第24話 今度は期末テストの勉強会です。参ったな。


 平穏だった?六月も終わり、優里奈との約束も守り?(想像に任せます)七月がやって来た。

 じめじめした梅雨の時期。好きな人なんて絶対いないと自信を持って言えるこの時期はもう一つ嫌な事がある。そう一学期末テストだ。中間テストと違い、今回は幅広く出題される。


 今週も月曜から真面目に登校する俺。後ろにはいつもの三人が歩いている。周りからの視線にも慣れた、いや慣れていない。逃げてもどうせ学校で会うから仕方なく歩く。


 いかにも一人ですよ風に歩いているとやっと下駄箱まで着いた。そそくさと上履きに履き替えてサッと教室へって訳には行かず、既に目の前には三人が立っていた。

はあーっ。


「雫、おはよう。朝から憂鬱な顔しているな」

「ああ、おはよ良太。憂鬱になるよ。来週から期末テストだぜ」

「でもそれ終われば夏休みだ。一気に乗り切ろうぜ」


「そうですよ。神城さん今回も勉強会しましょうね」

「雫俺用事が…………」


逃げようとした良太の腕をがっちりホールドして

「良太。俺達親友だよな」

「あ、ああ」

「じゃあ、今回も一緒だぜ。親友はいつも一緒だ」

「そうです。川平さん。今回も一緒に勉強会しましょう」

「は、はい」


東条さんが近づいて来た。


「雫、今回は私ともしようよ」

「う、うん」

「いけないの」

「い、いやそんな事無い。分かった一緒にしよう」

「東条さん、私達と一緒でどうですか」

「でも、早瀬さんと下坂さんがいるのでしょう。私も居ては多すぎるのでは」


「雫、学年一、二、三の成績の人達が一緒って凄いな。お前、今度は十位以内でないと不味いぞ」

「えっ、それは不味い。優里奈とは別で」

「神城さん、それをするなら私とも個別で勉強会しましょう」

「そうだよ。雫私とも個別でしようか」


「そうだ雫。俺は良いから皆さんと個別でやれば」

「だめ!」

腕のホールドを解かずにしっかりと良太に言ってやった。


 結局、平日は図書室で、週末は今回も俺の家のリビングでする事になった。

図書室では、復習を優先でしようという事になった。


 教科書に載っている問題や抜き打ちで行われたテストをもう一度やり直すのだが、一緒に居ると同じ人間かと思うようなスピードでシャーペンが動いている。良太も同じだ。


「雫、どうしたの。ペンが進んでいなよ」

「いや、ここで詰まってしまって」

「早く言いなさい。どれ教えてあげる」

若菜が優しく言うと


「神城さん次は私が教えますね。分からなかったら考えずに直ぐに言って下さい」

「雫、その次は私ね」

「…………」


 周りの人たちが驚いた目で俺達を見ている。

 学年成績トップスリーの美少女が三人も揃って勉強しているんだ。何事かと思うだろう。俺は肩身が狭い。


 テストが近くなると図書室の利用者が増えるが、勉強会を始めた火曜日はそうでもなかった。


 だが平日最後の今日金曜日は異常だ。今は満席に近い。図書委員が目を丸くしている。皆勉強もそっちのけでこちらを見ている人が多い。


 諸君理由は分かるがここは図書館だ。勉強しましょう。



 そして、土曜日。東条さん、早瀬さんと良太は三人で来た。集合は十時だ。


「おば様、お邪魔します」

「いらっしゃい。早瀬さん」


「お久しぶりです。おば様」

「えっ、あなた東条さん。もしかして雫と元に戻ったの」

母さんが俺と優里奈の顔を交互に見る。


「はい、でも友達からです」

「そう良かったわね。いつもながら綺麗ね」

「ありがとうございます」


「おばさん、お邪魔します」

「いらっしゃい。川平君。さっ、みんな上がって。若菜ちゃんはもう来ているわよ」


三人をリビングに通すと母さんが余計な事を口走った。


「雫、こんなに綺麗なお嬢様達が来てくれるなんて。どなたが本命なの」

「「「私です」」」


「母さん。要らぬこと言わないの。もう」

「あらごめんなさい。ほほほっ」


 言うだけ言うとキッチンへ行った。全く、わざと言いやがって。静かな池に石投げてどうするんだよ。


「皆、今の母さんの言葉忘れて。冗談好きだから」

「「「冗談なの?」」」

「へっ?!」



良太視点

 雫の奴、モテるのは良いけど。しかし確かに凄いよな。学年成績トップスリーで学年一の美少女達が集まっているんだから。


 俺も告白されるが、レベルが違い過ぎる。それに俺には上辺だけで女の子は近づいてくるが、この子たちは雫の内面を知って好きになっているのだからな。


 羨ましいけど、俺は一人で良いんだが。でも下坂さん全く振り向くどころか、早瀬さんと東条さんの出現で益々雫に夢中になっている。仕方ないけど。


 雫ほんとお前凄いよ。しかし、最終的に誰を選ぶか親友として楽しみにしているぜ。この三年間飽きない時間を過ごせそうだ。ありがとな。


 さて、せっかく来たんだ俺も自身のレベルを上げるか。今度は十位以内に入りたいものだ。


 少しするとおばさんがお茶菓子と紅茶を持ってやって来た。ありがとうございます。


「皆さん、ごゆっくりね。雫にしっかり勉強教えてあげてね」

「「「はい」」」


「ふふふっ、雫頑張ってね」


 手をひらひらさせながらリビングを出て行った。いつものおばさん調子だな。さて俺も頑張るか。



―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


良太の言う通りですね。私も羨ましいです。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 

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