第17話 中間テストの勉強会


 高校に入学して初めてのテスト。そう中間テストが目の前に迫っている。だが、テスト範囲は狭く、そんなに気にしていなかった。一応予習と復習は適当だがやっている。


 水やりのない日が有る事がばれてしまった俺は、依然と同じように若菜と早瀬さんにお弁当をご馳走になっている。

 最初は気にしていたクラスメイトも今は当たり前様に気にしなくなった。


「雫、もうすぐ中間テストね」

「そうだね」

「ねえ、一緒に勉強会しない」

「なんで。若菜俺より頭いいだろう」


「私じゃない、雫を気にしているの」

「俺は大丈夫だよ。多分」

「多分は駄目よ。今度の土日一緒にしよう」


「下坂さん。私も一緒に参加します」

「雫一人だから私だけで十分です」

「いえ、私も神城さんと一緒にします。下坂さんだけにさせる訳にはいきません」


不味い。またこれだ。二人だけでやってくれと言いたい。


「勉強会はいいよ。一人でやるから」

「「だめ」」

「…………」

「でもどこでやるんだ」

「私の所でやりましょう。リビングを提供します」

これで神城さんを両親に合わせる事が出来る。


「だめよ。私の所にしましょう」

早瀬さん、絶対何か考えている。雫を行かせる訳には行かない。


「なあ、せっかく二人で教えてくれるなら良太の誘っていいか。良太いいだろう」

俺は背を向けて何かしている良太に声を掛けた。


「えっ、俺?俺はいらないよ」

「良太、俺達親友だよな。最近ちょっと冷たくないか」


「…………。分かったよ。でも俺が参加して良いのか」

「良いよね。若菜、早瀬さん」


「良いですよ」

「私は…。良いわよ」

良太は嫌だけどここで断る訳にはいかないし。


「じゃあ、俺の所でやろう。母さんに言っておく」

何故か、東条さんが俺を見ている。



帰宅したその日俺は母さんに今日の事を話した。

「そうなの。雫が若菜ちゃん以外にも女の子を連れてくるなんて。お母さん楽しみだわ」

母さん何勘違いしているんだ。ただの勉強会だぞ。


土曜の朝、良太に早瀬さんと駅で待ち合わせをして一緒に来て貰う予定だ。若菜はもう来ている。

ピンポーン。


インターフォンカメラで見ると二人が立っている。直ぐに玄関のドアを開けると

「雫、おはよ」

「神城さん、おはようございます」

「おはよう、早瀬さん、良太。上がって」

声を聞いた母さんがパタパタと廊下を走って来た。


「いらっしゃい。川平君。久しぶりね」

「ご無沙汰しています」

「それでこちらが。雫紹介して」

「早瀬真理香さん。クラスメイト」

「まあ、綺麗なお嬢さんね。若菜ちゃんも可愛いけど、早瀬さんも可愛いわ」

「母さん、玄関で失礼だよ」

「あら、ごめんなさい。雫リビングね」


そう言うとまたパタパタと廊下をキッチンへ戻って行った。

「ごめん。母さんが失礼な事言って」

「いいえ、嬉しいです」

「こっちに来て」


俺は二人をリビングに連れて行くと若菜が既に教科書とノートを広げていた。


「下坂さんおはようございます」

「おはよ下坂さん」


「おはようございます早瀬さん、川平さん」


「雫、私お母さんを手伝って来る」

「えっ、いいよ」

「ううん、いいの」

ここで早瀬さん私の立場の違いを見せつけないと。


「下坂さんは、神城さんのお母さんといつもああいう感じなのですか」

「いや、普段はそんな事はないよ。良くは来るけど」

「そうなんですか」

下坂さんそういうつもりで来るのですか。負けませんよ。


今日は勉強会だよな。何か嫌な予感。


「皆さん、お菓子とお茶を持ってきました。勉強頑張ってね。若菜ちゃん、後お願いね」

「はい」

と言うと母さんが持って来た紅茶とお菓子を教科書とかが邪魔にならない様に置いた。

何か自慢げな感じ。


テーブルには俺と良太、若菜と早瀬さんが向い合せで座っている。




「良太、これどうしたっけ」

「雫見せて。これはね…………」


「良太これは」

「神城さん、それは…………」

何か俺が声を出すのを二人が早押しボタンクイズみたいに声を掛けて来る。


「下坂さん、これどうするんだっけ」

「早瀬さんに聞いて」


「早瀬さん……」

「そこは…………」

若菜、もう少し良太に優しくしろ。


かれこれ二時間が立ち、十二時を過ぎた。

「ふーっ、疲れた。そろそろ休もうか」

「雫俺も疲れたし、お腹減っていないか」

「母さんが準備してくれるはず。ちょっと行って来る」


直ぐに戻って来て、今からサンドイッチを作ってくれると言うと

「神城さん、私手伝ってきます」

「私も行く」


あっという間に二人がリビングを出てキッチンに向かった。



「はあー。どうなっているんだ。良太どうすればいい」

「俺に聞くのか。モテ男。お前がはっきりすればいいだけだ」

「簡単に言うな。参ったな。今度相談に乗ってくれないか」


「いいけど、俺で役に立つのか」

「お前、モテるじゃないか。入学してから告白もされているんだろう」

「お前と違って、名前も知らない子が見かけで寄って来るだけだよ。あの二人は違うだろう。雫を良く知った上で好意を寄せているんだ。俺では参考にならないよ」


「だから、重いんだよ。どっちを好きだ嫌いだなんて。もう少し自由にしていたい」

「そう言えば」

「そう言った」

「それは大変だな」


母さんと早瀬さん、若菜で作った?サンドイッチが運ばれて来た。どれも美味しそうだな。


「雫、これ私が作ったの。食べて」

「神城さんこれ私が作りました。食べて下さい」


これじゃあ、学校と同じじゃないか。良太が面白そうな顔をしている。


 結局三時の休憩を入れて午後五時までしっかりと勉強した俺達は、若菜と俺が良太と早瀬さんを駅に送って行く事で今日の勉強会は終わった。


「神城さん、今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」

「雫、ありがとうな。下坂さんもありがとう。また明日な」

 二人が改札に入って行くと俺と若菜は帰路に着いた。


「雫、早瀬さんから告白受けたの」

「ああ、受けた」

「返事は」

「友達なら言いよって答えた」

「そうか。良かった。まだ明るいね。家に寄って行く」

「いやいいよ。今日は頭が疲れた。でも今日でほとんどテスト範囲終わっただろう。明日やる事あるのか」


「雫、今日は授業分を流しただけ。簡単な復習と同じよ。明日は、出題予想を立てて傾向と対策をするの」

「そ、そうなのか。そんなにするのか」

「当たり前よ。学校の勉強はあくまで基礎だけよ。これから三年間、科目事に先生の特徴も掴んで対策を立てるのよ。それと市販の応用問題で知識を広げるの」


ふぇー、勉強できる奴は違うんだな。いつもなら教科書だけで十分と思っていたのに。俺こいつらについて行けるのかな。


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


若菜と早瀬さんのバトル始まったばかりですが、バチバチですね。

雫。周りが頭良いとこれからが大変だよ。頑張って。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る