第23話 花壇のお世話


 先週の土曜日、若菜が俺のベッドで一緒に寝てから(何もしてないです)二週間が経った。


 俺の待っていた時期がやって来た。夏服になった。長袖シャツに上着という、サウナ状態から解放されたのだ。


 男子は半袖シャツにネクタイ。でも首までしっかり締付けなくても良い事になっている。女子も半袖シャツと首元にはリボン。


それはそれで良いのだが、冬服よりしっかりと強調される部分があるので、目のやり場に困る事が有る。

隣を歩く幼馴染もしっかりとある方だ。横に並んで歩いているとはっきりと分かる。


「雫、何処見てるの」

「えっ、別に」

「私の胸見てたでしょう。エッチ。見たいならいつでもいいのよ。この前だって……」


「分かった。若菜。見てました。俺が悪かった。でも可愛いなと思ってさ」

「もう、そんな事言うんだから」

何故か顔を赤くして下を向いている。いつも言っているはずなんだけど?


学校のある駅に着くと改札を出た所で早瀬さんと東条さんが……あれ東条さんがいない。


「おはよう神城さん、下坂さん」

「「おはよう早瀬さん」」


「東条さんがいないようだけど」

「東条さんは用事があるって言って先に行ったわ」

「そう」


教室に着いても東条さんの姿は無かった。

「いないですね。東条さん」

「うん」


 その内、朝練が終わったのか良太が席に戻って来た。

「おはよ雫」

「おはよ良太。なあ東条さん知らないか」

「俺が知っている訳……。あっ、朝早く見かけたことは見かけたけど。何処に行ったかは分からないな」

「そうか」


 予鈴が鳴った時、東条さんが教室に入って来た。えっ、スカートの裾に土が付いている。何か有ったのかな。


願力先生がいつもの様に教室に入って来たが、今日は何も無いと言って出て行ってしまった。ちょっと気になるので東条さんの側に行って声を掛けた。


「東条さん、スカートの裾に土が付いている。何か有ったの」

「何もないわ。最近、花壇の花が枯れてたり、草が多く生えているようだから、朝世話していたの。その時付いたのだと思う」


彼女は立ち上がって自分のスカートの裾を見て土が付いているのを見つけるとそれをティッシュでふき取った。


「これで大丈夫よ。ありがとう雫。ねえ、今日の放課後、校門の側の花壇もしたのだけど一緒にしてくれる」

「うん、良いよ。文芸部だから当り前だよ」

「ありがとう、じゃあ放課後ね」



「ねえ、聞いた。神城君優しいね。東条さんも嬉しそう」

「うん、神城君最近輝いて見えるよ。でもあの三人には敵わないし」

「そうだよね」


こら、女子達聞こえているぞ。俺はLEDじゃないぞ。ちらりと早瀬さんを見ると何故か笑顔を返して来た。何故だろう。



 放課後になって、皆帰り支度をしていると東条さんが近づいて来た。

「雫、行こうか。小屋で道具を取ってから行こう」

「うん」


 神城君と東条さんが仲良く教室を出て行った。私も手伝いたかったけど今日は図書室の当番。残念だけど仕方ない。

下坂さんが入って来た。


「雫。あれいない。早瀬さん雫知らない」

「神城さんは東条さんと花壇のお世話をするそうです」

「えっ、朝何も言ってなかったのに」


直ぐに出て行った。


「優里奈、ジョーロとシャベル。それにハサミとバケツで良いよな?」

「ふふっ、二人だけの時は名前で呼んでくれるのね」

「いけないか」

「ううん、とても嬉しい。うん、それでいいです。行きましょう」


 雫と二人で小屋を出て校門に向おうとした時、

「あっ、居た。雫何するの」

「えっ、今から花壇の世話だけど」

「私も手伝っていい?」


「俺は良いけど。東条さんどうする」

「下坂さん、文芸部の仕事です。お手伝いしてくれる気持ちはありがたいですが、雫と私でやります」

「えーっ、手伝うって言っているのに」

「知らない人にお手伝いして頂いて花を傷めてはいけませんので」

 俺も知らないけど。


「そう、分かったわ。じゃあ雫先帰るね」

「ああ」

若菜の奴、大分不機嫌な顔をしている。


 良かった。せっかく雫と放課後二人きりなれる所を邪魔される所だった。ふふっ、花壇の世話は理由だもの。


「雫、先に草むしりからしましょう。草は強引に抜くと根が取れないから、根本からゆっくりと抜いて下さい。私はこちらの花壇をやりますので雫はそっちの花壇をお願いします」

「分かった」



「大体終わったよ」

「それでは次に弱った花や枯れた花をこのハサミで花の根元から切って下さい。後、枯れた葉も一緒にお願いします」

「分かった」



 結構時間が掛かるものだな。取った草や枯れた花を小屋の側にあるごみ置き場に捨てると小屋の側にある蛇口でハサミとバケツを洗ってしまった。


「優里奈、終わったよ。帰るか」

「はい。ねえ雫、二人になるの久しぶりだからちょっと寄って行かない」

「何処へ?」

「ファミレスでもカラオケでも、雫の行きたいとこでもいいよ」


二人でか、そう言えば最近誰かと二人で放課後寄り道するなんて無かったな。ちょっと良太の様子も見たかったんだけど。


「いいけど、その前に良太の様子見に行ってもいい」

「良いよ。そう言えば雫、中学時代テニス部だったものね」

「ああ、あれは若菜に付き合わされただけ」

「そうなんだ」

「爺さんのとこに行くから途中で抜け出す事も多かったし、気を入れてやってなかったから」

「そうですね。でもそのおかげで雫に助けて貰った。……ねえ、雫行かない?」

「えっ」


優里奈が俺の側に寄って来て体をぴったりと付けている。ネクタイを遊びながら

「雫、あの時から忘れられないの。もう一度抱いて」

「でも…………」

 

なんで俺は断らないんだ。若菜にははっきり断っているのに。でも今は不味いよな。


「優里奈、行っても良いけど今度にしない。今日はちょっと」

「今度っていつ。雫はそうやって誤魔化してしまう。はっきりして」


 完全に体が密着している。優里奈もはっきりと分かるんだよな。…………。思い出しちゃだめだ。


「ふふふっ、雫あの時の事を思い出したの。顔に書いてあるわよ。日にちを決めて」

「うっ。じゃあ…………」


 その後、俺は良太のテニスの練習を見に行った。長身を生かした綺麗なサーブ、フットワークで前後左右に機敏に動いている。調子良さそうだ。


 ネットの側で見ていると俺に気付いたのか

「おう、雫じゃないか。少しやってみるか」

「いや遠慮しておくよ。俺は良太みたいに上手くないからな」

「そんなことないだろう。中学の時だって三年間一緒にやったじゃないか」


「川平どうした」

「あっ、部長。こいつが神城雫です」

「あーっ、噂の強者か」

「部長、こいつも中学時代俺と一緒に三年間テニスやっていたんですよ」

「良太、余分な事言うな」

「ほう、そうか。やってみないか。テニスは面白いぞ」

「い、いや結構です。良太またな」


全く良太の奴、余計な事言いやがって。でも楽しそうだったな。

俺はその足で教室に戻り鞄を取って帰ろうとすると


「雫、待っていたわ。一緒に帰ろ」

「優里奈、待っていたのか」

「うん」


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


うーん、雫と東条さん。今後どうなることやら。でも若菜と早瀬さんもいるけど。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 

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