第5話 昼休み協定


「雫、どう言う事、早瀬さんと何が有ったの」


学校から帰って来た俺に案の定、隣に住む幼馴染下坂若菜が来襲した。


「何が有ったって言われても」

「じゃあ、何でいきなり早瀬さんとお昼を一緒に食べる事にしたの」

「いや、俺も良く分からないんだ。昨日の下校時に話しかけられて」

「昨日の下校時」

 昨日は、クラスで新しく出来た友達とファミレスにお喋りをしに行った時だ。良くもまあ私がいない時に。


「それでどうしたの」

「早瀬さんから一緒にお昼食べていいかと言われて、同じクラスだし断る理由もないし良太もいるから、いいよって言ったら。今日からって言われて」


「じゃあ、お弁当持ってくるって話はなに」

「今日の話の流れで」


「なに、私が居ながら雫は他の女にお昼作って貰うの」

「いや、でも若菜だって普段はお昼別々だし。そう言えば何で今日教室に来たの」

「あれは、その食堂にいなかったから」

「でも友達と食べるんでしょ」

「本当はそうだったけど、雫がいないから、どうしたのかなと思って教室に行ったのよ」

「友達と食べれば良かっただろ」


「なに、雫は私とお昼一緒に食べたくないの」

「そんな事ないけど…………」

どうしたの若菜。いつもと違うよ。


「じゃあ、明日から私がお弁当作って行ってあげる」

「いや、いいよ。早瀬さんにも断ったし。急に若菜だけ作って来るのはおかしいだろう」


「そんな事ない。ねえ、明日から毎日早瀬さんとお昼一緒なの?」

「まあそうなると思う」

「じゃあ、私も一緒に食べる」

「えっ、何で。若菜友達がいるでしょ」

「いいの」


「雫ご飯よー」


一階から母さんの声が聞こえた。

「若菜。お昼の事分かったから、もう帰りなよ。お前の所も夕飯だろ」

「分かった」


二人で一階に降りていくと

「あら、若菜ちゃん来ていたの。ご飯一緒に食べていく?」

「おばさま、お邪魔してました。夕飯は家で食べます」

「良いのよ。いつでも来てね。いずれうちのバカ息子のお嫁さんになるんだから」

「はい!」

「母さん、何言っているんだよ」

「何言っているのは雫でしょ。こんなに可愛くて優しくて頭のいい子はあなたにもったいない位よ。若菜ちゃんを大事にしなさい」

「そうだよ。雫。私を大事にして」

「…………」

若菜も調子に乗って。でも母さんは半分本気だからな。困る。


翌朝、今日も今日とて若菜が隣に居て登校する。

「ねえ、昨日言った事覚えているよね」

「うん、何の事?」

「もう、お昼の話。一緒に食べるって言った話」

「ああ、覚えているよ」

「じゃあ、お昼にね」


そう言って若菜は自分の下駄箱に向かった。気のせいか若菜の持っているお弁当の包みが大きい気がした。


 若菜と別れて教室に向かう。教室の後ろの入口から入り右をちらっと見ると早瀬さんと目が合った。早速近寄って来る。


「神城さん、おはようございます」

「おはようございます。早瀬さん」


そう言って自然と俺の隣の席に座る。隣の住人はまだ来てない様だ。

「神城さん、お聞きしたい事が有ります」


俺が鞄から教科書を出していると早瀬さんが声を掛けて来た。周りの連中が耳をパラボラアンテナにしている。


「なに?」

「GWのご予定はどうなっています。もしまだ予定入れていないなら私と出かけませんか」


「「「え、ええ、えええー」」」

「ねえ、聞いた、聞いた」

「早瀬さん、神城君をデートに誘っている」

「なんで神城なんだ」

「あのやろー、早瀬さんに何しやがった」


あ、あの皆様。俺は無罪です。良太なんで話しかけてくれない。あいつ笑っている。後で覚えていろ。


「い、いや、まだ何も決まっていないです」

これはミスだった。


「そうですか♡。ならば私と遊びに行きましょう」

「え、ええ」

「わぁ、嬉しい♡。早く予定立てましょう」

俺肯定も否定もしてないんだけど了解と受け止められた。不味い。


「「神城のやろー。許さねー」」

「なんで、あんな奴が早瀬さんと」


げっ、皆誤解だ。




ガラガラ。

「皆席に着け。HR始めるぞ」

願力先生もっと早く来てよ。


「じゃあ、神城さんまた後で」


早瀬さんが自分の席に戻って行く。どうなっているんだ。


キンコーンカンコーン。


今日も午前中の授業があっという間にいや一瞬にして終わった。

「雫、ご飯食べよう」

「えっ」


入口から若菜がお弁当を手に持って近寄って来る。やっぱり、いつもより包みが大きい。まさか!


「神城さん、ご飯食べましょう」


早瀬さん、なんでランチボックス二つなの?


「良太!」

「雫、悪い。今日はちょっとクラブの仲間と約束が有る」

あっという間に教室から姿を消した。


「雫、食べよ」

「神城さん、食べましょう」


へっ、二人共なんでお弁当箱二つなの?


「早瀬さん、雫は私のお弁当を食べてもらいます」

「いえ下坂さん、神城さんには私のお弁当を食べて頂きます」

「「雫「神城さん」、私のお弁当食べて「下さい」」」


「ちょ、ちょっと待って。昨日俺のお弁当は作らないって言ってなかったっけ」

「やっぱり神城さんに食べて頂きたくって、作って来てしまいました」

「雫、私の食べて」




うーっ、いくら現役高校生とは言え、体育会系ではない俺に二人分の弁当はきつかった。

「「どっちが美味しかったですか」」


「い、いや二人とも美味しかったよ。でも二人分正直きつい」


二人が睨み合っている。

「下坂さん、神城さんがあの様に言っています。明日からは私が作ってきます」

「何を言っているの。私に決まっているでしょう。早瀬さんは自分の分で結構よ」


やばい、またバトっている。

「あ、あの二人とも。交代でとかどうだ」


「「交代」」

「…仕方ありません」

「…私もそれでいい」


「じゃあ、明日は私が」

「何言っているの。私に決まっているでしょ」

「あの、じゃんけんで」

此処は公平にして貰った。


「ウーっ。負けた」

「ふふふっ、明日は私が作ってきますね。下坂さん」


なんでこうなったの?


―――――

第7回カクヨムコン応募中。アクセスご評価頂けると大変ありがたく思います。


はて、神城君。君に心当たりはないのかね?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。



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