第18話 中間テストと東条さんの危機


 俺は日曜日の勉強会もこなし、月曜と火曜に行われる中間テストに臨んだ。今回は若菜と早瀬さんのおかげで準備が良かったのか、結構自身のある回答が出来た。多分それなりの結果だろう。


 二日間のテストが終わった翌日の昼休み。俺は東条さんと花壇に水やりをしていた。


「雫、お願いがあるの」

「なに」

「今日の午後、体育館の裏に呼ばれていて」

「告白か、東条さんはモテるからな」

「でも私は雫だけよ。そういう事じゃなくて!

今回何か嫌な感じがするの。何かこう行くと良くないという感じ。だから雫、一緒について来て」

「い、いやいやそれは無理でしょう」

「一緒でなくていい。体育館の陰から見ていて。お願い」

「そんな事ならいいよ。行く時なにか合図して」

「両手をあげてあくびする振りをする」

「分かった」




 放課後、東条さんはまだ教室を出ていない。彼女に注意しながらテスト結果を見ていた。

 今日から中間テストが授業毎に帰って来ている。総合順位は明日の午後決まる。帰って来た点数を見て頬が緩む。

「雫、どうだった」

「ふふっ、まずまずだ」

と言って既に帰って来た数学と国語の点数を良太に見せた。それぞれ七十五点と八十点だ。


「へーっ、凄いじゃないか。俺はこれだ」

数学八十点、国語八十二点。

「良太凄いな」


二人で話していると早瀬さんがやって来た。俺は点数を見せると

「勉強会した甲斐が有りましたね。良かったです。私はこれ」

数学九十五点、国語九十八点。


「はっ、へっ」声にならない声を出してしまった。何か次元が違う物を見ている様な。

「神城さん、明日は残りも帰ってきます。楽しみですね」

「…………」



ちらりと東条さんを見ると両手をあげてあくびの真似をしている。そろそろか。


「早瀬さん、ちょっと今日用事があるから先に帰って下さい」

「そうですか。それではそうします」

そうはいきません。


 怪訝そうな顔をしていたが、俺はそれを無視して東条さんの後をつけた。やはり言っていた通り体育館の裏だ。

 俺は体育館の陰でそっと覗いていると三人の男が東条さんを囲む様にして立っている。良くないなあれは。


「東条さん、俺と付き合ってよ」

「お断りします。名前も言わずそのような事を言う人と付き合う事はしません」

「おっと、それは失礼。俺は二年D組の村上克也って言うんだ。これでいいだろ。付き合えよ」


 東条さんの顔の横の壁に手をついて顔を近づけている。

「お断りします。離れて下さい」

「いいね。おい村上やっちまおうぜ。ビデオ取ればこの女も文句言わないだろ」


 ありゃ、これは良くないパターン。仕方ないか。


「おい、嫌がっているじゃないか。止めろよ」


「なんだと、てめえ一年生じゃねえか。上級生に向かってなんだその口の利き方は」

「それは失礼しました。その人が嫌がっている様なので止めて頂けますか」

「この野郎舐めているのか」


 東条さんに顔を近づけていた男が俺に向かって殴りかかって来た。何と無防備な。

殴って来た腕を軽くいなすとそのまま後ろ回し蹴りで腰を思い切り蹴ってやった。顔が地面に突っ込んでいる。


 今度は二人目が殴りかかって来た。こいつはせっかくだから殴りつけて来た腕をそのまま流すとあばら骨に思い切り半回転しながら肘鉄を食らわせた。なんか嫌な音したけど。


 三人目は逃げればいいものを性懲りもなく殴りかかって来たので、向こうからの動きに合わせて掌底を顎に食らわせた。痛そう。


「先輩達、まだやりますか。貴方達では無理だと思うのですけど」

「くそっ、同時に殴りかかるぞ」


 三人同時と思ったが、二人目があばら骨を押さえている。かかって来た二人にそのまま鳩尾に蹴りを入れてやった。悶絶している。


「ふう、どうしようかなこの三人」


いきなり、東条さんが思い切り抱き着いて来た。

「怖かった。雫ありがとう」


 ダダダダダッ。ダダダダダッ。


「雫大丈夫。先生呼んでいるから」

「あちゃー。雫、手を抜いてあげたの?」


「手は抜いている。本気でやったらこの人達、息していないよ」


「おい、お前達大丈夫か」

先生と生徒会の人達まで来ている。


「東条さん、もう良いでしょ。雫から離れてよ」

「でも」

「だめ、雫も東条さん離しなさいよ」

「い、いや俺掴んでいないし」


 この後、三人は更に後から駆け付けた体育会系の先生達に連れられて行った。俺と東条さんも事情を聴かれたが、東条さんが理由を説明してくれたので無罪放免になった。


 しかし、先生達に目立ちすぎてしまった。これから不味いだろうな。静かな高校生デビューしたと思ったのに。


「雫、今日は本当にありがとう。なんて言っていいか分からない。いつでもいいのよ。今度誘ってもいい」

「あっ、ああそのうちに」


「雫、今東条さんの言った事どう言う意味」

「私も知りたいです」

若菜が凄い目つきで俺を見ている。なんか早瀬さんも怖い。


「い、いや、東条さんはお礼を言いたかっただけだと思うのだけど」

「そうです!」


「「怪しい」」


 結局、何故か美少女三人と一緒に駅まで行く事になった。だいぶ下校の生徒は少なくなったとはいえ、凄い注目されている。


 当たり前だ。美少女三人連れて、いや連れられて歩いているんだ。明日が怖い。その前に若菜対策しないと。二人になったら絶対聞かれる。




 翌日、また若菜は家からそして高校のある最寄りの駅には早瀬さん…………


だけでなかった。東条さんもいる。不味い。


「若菜、俺ちょっと用事思い出した。先行く」

「あ、ちょっと」


 冗談じゃない。朝からあの三人連れて登校できるか。




「行ってしまいましたね」早瀬さん曰く。

「そうですね」東条さん曰く。

「私達も行きますか」若菜曰く。



 このままでは、早瀬さんと東条さんに雫を奪われてしまう可能性が出て来た。

昨日の東条さんと雫を見ていると因りを戻したようだし。これは早く手を打たないと。


「早瀬さん、東条さん、雫の件で折り入って話が有ります。今日の放課後、近くのファミレスで話しませんか」

「「私もそう思っていました」」


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


東条さんが危機から救われたのは良かったですが、三人の美少女達に火をつけてしまったようです。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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