第26話 雫お買い物に付き合う


 俺は美少女四人の後ろをただ付いて行く。仲良くペチャクチャと話しながら歩く姿は中々微笑ましいものがある。すれ違う人がチラ見しては隣の彼女に肘鉄を食らっているのが面白い。


 男性諸氏の気持ちは俺も良く分かる。確かに目立つ。後ろから見ても美少女と分かるのだから。


 後を付いたまま、歩いて行くと、この前早瀬さんと来たビルの中に入って行った。エスカレータで四階にたどり着く。


 はあ、右を見ても左を見ても女性用品ばかり。当たり前だ。ここは女性用品フロアなんだから。


 彼女達は早瀬さんを先頭にある場所(ショップ)へ向かう。はっきり言って付いて行きたくない。そう、女性用水着売り場だ。ここの他にも何か所かあるようだ。


「雫、ちょっとここで待っていて。目星がついたら声掛けるから」

若菜の言葉に中に入らなくていいんだとホッとしていると


「お兄ちゃん、ちょっと一緒に来て」

「へっ、いいよ。花音も自分の好きな奴を買って来れば。俺はここで待っているよ」

「だめ、一緒に来て」


手を握られて引っ張られる。仕方なく付いて行くと色々な形をしたカラフルな女性用水着が目の前に並んでいた。


「お兄ちゃん、花音にどれ着せたい。選んで」

「はっ?ムリムリ無理に決まってる。花音勘弁してくれ」

「じゃあ、私がいくつか選ぶからその中から選んでね。ちょっとここで待ってて」

「おい、ちょ、ちょっと」


ここで待つのかよ。ここなら針の筵のがいいよ。他の人達からの視線が痛い。


待つこと数分

「お兄ちゃん、この中から選んで」


白、オレンジ、赤、青色の水着、セパレート、ビキニ、胸にフリルが付いているもの、腰ひもが有るもの等、俺が選ぶには難題だ。


「花音はどれがいいの」

「お兄ちゃん選んで」

「えーっ、じゃあオレンジのセパレート」

「うーん、無難過ぎるよ。赤のビキニなんかどう。それとも試着室に来る」


 花音の言葉に鼻血が出そうになった。


「さすがに勘弁してくれ。もう花音の好きな方でいいよ」

「じゃあ、お兄ちゃんの言った方にするね」


妹がレジに行くのを見計らったように


「ねえ、花音ちゃんの選んであげれるなら私のも選んで」


後ろを見ると若菜が声を掛けて来た。彼女の後ろには早瀬さんと優里奈だ。


「神城さん、私のも」

「雫、私のも」


「へっ!」


 やっぱり来なきゃ良かった。それを知ったのが遅すぎた。

その後、鼻血が出るのを抑えながら彼女達に付き合わされた。周りの人達が何故か微笑ましい目になっている。


「ふふふっ、雫のお好みの水着が買えた。雫早く見たい?家で着てあげようか」

「いいよ。もう勘弁してくれ」


今日一日分の我慢を使い果たした感じがする。


「神城さん、お疲れの様なのでお茶でも飲んで休憩しましょうか」

「「「賛成」」」


何故か、俺以外の子達が賛成した。俺に拒否権は無い様だ。


「ここはどうですか。ローラアシュレは紅茶が美味しいですよ。もちろんパフェやケーキも有ります」

「「「良いですよ」」」

 

 六人座りのテーブルに案内されて好きな注文が終わると

「ねえ、夏休みのイベント考えようよ」

若菜が急に言い出した。出来れば俺抜きで考えて。


「イベントですか。良いですね」

早瀬さん同意した。もう嫌な予感が漂っている。


「プールか海か決めないとね」

若菜の言葉に


「皆さん、もし良かったらうちの別荘に行きませんか。海の側に有ってとても素敵です。夜にはバーベキューも出来ますよ」

「「「別荘、バーベキュー!!!」」」


「わっ、凄い。お兄ちゃん行こうよ」

「えっ」

「「行こう」」


花音の言葉に若菜と優里奈が賛成した。


「早瀬さん、良いんですか」

「良いから誘っているんです」


参ったな。そうだ。


「良太誘っても良いかな。聞かないと分からないけど」

「私は良いですけど。皆さんは」

「「「…………」」」


駄目なのかよ。


「分かった。でも爺ちゃんのとこ行かないと行きたいしというか行かないといけないし、そこは開けないと」


「そういう事でしたら時間を合せます。皆さんいかがですか」

「お兄ちゃん。爺ちゃんのとこ行くの? 花音も付いて行っていい」

「花音、行ってもつまらないだろう。何もする事無いし、遊ぶところないぞ」

「いいよ」


「雫、お爺様の所に行くの?」

若菜が聞いて来た。彼女には一度だけ爺ちゃんに合わせている。


「ああ、四月から行っていないから父さんから行って来いと言われた。爺ちゃんも来てくれと言っているって」


「爺ちゃん?」

早瀬さんが不思議そうな顔をしている。


「ああ、俺の爺さんだ。若い頃から武術に優れて総理大臣とか有名な企業や国際的なイベントの警護をしている会社も経営している。小さい頃から爺ちゃんと遊んでいて、俺も色々覚えたんだ」


「ふふっ、雫は師範代だものね」

今度は優里奈が笑っている。


「俺なんか爺ちゃんに比べればまだまだだよ」

「神城さん、お爺様って。神城綜合警備保障の神城総一郎様ですか?」

「そうだけど」


「何と。これも神様の思し召しです。お父様の会社早瀬産業の警備、各国の警備は神城綜合警備保障にお願いしています。ぜひお礼も兼ねてお爺様にご挨拶させて下さい。お父様も喜びます」

「はっ?」


早瀬さんが何かとんでもない事言い出したぞ。


「雫、早瀬さんと花音ちゃんが行くなら私も行きたい」

「雫、私も」


ちょっと待ってくれ。俺は一人を楽しむために行くんだ。なんでこうなる。


「いやいや、ちょっと待って。皆行くって言うけど山の中の何もないとこだぞ。夜なんか真っ暗で寝るしかない所だよ」


「「「寝るしかない!!!行く絶対行く」」」


俺なんか変なこと言った?!


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


雫の夏は暑そうです。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 

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