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 僕と一緒にいると、人の常識とはかけ離れてしまうかもしれない。僕が望めばそうなるっていうのは、僕の家の範囲でのことだけど。


 ユリウスに僕の国の衣装を着せる。

 僕の国は青が美しい。かつての職人が綺麗な青の染料を作ったところから始まり、青は王の色とされていて、民は純粋な青を敬意を持って使用しない。


 でもユリウスには青が似合う。でも王の色だしなって所で、少し濃いめの青にする。それは瞳の奥が深い青に見えるユリウスの色だ。うん、決めた。深い青はユリウスの色。


「ユーリって呼んで良い? その方がこの国っぽい呼び方だから」


「良いよ、ヨシカ」


 ユリウス改め、ユーリは、ぼくのヨシカっていう名前が気に入ったみたい。何かにつけて呼んでくれるから、その都度、照れる。いつか慣れるかな?


「裾が長いから、踏まないように気をつけて。髪はこのままで良いけど、伸ばすのも良さそうだね。ふふっ、体格が良いから良く似合うよ」


 侍女になんて任せたくないから、湯浴みから何から僕がやってる。あの時とは逆のことをしていて、とても楽しい。僕が楽しんでいるのがわかるのか、ユーリは何も言わずに従ってくれている。


 僕の衣装は白に水色の縁取りがあるもの。形はユーリと同じだけど、僕は華奢だから、ストンとしたシルエットにこだわってる。白い部分には銀糸で青星花と呼ばれる、幸せを呼ぶとされる花が刺繍されている。


「ありがとうヨシカ、ヨシカはとても美しい」


 ユーリが陶酔するように見つめて来るから、雰囲気に飲まれて口付けしてた。触れるだけの口付けなのに、その触れ合うぬくもりにドキドキさせられる。


「王の前でもユーリとだけ名乗るんだよ。僕のユーリ」


 そう言うと、傷むというような表情をされて、すごく耐えた。ユーリも耐えてる。美しい衣装を付けては、抱擁さえ難しい。


「行くよ、ユーリ」


 もう一度、口付けて、手を引いて歩く。

 ひとつ扉を潜ったら、もう王の間の前だって、便利なんだけど、ユーリは困惑するかな?


 ちらっと見たら、一瞬目を見張っていたけど、すぐに無表情になる。僕がどういう存在か、理解していれば驚くこともないだろうけど。


「宰相様御入場」


 掛け声と共に門が左右に開いて行った。


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