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竜宿舎で働くのが生活の一部になってる。
最初はユリウスに贔屓されている目障りなヤツ扱いで、同じ騎士見習いの衣服を着ている子たちに嫌な目を向けられていたけど、僕に野心が見えなかったからかな? 少しずつ話しかけてくれるようになり、今では一緒に水を運んだり、竜の寝床の掃除をしている。
別にさ、仕事、嫌いじゃないよ。
騎士見習いたちの目標に向けた心積りや不満を聞くのも人らしくて良いと思うし。
「
見習いの中で率先して前に出る性格のアーティが言うと、今日の当番たち2人が頷いている。
この竜の宿舎の側にある湖に、まだ契約前の竜が飛来する。こういった竜を通称「
白竜は結界内に入れないから、見習いたちは、湖に水を汲みに行く仕事をしたがるし、休憩時間や食事の時間は湖の辺りにいる。実は早朝に出会いやすいという噂があるから、早く起きて朝練習を湖の辺りでするんだって。
自分の竜を持たない見習いは、結界内にある仮宿舎で生活をしている。山を下るのは7日に一度の交代制で、竜を手にするか、諦めるかが見習いから脱する手段だそう。
はっきり言って見習いは大変。寝るだけの為の小屋に詰め込まれて、自由はなくて、仕事は掃除がほとんど。一般騎士は見習いの間、剣術や馬術など、教わることがいっぱいだけど、竜騎士は竜がいなくちゃ始まらない。花形職業だけど失敗する確率は高い。
「隊長は一般兵から竜に見初められて竜騎士になったんでしょ?」
僕がそう言うと、みんなが変な表情をして黙った。顔を見回してから僕を見る。
「前の竜騎士長を殺して勝ち取ったって噂、知らない?」
アーティが代表で告げて来た。
「人を殺しても竜騎士になれるの?」
「わからないよ、ただの噂だ。でも隊長の竜には前任者がいたよ。いつの間にかいなくなって、次に見た時には隊長が乗ってた」
僕には良くわからない。グレイヴと前任者との間に何かあったのかもしれないし、前任者の方から下りた可能性だってある。
「白竜を手にしたら、君たちだって竜騎士になるんだろ? そんな噂のある隊長の元で働くの? 不安じゃない?」
これは仕事だ。隊長を気に入らないから辞めるなんて無責任なことはできないだろうけど、でも竜騎士は有事の際に隊長命令に従って戦わなければならない。信頼が第一だと思うのだけど。
「白竜を手にしたら一生を添い遂げるんだと勘違いしてたよ。驚いたな」
ユリウスのことは知っていたけど、特別なことだと思っていた。
普通は僕にとっての王のように、絶対に裏切れない間柄だと思っていたから。そんな希薄な関係のものに乗って、空を飛ぶなんて怖くないの?
「まさか、どう考えたって竜の方が長生きだし、相性もあるから、途中で投げ出される話も聞くよ」
「それでも竜騎士になれば身分も与えられるし、給金だって破格だ。数年勤務すれば一生食って行けるだけの貯蓄ができるんだよ」
みんなの目が打算的に光る。見習いに平民が多いのも頷ける。
「もっと夢のある職種だと思ってた」
そういえばアルだって身分が欲しくて、あの時の状況から抜け出したくて竜騎士に憧れていた。みんな一緒なのかも。
「白竜を得られず山を降りたら、俺らに生きる場所はねえんだよ」
アーティが吐き捨てるように言うと、他のみんなも頷いている。その中には貴族の子もいる。みんな覚悟を持ってここにいる。僕の存在が嫌われていたのも頷ける。
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