第10話 妹とお出かけ
雫の高校最初のGWの始まりです。
―――――
「うーん」
重い。昨日の件で夜遅くまで考え事をしていた所為か頭だけでなく体も重かった。
瞼もまだ開かない。
うん、なんだろう。俺の顔の前に柔らかい物がる。目覚めない頭を必死に起こして目を開けると更に押し付けられてきた。
「うぷっ。くっ、息が……」
「うふふっ、起きたかな~」
目の前に覆っているものが何か分かって来た。
ぐっ、山の一つから何とか顔を外すと
「えへへっ、お兄ちゃん、おはよう」
「あっ、こら。降りなさい」
「やっ。良いじゃない。今日からお休みだよ。初めの日位兄妹でのんびりしよう」
「それは良いから、離れて」
何とか妹の体を横に外すと俺の顔からプルっともう一つの山が外れた。妹は百六十センチある。百七十二センチの俺からしても体が大きい。その上パジャマのままだ。ブラはしていない。
「お兄ちゃん気持ち良かったでしょう。花音のスペシャルお顔マッサージだよ」
「ふざけたとこはしないの」
「えへへっ、お兄ちゃん顔が真っ赤だよ」
「こ、これは朝だからだよ」
「いいの、いいの」
そう言ってもう一度の俺の体に乗ろうとした妹を避けベッドの上で起きると
「そう言えば今何時」
「いま~。いまねえ。もうすぐ九時だよ」
「えっ、花音出かけるんじゃ」
「いいよ。買う物決まっている訳じゃないし。でも行く所は決まっているよ」
「何処?」
「出かけるまで内緒」
「もう起きよう」
ベッドから離れようとする俺の腕を掴んで
「もう少しこうしていない」
「だめ、起きないと今日一緒に行かないよ」
新婚じゃあるまいし兄妹で朝からイチャイチャしてたまるか。
「ちぇー。仕方ないな」
一階に降りると母さんがもう起きていてテーブルに朝食が乗っていた。
「雫、花音起きたの。顔洗ったら朝ごはん食べて」
「はーい」
後ろから妹が元気よく返事をする。
「母さん、父さんは」
「昨日遅かったから今日はまだ寝てるわ。この連休は休めると言っていたから、今日はのんびりよ」
父さん、昨日帰って来ていたんだ。俺の父さんは出張が多い。偶に海外にも行っている。大体月曜に出かけて金曜日帰るパターンが多い。久しぶりの父さんの帰宅で母さんも嬉しそうだ。
花音と俺は朝食を食べ終わると早速出かけた。妹は春らしい白のワンピースに白のロウヒール。やや茶色の背中まで伸びた髪を耳にかからない様にして優しく背中に流している。妹ながら素敵な格好だ。
「どうお兄ちゃん。私の洋服」
「うん、とっても爽やかで良く似合うよ」
「えへへっ、嬉しいな」
俺は、コットンパンツにポロシャツと運動靴。ちょっと合わないかな。まあいいか。
駅に行く途中
「花音、何処に行くんだ」
「うん、ちょっと電車乗る。快速で五つ目だよ」
「えっ、そんなに遠い所」
「良いじゃない。お兄ちゃん一緒だから安心だし」
「そ、そうか」
まあ、今時陽も長くなったから余程遅くなければ大丈夫か。
駅を降りるとこの辺りでは一番大きな街だ。
「お兄ちゃん。こっち」
手を引かれて行った所は、元公園で今は四階建ての大きなスペースになっている。一番上が公園で一階から三階までがフードコートや洋服、グッズを売っているショップが入っている。
「お兄ちゃん、最初は一番上に行こう」
俺は妹に言われるままについて行くとノースとサウスに別れた大きな公園が有った。ベンチや椅子、人工芝が引き詰められて、結構な人が居た。
「お兄ちゃんここでのんびりしよう」
「買い物は?」
「二階のフードコートで昼食食べた後で良いよ」
最初は公園を一周してみた。周りの建物が上から見れる。結構遠くまで見えた。
手すりに手を当てて景色を見ていると
「お兄ちゃん、私達どう見えているのかな」
「どうって?」
「例えば恋人同士とか」
何を言い出すかと思えば、そうか花音は彼が出来た時の練習に俺を連れて来たのか。
