第2話

       〜犯人視点〜



 全て上手く行っている。上手く行きすぎて怖いくらいだ。必要な物も忘れてない。雨は降ってない。オールパーフェクト。あとは変なミスをしてバレないようにしなくては。



      〜桜井紗夜視点〜



 知らない天井だ。もしかして異世界転生でもしたのか?


「あ、目覚めましたね。まだ動かず待ってくださいね」


 隣には保健室の先生、磯崎いさき はるか先生がいた。この人の存在のせいで、ここが異世界ではないという証明が出来たしまった。


「小麦アレルギーなら無理しないで食べなくてもいいのに」

「え? 俺アレルギーないんすけど。それより体痒い」

「成長に連れてアレルギーも変わっていくんです。これから小麦系統の食べ物は食べないようにしてくださいね?」


 はぁいと返事をし、布団に潜る。痒みは少しあるが、掻いたら多分悪化する。もう俺には寝るしかないんだろう。寝よう。



       〜犯人視点〜



「これから自由時間になります。キャンプファイヤー係の皆さんは速やかに道具を持ち、玄関前に集合してください」


 そろそろ準備にかかるか。耐火グローブとトングと新聞紙と、あとこの。この中にアレとアレを入れて………………。


 準備が終わり、キャンプファイヤー場に向かう。キャンプファイヤー場は、少し遠くにあった。そこは森林に囲まれていて、その森林一部を大きい円で刈り込まれている。中心部には太い丸太が何段か積み重なっていた。


 まぁ、こんな白昼堂々作業を始めたら、計画はバレはしないだろうが、必須アイテムが回収されてしまう。まずは、枝などの回収からだ。念の為にバッグには南京錠をつけておくか。



      〜桜井紗夜視点〜



 目を冷ますと車の中にいた。大きな欠伸をすると、運転手に起きたか、と声をかけられる。


「はい、あのこれってどういう」

「あぁ、森林が燃えていると隣の姉ちゃん通報があってな。俺は警察の綿貫わたぬきだ」


 隣を見ると、磯崎先生が眠っていた。助手席から無愛想な方がこちらを見て、警察手帳をスッと見せる。偽装は、多分ないだろう。


「みんなは無事なんですか?」


 その質問には誰も答えてくれなかった。前にも後ろにも車がなく、俺らだけ運ばれているってことは、他の人はもう…………。

 しばらく経って、思い出したように綿貫さんが語りだす。


「あぁ、土木って奴だったか。奴は生きてたさ。だが彼は…………俺らが来るとすぐに自首してきたよ。人を殺しましたって」


 なんだって? という事は土木は森を燃やして、大人数を殺したと、そういうのか?


「なにせ正義のためにとは言っていたが、意味は分からんなぁ」


 すると、隣の警察官が綿貫さんの肩を叩き、あぁそうかと相槌を打つ。


「そうだった。ワシは口が軽いから、今の話は忘れて寝てくれ」


 車を止め、後ろを振り返る綿貫さん。彼は50くらいのベテラン警察官に見えた。



       〜綿貫視点〜



「事件現場はここですか?」

「事件、ですか?」

「あぁ、いえ、1-C室はどこですか?」

「1-C室に事件があったんですか!?」


 受付の人に場所を聞こうと思ったのだが、こりゃ自分で探した方がよかったな。


「すみません、お邪魔します」

「はいどうぞ〜。あぁ、受付の。何が御用ですか?」

「いえ、自分ではなくお客様が。それでは失礼します」


 彼が出ていくのと入れ違いで、部屋に入っていく。


「あんまり大声を出さないでくださいね。寝ている子もいるので」

「早速ですが、通報されたのは貴方ですね。火災現場はどこですか?」


 あちらですと窓の外を指さす。窓からもよく見えるほど、よく燃えていた。消防も呼んだというが、こんな田舎の山奥に来るのにはかなり時間がかかるだろう。


 行ってみますと去ろうとすると、気を付けてくださいと返してくれた。俺は玄関に踵を返し、入口近くにあった消化器を持ってそのまま火災現場へと向かった。


 ホテルから現場まで走って5分程の場所で火災が発生していた。俺以外にも、ホテルの人らしき人物が消化器で火を消そうとしている。


 消しても消しても内側には届かない。でも状況はちらりと見えてくる。大人数が倒れているのは分かる。

 呆気にとられていた途端、無線が入る。


『――――こちら亀山。綿貫さん、ホテルにいた少年が、殺人を自白しました』

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