15

 ユリウスに会う前に川に入った。

 アルを喰った川原で、血に濡れた体を洗う。


 そんなつもりは無かったけど、僕にとって目障りなものは視野に入らなくて、いつも終わってから気づく。


 いつもは王に怒られる、だけど。

 今はユリウスに嫌いって思われるかが気になる。


 裸になって川で服を洗って——元通りにならないし、濡れてぐちゃぐちゃになったし、もう一回着るのヤダし。


 僕の中のアルは嬉しそう。ひとつ心残りが無くなったから。暖かい寝床とご飯が嬉しかったんだって。


 もう良いや。

 帰ろう。


 夜の闇に紛れてユリウスの元に向かう。

 森の中の、月明かりの丘で、グレイヴと心の声で話している。それはとても美しい光景で——なんだろう、胸が苦しいよ。


「ユリウス」


 裸なんてどうでも良い。ユリウスに駆け寄って、抱き止めて貰った。


「服は?」


「捨てた」


 ユリウスがマントを外して肩に掛けてくれた。それを体に巻きつけてくれて、抱き上げてくれる。


「行こうか」


 ふたりでグレイヴの背に乗って、僕は甘えるようにユリウスに引っ付いてる。胸の鼓動が聞こえる。ユリウスの胸に引っ付けた頬まで振動が伝わるみたい。温かい、ユリウス。背中に回した手でユリウスの服を掴んでいる。離れたくないな。ここが一番良いみたい。ぜんぶ無かったことにならないかな?


 僕が僕である時に、出会ってみたかった。

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