第20話 美少女達の約束


 私早瀬真理香は今学校の近くのファミレスの個室に居る。目の前には神城さんの幼馴染であり学年で人気の高い美少女下坂若菜さん、そしてその美貌とクールさから氷の美少女と言われている東条優里奈さんの二人が座っている。

 テーブルに置かれたグラスに入った氷が解けてカランと音がした。


「下坂さん、東条さん。お二人とも黙っていても話は進みません。三人の思いも分からないまま見つめ合っていても仕方ありません」

まず二人から言葉を引き出さないと。


「早瀬さんに何か良い案でもあるの。私は雫と生まれた時から一緒に育ってきたのよ。生まれた日も生まれた病院も幼稚園も小学校も中学校も高校も一緒だわ。この後も雫とずっと一緒。これは運命よ。誰にも邪魔されたくない」

全く、雫がはっきりしてくれていれば、こんな事になっていないのに。


「下坂さん、あなたはそう言うけど、中学校の時、雫は私と恋人同士になったのよ。相思相愛よ。一時期は離れてしまったけど、今は彼とまた一緒に居る事が出来る。これから雫と一緒に居る事が出来るのは私だわ」

この人達に雫を取られる訳にはいかない。


「そんな事一時の迷いよ」


「一時に迷いと言うけど下坂さんは雫から告白された事あるの。私は雫から好きとはっきり言われたわ」


「お二人とそんなに興奮されなくても」


「「早瀬さんはどうなんですか」」


「わ、私は、今の神城さんがいなければ、ここに座っていなかったかもしれません。中学の時、彼は私を暴漢から助けてくれました。その後お礼をしようと探しましたが、見つからなかった。でも高校で同じクラスになった。これは神様が私と神城さんを結ばせる為のお導きと思っています。私の全ては彼に捧げるつもりです。これからは私こそが彼の側に居る人になります」

神城さんを譲るものですか。彼は私の大切な人。


「雫は困った人がいれば必ず助ける人よ。助けられたのは早瀬さんだけじゃないわ」

そんな事理由にしないでよ。


「いえ、高校で神様が引き合わせてくれたのです。神城さんは私の運命の人です」

ここで引き下がる訳にはいかないわ。


「下坂さんも早瀬さんも雫の事を一方的に言っているけど、彼から心を開いてくれた事あるの。体も含めて」


「そんな事。私は生まれた時から小学校までずっと雫とはお風呂一緒に入っていたわ」


「ふふっ、下坂さん意味が違うわ」


「「えっ、それって」」


「そうよ。お二人の想像通りよ。彼と付き合っていた時よ」

これでどう。貴方達は雫と関係を持ったことないでしょう。


「そんなの気の迷いよ。私だって雫が望むならいつでもいいわ」

ちょっと恥ずかしいけど、引く訳にはいかない。


「私もです。彼が望むならいつでも。私の全ては彼の物です。早いか遅いかだけの話です。そんな事なんの優位にもなりません」

私はいつでも待っているわ。一回位論外よ。


……………………。




「埒があきませんね。それに神城さんは、今この三人の誰とも積極的お付き合いするという気持ちも無いようです」

「だから、彼を振り向かせるのよ。私に」

「私もよ」


「仕方ありませんね。今彼に無理矢理迫っても駄目でしょう。そこで約束事を決めませんか」


「「約束事?」」


「そうです。登校の時、昼食の時、下校の時です。登校時、下坂さんは神城さんと自宅から学校ある最寄りの駅まで二人きりで居られますでしょう。ですから駅に着いたら東条さんと私に譲って下さい」


「冗談じゃないわ。駅に着いたら雫と別れるなんて出来る訳無いじゃない」

「別れろとは言っていません。並んで歩かない様にして頂きたいのです。東条さんと私が交代で横に並びます」

「それって早瀬さんが雫の横に居る時は、私は後ろに居てもいいのよね」


「そうです。次に昼食の時ですが、週に二回有る水やりの時、東条さんは神城さんと一緒に居れます。神城さんも簡単な食べ物が良いと言っています。これは東条さんにお任せします。その代わり他の三日は私と下坂さんで交代でお弁当を作ります」


「それでは、休日が有った時、誰かが少なくなるわ」

「それは仕方ない事だと思って下さい。そして下校時ですが、私は図書委員の為、毎日直ぐに下校できません。月、水が私の当番です。火曜と木曜、金曜のいずれか二日は一緒に彼と帰りたいです」

此処はリードしないと。


「ちょっと待ってよ。私も生徒会の仕事があるわ。結構忙しいし不規則よ。私が生徒会の仕事ない時は私を優先して」

ふざけないでよ。私だって譲れないわ。


「何好きな事言っているの。私は数学クラブよ。学校が決めた部活日以外は雫と一緒に帰れる。二人の都合を聞いていたら私が一緒に帰れる日が無くなるわ」

絶対二人には譲らない。


「では、毎週月曜日の昼食の時、下校時誰が一緒になるか決めましょうか」



「早瀬さんも東条さんもちょっと待ってよ。私達が勝手に決めても雫が了解するか分からないじゃない。雫に説明してからでないと決められない」


「では彼の都合の良い日に聞きましょう。多分明日でも良いはずですから」




 朝、例によって若菜が俺の家に迎えに来た。少し早かったので上がって貰う事にした。


「若菜。まだ準備出来て無いからちょっと待ってくれ」

「うん」

私はわざといつもより早めに来た。目的はおばさんの攻略だ。私はダイニングテーブルの椅子に座った。


「あら若菜ちゃん、おはよう。雫を迎えに来たの?」

「はい、毎日雫と一緒に登校します」

「まあ、若菜ちゃんったら。雫の事宜しくね」

「はい、雫とはいつまでも一緒に居るつもりです」


「あらーっ、雫、若菜ちゃんから言われいるわよ。しっかり受け止めなさい。お前にはもったいない位のいい子なんだから」


俺が学校に行く準備をしている間に何か盛りがっていたようだ。


「若菜、行こうか」

「若菜ちゃん、雫行ってらっしゃい」

「はーい」

ふふっ、これでいい。あの二人には出来ない私の特権よ。後あれも早めに進めないと。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


さて三人の計画上手くいきますか。どうかな。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 

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