あっ、ずるい」

今度は、若菜、優里奈、花音の順で両頬にキスをしている。


「お兄ちゃん、どうしたの顔が真っ赤だよ。日焼けしたの?」

「花音。もう許して」

「ふふっ、しかたないなあ。お姉ちゃん達、もうお兄ちゃん解放しようか」

「「「そうですね」」」


俺は体を砂から出すと砂まみれの体で海に逃げ込んだ。




その後は砂で色々な形のものを作って遊んだ。


「皆さん、そろそろ上がりましょうか。お夕飯の支度もしないといけないので」

「オーケー」

「あがりましょ」

「そうですね」


 他の三人が素直に応じた。少し疲れたのだろう。

 別荘の門をくぐると左にシャワー室が二つ付いている。そこで砂を落とす様だ。順番に浴びると


「皆さん、部屋で着替えたら、キッチンに集まって下さい。献立を考えて皆で作りましょう」

「オーケー」

「了解」

「分かりました」


 返事の仕方が三者三様なのが面白い。

早瀬さんは自分の家の別荘だけに段取りが慣れているみたいだ。皆が迷わなくて済む。


 その日は当日という事も有ってBBQは明日にして今日は定番のカレーに決まった。

 四人共女子力が高く手分けして作るようだ。


「俺何か出来るか」

「お兄ちゃんは何もしない事が一番の手伝いだよ」

「そうね、雫は料理出来ないし」

「良いんですよ。私達が作ります」

「雫、オープンデッキで海でも見ていれば」


「分かった」


 四人に言われたら俺がキッチンに居ずらい。まだ夕焼けだが陽はある。オープンデッキとやらに行ってみるか。


 キッチンからダイニングとリビングを横に見ながら廊下を抜けると海側にウッドデッキが有った。確かにBBQの機材が用意されていて、直ぐにでも使える様になっている。


 凄いなあ。爺ちゃんの所は火起こしから自分でやる必要が有るからな。あれはあれで面白いのだけど。


 リクライニングチェアに座って海を見ていると段々眠くなって来た。疲れが気持ちいい。




「お兄ちゃん起きて。カレー出来たよ」

「う、うーん。分かった」


 ダイニングに行くとテーブルに五人分のカレーが用意されていて他の人達は座っている。

 サラダや、箸休めもある。


「凄い。これ皆で作ったの?」

「そうですよ。雫さん、お代わりも有りますからお腹いっぱい食べで下さい」

「ありがとう」

「「「「「頂きます」」」」」


 この日は皆疲れていたのか。キッチンで片づけが終わった後、リビングで少し話をして解散になった。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


初日から大変な目?に会った雫ですが、楽しく初日は終わったようです。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  

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