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 ユリウスに駆け寄る背中にクリスの視線がずっとあったこと、見習い騎士の視線が冷たいこと。それを知り、人との関わりがとても難しいことだと思う。


「僕のやり方が間違っているのわかるけど、仲良くなるの、難しそうだよ」


 ユリウスに駆け寄り、そう言うと、ユリウスが頭を撫でてくれた。すごく嬉しいけど、また誰かに睨まれた気がして、ユリウスから一歩離れた。


「隊長に甥っ子がいないってほんとう?」


 そんなバレる嘘をつくなんてとすねて見せれば、ユリウスは戸惑うような表情をした。


「ああ、クリスか」


 ユリウスが僕を通り越して視線を向ける。


「悪いな、だがお前は騎士学校も行かずに竜騎士になりたいのだろう? 無理を押せば歪はできるさ」


 それはそうだけど。


「騎士学校に通って順当に位を上げて、優秀な成績で卒業すれば、竜騎士見習いの仲間になれる。どうだ、今からでも遅くはないぞ」


 竜騎士見習いたちの方をちらっと見る。

 僕としては人との関係なんてどうでも良い。早く願いを叶えて解放されて、自由になりたい。でもこの約束はアルとして命を落とすまで付き合わなければならない。だったらなるべく気安く自由が良いという希望はある。


 でもな、と思う。

 人の生き方は面倒だ。体面とか繋がりとか上下関係とか。嫌だから殺してしまう訳にも行かない。それは祖国とこの国との火種になってしまう可能性があるからだ。


「……でも学校は行けない。だからここで竜に好かれるようにする」


 グレイヴに気に入られたユリウスは、それだけで優位にいるらしい。だったら竜と話せる僕は有利じゃないの?


「わかった、出来る限りの協力をしよう」


「うん」


 グレイヴは上から見下ろして、僕らの会話を聞いていた。でも何も言葉として伝えて来ない。僕の存在理由は伝えている。僕が竜騎士になりたいなんて、竜には信じられないのだと思う。


 それはわかるんだけど。でも許して欲しい。僕に竜を傷つける意思はない。竜騎士を殺める気もない。


 でもな——僕はアルであろうとしているけれど、ぜんぶを我慢できるとは限らない。命を脅かされそうになれば、牙を剥くだろう。


 アルが強く拒絶したら、アルの気持ちに引っ張られ、思わない結果になるかもしれない。


 なにせこんな状況、面白がって受け入れたけど、何もかも初めてのことだから。

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