第21話 雫の気持ち


 俺は、若菜と学校の最寄りの駅に着き改札を出ると当然の如く早瀬さんと東条さんが待っていた。

早速俺はダッシュを…………。捕まっていた。

若菜が強引に俺の腕に絡んで来た。


「若菜、何を」

「別にこうしたいだけよ」

俺がこの三人から逃げようとするのを若菜に止められ仕方なく二人に近付いた。


「神城さん、下坂さんおはようございます」

「雫、下坂さんおはよう」

「おはよう早瀬さん、東条さん」


「下坂さん、昨日の約束ね」

「分かったわ」

約束ってなんだ?


何故か若菜が腕から離れて早瀬さんが俺の隣にやって来た。

「神城さん、さあ行きましょう」

「あ、ああ」


若菜と東条さんは俺達の後ろを仲良く歩いている。どうなってんだ。


「神城さん、今日は水やりの無いお昼休憩です。昼食を食べた後、私達三人で考えた事を神城さんに説明したいのですが聞いて頂けますか」

「いいけど、考えって何?」

「それはその時に」

「…………」


 学校に着くと下駄箱で一度別れた後、俺を待っていたのは早瀬さんだけだった。

あれっおかしいと思ったが、昨日の事が再現されないならまだいいと思い、そのまま二人で教室へ。


早瀬さんは自分の席へ、俺も自分の席に行き鞄から教科書を取り出していると

「おはよ雫」

「おはよ良太」


「今日は静かだな。昨日の様な事は無いのか」

「俺が知るか。平和なのが一番だ」

「雫からすればそうだな。でも見る方からするとつまらないがな」


「お前なあ、親友を見世物の様に言うのか」

「いや、親友だからこそ、お前の恋路を応援しているんだ」

「何処がだよ」

でも、確かに東条さんも早瀬さんも近寄ってこない。何か有ったのかな。俺には良い事だが。


ガラガラガラと音を立てて願力先生が入って来た。


「今日は中間テストの残り分と総合結果が張り出される。昨日言った通りだ。自分の順位を見てこれからの勉強に励む様に」


それだけ言うと教室を出て行ってしまった。


 午前中の授業で残り三教科の結果が帰って来たが、まずまずの結果だった。これも勉強会を開いたおかげか。効果あるもんだな。期末から考えて見るか。


 そして昼休み、俺は美少女三人に囲まれてお弁当を食べていた。今日は若菜のお弁当だ。

「雫、どうこの卵焼き、出汁から作ったんだ」

「うんとても美味しいよ」

実際相当に美味しい。出汁から作ったのであれば結構手間がかかっているだろう。若菜ありがとうな。


「他のおかずも感想聞かせて」

「うん分かった。食べ終わってからでいい」

「うんいいよ。少しでも雫に美味しく食べて貰う為の参考にするから」

「ありがとう」


 うーっ、下坂さん、何かいつもと違うな。確かにお弁当の中身までは何も約束していないけどあの露骨なアピールは気に入らない。明日は水やりで東条さんの番。

悔しい。早く私も同じことしたい。


皆が食べ終わると

「神城さん、朝の件ですが教室では話せないので花壇のあるベンチに行きませんか」

「いいよ」


 神城さんと私達三人は校舎裏の花壇の側にあるベンチに行った。ベンチは三人掛けなので仕方なく彼だけ座って貰う事にした。


「ねえ、空いているよ。それに目の前に三人立たれると、ちょっと圧迫感あり過ぎ。何か俺が悪い事でもしたみたいなんだけど」


「お気持ちは嬉しいですが、三人だと一人座れなくなるのでこのまま立っています」

「そ、そうですか」

「下坂さん、東条さん。私が説明するという事で良いですか」

「「いいわよ」」

 私は、昨日の放課後三人で話した結果を神城さんに説明した。


「いかがでしょう。神城さんが良ければこの方法で行きたいんですけど」


「…………。あのどうしてもそれするの」


「嫌ですか」

「嫌というか、それだと毎日入れ替わり女の子を変えているみたいで周りの目が怖い。もっと俺が平穏に過ごせる方法が良いんだけど」


「神城さん、何か良いアイデアあります」

「あるよ。誰も俺に近付かない事」


「「「それは駄目!」」」


「じゃあ、俺が嫌な時はそれをしない事」

「「「えっ?!」」」


「雫、それってあなたが私達を選択するって事?!」


「いやいや。若菜そんな事俺には出来ないよ。でも今の説明だと俺の自由が全然ない。良太や他の友達とも遊びたいし話もしたい。俺は高校生活を自由に生きたいんだ。拘束なんかされたくない!」

最後は少し口調がきつくなってしまった。悪かったかな。


「「「…………っ!」」」


 確かにそうだわ。私達は自分達の都合ばかり考えて雫の立場からの事なんて全然考えていなかった。三人共嫌われてしまう事だってあり得る。


「ねえ雫。私達は、雫を拘束したいとか思っていない。でも雫と少しでも一緒に居ただけなの。今まで通り一緒に居たい」

「若菜はいつも通りで良いじゃないか。急に変な計画立てなくても」


「神城さん、それでは下坂さんだけになってしまいます。私も貴方と一緒にいたい。お願い」

「雫。私も貴方と一緒に居たい」


「一緒にいるのはいいよ。でもさっきみたいに俺の時間が無くなる様な計画は立てないで。俺もう行くから」

三人には悪いがとても付き合っていられない。何考えているんだ。


「不味いわね。結果的には神城さんを怒らせただけになってしまったわ」

「そうね」

「どうします。再度立てなのしますか」

「それはだめでしょう。今まで通りで様子見ましょう」

「今まで通り?」

「そう、お弁当を作って来るのだけは許してくれるみたいだし」

「「そうしましょう」」




 俺は、あの三人と別れた後、廊下の掲示板に張り出された中間テストの順位表を見ていた。

東条優里奈 一位 四百八十五点 

早瀬真理香 二位 四百七十八点

下坂若菜  三位 四百七十五点

川平良太 二十位 四百三十点

神城雫  三十位 三百九十八点


 驚いた。若菜と優里奈は知っているけど早瀬さん頭いいんだ。良太も凄いけど一番驚いたのは俺が三十位に入っている事だ。

中学までは精々中の上。二百十人いる中でこの成績は悪くない。母さん喜ぶかな。


 この成績はあの子達が教えてくれたからだ。自由は欲しいけどあの人達だって俺の事を思って言ってくれている。もう少し相手した方が良いのかな。でもなあ。



―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


女の子達の考えを拒絶した雫。でもテスト結果を見て少し心が緩みます。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 

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