第19話 神城雫の災難


 俺は、三人と登校しない様に一人で校門まで走って来た。まだ五月だが、六百メートル走るのはきつかった。


 何とか下駄箱で履き替えると教室に入った。朝練はまだ再開されていないのか良太が俺の所に寄って来て小声で話し始めた。


「雫、お前昨日の放課後派手にやったみたいだな」

「何の事?」

知らない振りをする。


「もうみんな知っているぜ。二年の問題児三人を片付けたらしいじゃないか。これから大変だぞ。あの三人に嫌な思いさせられていた生徒多いらしいからな。後あの三人は取敢えず処分が決まる迄自宅謹慎だそうだ」


「そうなのか。お前耳早いな」

「そりゃなあ。クラブの先輩や仲間もいれば、他のクラスに知り合いもいるからな」


良太の話を聞いて益々気が重くなって来た。


 良太と話をしていると早瀬さんと東条さんが教室に入って来た。二人共鞄を自分の机の上に置くと俺の側にやって来る。


「神城さんおはようございます」

「雫おはよう」


「えっ、ねえ聞いた、聞いた。東条さん神城さんの事名前で読んだわよ」

「「聞いた。どう言う事」」


やばい。こっちにも聞こえているぞ。女子諸君。


「ああ、おはよう早瀬さん、東条さん」

「雫、もう名前で呼んで」

「い、いや東条さん、朝から何を」

「私、もう我慢しない。雫今日から私もお昼一緒に食べる」


「「「「えっ、えええええーーー」」」」



「神城の奴、昨日の噂は本当だったのか。あの三人を一分も掛からずにぶちのめしたんだと」

「本当かよ」

「そうらしい。俺も聞いた。他のクラスでもこの話で朝は持ちきりだ」

「敵わねえな」

「強者は美女を従えるって諺も有る」

「そりゃ違う。強者は色を好むだろ」

「じゃあ、神城は、もうあの二人を!」


「「「「「えっ、ええええええーーーーー!」」」」」


朝から俺はどうすればいいんだ。


朝の予鈴が鳴って西泉願力先生が入って来た。最近先生救いの女神様に見えますよ。


「皆、今日は中間テスト総合結果もでる。自分の順位を確認してより一層勉強に励む様に。それとだ。これは部活連絡だ。文芸部に入っている人間は運動部に入ってもいいと今日の職員会議で決まった」

 そんないい加減でいいのかよ。


「そこでだ。神城。剣道部、合気道部、空手部の顧問と柔道部の俺だが、個別に話をしたいそうだ。放課後順次声が掛かると思うから。俺の所は良いぞ。では朝のHRはここまでだ」


俺は、机に顔をぶつけた。先生さっきの女神様発言撤回します。


そして一限目が終わり中休み。



「神城雫はいるか。東条さん、神城は」


 東条さんが俺を指さす。ササっと近づく。頭が思い切り良さそうな眼鏡を掛けた男子生徒と女子生徒が寄って来た。



「君が神城雫か」

「はい」


「僕は、神林英明(かんばやしひであき)。この高校の生徒会長だ。隣にいるのが聰明奏(そうめいかなで)。生徒会副会長だ。時間が無いので簡単に言う。君を生徒会に入れたい。どうだ来てくれないか」

「い、いやいや。それは」

「雫、私からもお願い。入って」

「東条さん」

そう言えば東条さん生徒会だった。


「生徒会長、いきなりでは神城さんも驚きます。彼の気持ちを優先して下さい」

「君は?」

「早瀬真理香です」

「君が早瀬君か。覚えておこう。休み時間ももうない様だ。考えておいてくれ。また来る」


二人が出て行った。俺はまたまた机の上に顔をぶつけた。どうなるんだ。



「雫、言っただろう。覚悟しろ。こんなもんじゃ済まないぞ。お前は、この学校の掃除をしてくれたんだからな」

東条さんを助けただけなのに。


 二限目後の中休みも空手部と合気道部の部長二人がやって来て、二股掛けても良いから入部してくれと言う。参った。


 そして昼休み。今日は水やりが無い。

「雫お昼食べよ」

「神城さん、お昼食べましょう」

「雫、私も一緒に食べさせて」


「りょーたあー。一緒に昼…………」

こっちも見ずに出て行きやがって覚えてろ。


「下坂さん、早瀬さん。お弁当を作る順番に私も入れて下さい」

「東条さん、今日の放課後話しましょう」

「そうですね」



そして午後の授業も終わり、帰る準備をしていると

「雫、今日は一人で帰って」

「神城さん、ごめんなさい。今日は用事が有って」

「雫、明日から一緒に帰ろうね」


あっという間に三人が俺の前から消えた。

こ、これって一人で帰れるって事。やったぜ。良太は部活だから仕方ないけど。一人でゲーセンでも行くか。久しぶりに。

 頬を緩ませながら教室を出ようとすると


ガラガラガラ。

前のドアが開き


「神城、朝言った通りだ。今から運動部の顧問と面談だ。職員室へ来てくれ」

「…………」


 それから四人の顧問と二十分ずつ、入部すると良い事一杯の話ばかりを聞かされていた。


 解放されたのは五時半。もちろん全部断ったけど。でも先生全員曰く、いつでも遊びに来いとオマケ付だった。



―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


雫の穏やかな高校生活が崩れ落ちたようです。

そう言えば、あの美少女三人何話しているのかな。次回ですね。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 

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