「そうだな。そう見えるかも知れないな」
「えっ!」
花音が下を見てもじもじしている。
「どうしたの」
「だ、だってお兄ちゃんがいきなり私を恋人なんて言うから」
「あ、ああ、いや花音が将来彼を見つけた時の練習に俺を連れて来たのかなと思って、そのノリで言ったんだけど」
「なーんだ。つまらないの」
「そうなのか」
「そう。まあいいや。あそこのベンチ座ろ」
「そうだな。家から立ちっぱなしだったからな」
「花音、何か飲むか」
「いいよ。こうして居たい」
いきなり俺に肩を寄せて来た。まあいいか。
「お兄ちゃん。私ずっとこうして居たい」
「そうか。いいよ」
俺はこの時だけと思っていた。
スマホが震えた。ポケットから取り出して画面を見ると若菜だ。チャットメールだ。開けて見ると
『雫、今どこにいるの』
明日会うのにどういう事だ。
「お兄ちゃん誰」
「若菜だ」
「じゃあ、直ぐに閉じて。今日は私の時間でしょ」
「あ、ああ」
確かに妹の言う通りだ。若菜なら明日会えばいい。そのままスマホを切った。
「ねえ、フードコートでご飯食べたら映画見に行こう」
「花音はそうしたいのか。買い物は」
「買い物はいい。映画見たい」
「そうか」
二階のフードコートは結構混んでいたが、二人で座るテーブルは有った。
「花音、何を食べる。俺が買って来る」
「じゃあ、〇ックのフィレオとイチゴシェイク」
「了解。ちょっと行って来る」
結構並んだが、一通りの注文をトレイに置いてテーブルに戻ろうとすると、ありゃりゃ、定番かよ。妹はモテるみたいだから。
「可愛いね。ここ空いているの。座っていい」
「連れが居ますので、お断りします」
「いいじゃん、いいじゃん」
仕方ない。
「済みません。俺の妹なんで。邪魔しないでくれないかな」
「何だ。お前は。この子が妹だと。全然似て無いじゃないか」
「こんなかっこ悪い奴捨てて、俺達と遊ぼうぜ」
いきなり一人の男が花音の腕を掴もうとした。
「止めて下さい」
仕方ない。トレイで手が塞がっているので、右足でその手を思い切り蹴った。手首に足のつま先がクリーンにヒットした。手加減はしたけどね。
「いてえ。何するんだこの野郎」
俺はテーブルにトレイを置くと
「周りを見た方が良いですよ」
フードコートの入口から警備員が二人歩きながらやって来る。周りの人も二人に嫌な顔をしていた。
「ちっ、行こうぜ」
「ああ」
「大丈夫だったか。花音」
「うん、お兄ちゃんいるから心配なかった。久しぶりだね。お兄ちゃんのあれ見たの」
「そうか。随分鈍くなった感じもしたけどね。サッと食べて映画見に行こうか」
「うん」
その後は、駅の反対側にある映画館に行って、今流行りのアニメを見た後、家に帰りながら
「花音、買い物出来なかったけど良かったのか」
「良いんだ。高校に入ってからお兄ちゃん相手してくれなかったし」
「そんな事無いと思うけど」
「そんな事あるよ」
俺の左腕に妹が絡みついて来た。慕ってくれるのは嬉しいけど、いい人が早く見つかると良いな。
その頃、若菜は自宅で自分の部屋でベッドに横になりながら
なんで?!雫に何回もメールしてるのに既読も付かない。明日はしっかりと言わないと。
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第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。
花音ちゃん、良かったですね。でも相当なブラコン。これから大変そう。
ところでちょっと気になったところが有りましたね。まあ、今のところはこのままで。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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