第13話 早瀬さんと一緒
GWも三日目。
今日は早瀬さんと一緒だ。しかし、昨日の事は予想外だったな。若菜が俺の事好きだなんて。生まれた時から一緒だもんな。いったいどこでそんな気持ちになったんだろう。特にそんな気持ちにさせるイベントなんかなかったし。
ジリジリジリ・・。
もうこんな時間か。ベッドの上で少し早めに目の覚め昨日の事を考えていた俺は、目覚ましを止めると伸びをしてから起きた。
あくびをしながら一階に起きると父さんと母さんが起きてテーブルでコーヒーを飲んでいる。
「おはよう」
「「おはよう雫」」
「早いわね。今日もお出かけ」
「うん。そうだ。母さん。お小遣い、ちょっと臨時で追加して」
「えっ、なんで?」
「ちょっと、一昨日は花音と一緒で昨日は若菜と一緒で臨時出費が激しいんだ」
「今日は?」
「同じクラスの子と一緒。財布の中が軽すぎるの厳しい」
「まあ、モテる事」
「妹と若菜だよ。そういう事じゃないでしょ。でもあいつらに払わせる訳にはいかないし」
「まあいいわ。出かける時言って」
「ありがとう」
助かった。ほとんどない状態だったからな。早瀬さんの前で財布空なんて言えないし。
俺は母さんからの援助金?を貰って約束の場所に向かった。家からは学校の最寄りの駅から更に四つ先に行った街で待ち合わせ。
駅を挟んで有名なデパートとショッピングモールそれに公園がある。早瀬さんからの指定の場所だ。
十時半待合せ。一応礼儀として二十分前に着いた。約束の改札を出た正面のデパートの壁で待合せだ。
改札を出て、キョロキョロしてまだ来ていない事を確認…………いた。遠目でもはっきりと分かる素敵な容姿。少し長めの茶色のスカートとクリーム色のブラウス、靴はスカートに合わせた茶色、クリーム色のバッグを持っている。
少し大人びた感じだ。ちょっと見惚れてから近付くと早瀬さんもこちらに気付いたのか寄って来た。
「おはようございます神城さん」
「おはようございます早瀬さん。素敵な洋服ですね。とても似合っています」
「ふふっ、美味いな。慣れているみたい」
「いやそんな事ないです。素直に言っただけです」
「うん、ありがとう」
彼女は買うものが決まっているらしく、ショッピングモールの方にあるビルに入って行った。女性用の洋服があるフロアでエスカレータを降りると目的場所が決まっているのかスタスタと歩く。
あの二人とは違うな。最初から買うものが決まっていたんだ。スカートを選んでいるみたいだ。二つ程手に取ると
「神城さん、どちらが似合うと思います」
「両方とも似合うと思うけど」
「でも二つ買う訳にはいかないので」
値札をみると心の中でえっと思ってしまった。女性のスカートってこんなに高いの。諭吉さんが必要だよ。
「ふふっ、値札見てましたね。そうなんです。だから選ばないと。試着します。来て下さい」
「俺も?」
「はい、神城さんの好きな方を選びたくて」
「…………」
女性用品の売り場の試着室の前で待つのは結構厳しい。何となく周りの目が気になる。
「神城さん」
早瀬さんが呼んでいるので、他の所に目がいかない様にして行った。
「どうかな」
「とても似合うと思います」
「そうですか。もう一つ来て見ますので、そこで待っていて下さい」
うっ、中々から早瀬さんのスカートを脱ぐ音が聞こえる。要らぬ妄想が。精神衛生上良くないんだけど。
いきなりカーテンが開いて
「こっちはどうかな」
「こっちも似合うと思います」
「それでは選べません。どちらかにして下さい」
「え、でも早瀬さんが好きな方で……」
「神城さんの好きな方を選びたいんです」
「…………じゃあ、こっちので」
「分かりました」
そう言ってカーテンを閉めるとまたスカートを脱ぐ音が、ううっ、良くない。少し離れよう。
少しして元の洋服に着替えた早瀬さんが出て来た。
「精算してきます。ちょっと待っていて下さい」
「い、いや俺も行きます」
此処にいるのは精神的に良くない。一緒にレジに行った方がいい。
彼女がバッグからお財布を取り出して黒いカードで払っている。高校一年でもうクレジットカードを持っているんだ。凄いな。
感心して見ていると
「両親から洋服を買う時はカードで支払いなさい。と言われているんです」
「支払いは?」
「親の口座からです」
「はぁ、なんか凄いですね。高校生でカードって」
「そうですか。中学からの買い物はこうしていたのでもう慣れました。もう一か所良いですか」
「はい」
今度は駅の反対側にある有名なデパートに入った。やはり女性用品だ。
少し歩くと、えっ、ここって!
「ふふっ、さすがにここは一緒に入るのはまだ無理ですよね。ここで待っていて下さい。あっ、一緒でも良いですけど♡」
俺は思い切り首をブンブンと横に振った。
十五分程して出て来た。
「済みません。こんな所にもお付き合いして頂いて」
「良いですけど。ちょっと厳しいです」
「ふふっ、そうですよね。私の旦那様になってくれるならいいかもしれませんが」
「へっ?!」
「冗談です」
中々厳しい人だな。
「また、ショッピングモールの方に戻っていいですか。少し他の洋服とかも見たいので」
「いいですよ」
それから先ほどスカートを買ったビルの一番上から一階まで男性、女性用品や家電用品など一通り見て回った。
「神城さん、もう十二時になります。ご飯食べませんか」
「そうですね。どこ行きます。この辺分からなくて」
彼女知っていそうな感じ。
「私の好きな所で良いですか」
「いいよ」
彼女に連れて来て貰ったところは、全体的に洋風でウッディな店構えのレストランだった。ちらっと入り口に立てかけてあるメニューを見ると俺でも何とか食べれそうだ。二人分だときついかも。
「ここで良いですか」
「いいですよ」
彼女は慣れた様に店員に手を上げてテーブルに案内してもらう。ちょっと高校生の感じではない。
「早瀬さん、いつもこんな感じのお店で食べるんですか」
「いえ、いつもはお友達や両親と来ますので別の所になります」
「そうですか」
俺達は学校生活の事や少し家事等を話した。彼女は結構なお金持ちのお嬢様らしいと言う事も分かった。だからカード払いなんだ。
食事も終わり、デザートに出された紅茶を飲んでいる。そろそろ聞いてみようかな。
「早瀬さん、一つ教えて欲しいんだけど」
「なんですか」
「早瀬さんと知り合ったのって高校に入ってからが初めてですよね」
「その話ですか。聞かれると思いました。近くに公園があるので少し歩きませんか」
「はい」
―――――
第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
次回は早瀬さんが雫に近付いた理由を説明します。それを聞いた雫の気持ちは…………。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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